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■ 東京ウーマン座談会 東京で働く女性の育児事情


東京で働く女性の育児事情(5)

女性が育児を通じて学ぶこと、できること
山田: 少し話が飛んでしまいますが、企業側の理解についてなのですが。テレビ番組で、女性が社会進出している北欧でスウェーデンの話だったと思いますが、会社の面接で全く同じ条件の女性二人がきたときに、片方に子供がおり、もう一方が独身のケースの場合、子供のいる方を採用するという考え方がその国にはあるそうです。

なぜかというと、残業をするという考え方があまりなく、子供のいる方のほうが効率よく業務を遂行できる能力があるとみなされるからだそうです。各国に根深い文化的背景なども影響していると思いますが、日本では残業することに価値を置く会社も未だ多いと思います。コストパフォーマンスや生産性の観点へ企業側の考え方をシフトできるように、社会全体がより注目できると女性も社会に進出しやすいかも知れません。

野田: タイでは子供がいるとみんながあやすらしいですね。子どもがいながら仕事する、子どもを職場に連れて行くこともタブーではなかったりするようですし。いわゆる行政の人がそういうふうに仕事をしていたり。一人ひとりの意識が変わらないと、評価制度だけでは難しいと思います。

河口:さっきおっしゃっていたように、育児を経験しているお母さんのほうができることもあると思うんです。私の場合も、育児を経験することで、以前より保護者の気持ちがわかるようになっているから、職業柄すごく価値が上がっているんですね。私の職場としては、お母さんの価値があがっているので、そういう母である自分たちの価値を、「私もっと使えますよ」って、社会にアピールしていくことも大事なのかな。

「ママになったからこそこんなことがわかってこんな役にたてるんだよ」というようなことも現場からアピールしてもらうと、雇う側としても「この人のこういうところが欲しいから、ここをお願いして、できない部分を他で補充しよう」って考えられるかなと思います。お母さんのほうが、本当に時間内で業務を回そうとしているので、預けている人は特に、すごく能力が上がっているはず。集中してやってくれるから、ミスも少ない。

一生懸命考えてやってくれる。やっぱり子どもって不可抗力なので、今までは自分で何とか出来ていたけれど、何もできない誰か(子供)に相対すると、色々考えるし、対処もできるようになるし、そういった境遇では俄然能力も上がると思います。

六藤:その能力を判断するのが実は男性なんですよね。その男性が、理解するためには本人が経験しないといけないので、男性の育児休暇を強制的にするっていうのが一つ大きく変えることかな。2週間でもとる。あるいは子どもと向き合う時間をとる意味で、残業も子どもがいるうちはとらないとか。それはもう制度として導入すると、意識が変わるのにすごく役に立つんじゃないかなと思います。女性がいくら言っても、男性が変わってくれないと。
子どもは、社会全体で育てる
六藤:男性の働き方も変えないといけないですね。夫も家事をしてくれますが、すごく長時間労働で23時24時とかに帰ってきて、お皿とか洗ってくれて、洗濯もしてくれて、で、お風呂に入って寝るのが1時半とかなんです。感謝はしているのですが、睡眠不足で週末寝だめしているので、寝てばかりいるとか言って責めてしまいます。

その話とは別に、ある勉強会で知ったんですけど、男性版の3歳児神話があるそうです。母親の3歳児神話は科学的な根拠はないということは今では知られていますけど、この男性版は根拠があるらしくて、男性が子どもと小さいときに向き合ってないと、子どもの成長とか心の発達によくないという。

そういう意味では日本の男性って本当に子どもと接している時間が少ないですよね。そこは確保しないと私たちの将来子どもの成長だったり、社会の発展のためには重要なんじゃないかなと思います。

高瀬:日本の長時間労働だけはどうにかしてほしい。今いる業界では、長時間労働はあたりまえです。多分ほとんどの会社は、残業している人は頑張っている、だから出世しているっていうのがあるので、残業なしでも一生懸命やり成果を出している人が出世していけばいいですよね。

谷本:評価制度ですね、そこにいきつきますよね。忠誠心で測るんじゃなくて結果だけをみる。

小池:男性の評価とか働き方を変えるということもそうですが、社会全体で子どもを育てる、大事にするという意識が必要ですよね。少子化で子どもを増やさないといけず、育てやすい箱はだんだんにできてきているとは思うんですが、人の気持ちとか考え方、子どもに対する目線というのが全然一昔前から変わっていないように感じます。

ベビーカーに乗せて電車に乗ると、日本(東京?)では白い目で見られるのですが、海外に行くとささっと人が寄ってきてあやしてくれる。そういう子どもに対する視線の違いっていうのは、全体において、制度とかにも影響してくると思うんですね。

とにかく子どもが育ちやすい、育ててあげやすい、そういう社会になるといいと思います。一人産むのが大変だったから言っているのではなくて、一人産んですごく楽しかったから、もう一人産もうって思えるような意識の改革がみんなできたらいいなって思うんですけれども。
山田:とても共感できます。アメリカで子どもを産んだのですが、赤ちゃんに対する視線が全然日本とは違うように感じます。アメリカではベビーカーを押して歩いていると、道路の反対側からでも赤ちゃんの出産おめでとう!と笑顔で手を振ってくれるような温かさがあります。具体的に何が違うのかわかりません。宗教や文化的な背景もあるのかもしれませんが、日本だとベビーカーで地下鉄や階段を歩いていても肩身が狭く感じます。社会としての基本が違う様に感じます。

飯塚:例えば一人出産し、二人目を躊躇している人がいると思うんですよね。仕事面だけでなく、会社側からも例えば病院に行けるとか、二人目ができやすい、作りやすい環境が必要ですよね。もうちょっと妊娠してもよくて、働きやすくてという雰囲気が欲しいです。特に妊娠して体がきつい時もあるけど、それを隠しながら働いていた記憶もあります。妊娠しても働きやすい職場っていうのが二人目、三人目につながるのかなと思います。

谷本:本当に本日はありがとうございました。ジャーナリストとしてとても勉強になった座談会でした。
座談会にご参加くださった方々(順不同): 河口綾子さん、高橋雅子さん、山田夏実さん、新妻直美さん、高瀬由美さん、相良由紀子さん、中野陽子さん、飯塚伸子さん、野田由希子さん、六藤陽子さん、吉田裕美子さん、小池理恵子さん(一部の方仮名)
谷本 有香
経済キャスター/ジャーナリスト
山一證券、Bloomberg TVで経済アンカーを務めたのち、米国MBA留学。その後は、日経CNBCで経済キャスターとして従事。CNBCでは女性初の経済コメンテーターに。 英ブレア元首相、マイケル・サンデル教授の独占インタビューを含め、ハワード・シュルツスターバックス会長兼CEO、ノーベル経済学者ポール・クルーグマン教授、マイケル・ポーターハーバード大学教授、ジム・ロジャーズ氏など、世界の大物著名人たちへのインタビューは1000人を超える。 自身が企画・構成・出演を担当した「ザ・経済闘論×日経ヴェリタス~漂流する円・戦略なきニッポンの行方~」は日経映像2010年度年間優秀賞を受賞、また、同じく企画・構成・出演を担当した「緊急スペシャル リーマン経営破たん」は日経CNBC社長賞を受賞。 W.I.N.日本イベントでは非公式を含め初回より3回ともファシリテーターを務める。 現在、北京大学EMBAコースに留学中

HP: http://www.yukatanimoto.com/
衣装協力(谷本有香氏):GLAmaster撮影協力:安廣 美雪(Take_)