カウンセラーが教える 相手の話を「聴く」ということ |
自分関係®改善カウンセラー(臨床心理士)ストレスフリーアドバイザーの髙橋雅美です。
A子さん:チームメンバーの中に、いつも「でも、だって」と平気で堂々と言い訳をする20代後半の男性社員がいるんですね。今までも彼に対して、話を聞いてフォローしてきたつもりなんですけど、全く進歩がないんです。それで自分の「傾聴」の仕方にもっと工夫ができるのではないかと思っているんです。
カウンセリングでは自分も傾聴してもらう体験をしていますけど、どんな工夫ができるかヒントをもらえないでしょうか?
カウンセラー(以下Co):「傾聴」の方法をもっと工夫をして、言い訳ばかりする若手社員に対応したいと思っているんですね。
カウンセリング場面での「傾聴」というのが、全て役立つかどうかわからないけれど。「傾聴」は、相槌をしたり、相手の言葉をオウム返しする、と簡単に捉えられている方も多いですよね。私たちカウンセラーはかなりの時間を使ってトレーニングするんですけど、基本でありながら、相当難しいんです。ポイントになることは3つですね。
●余計なことは言わず、わかろうとすること。すぐにアドバイスしたり、励ましたりしない。わかったつもりにならない。
例えば、その男性社員の方、B君としましょうか。B君に対して、「またいつも同じ言い訳している。」とわかったつもりにならないこと。そして「だから、○○したらいいよ。頑張ってみて。」と結論をこちらから言わないことですね。
A子さん:あ、それやってしまっています。いつも言い訳するからウンザリして、すぐにアドバイスしちゃうんです。
Co: そのためには、
●相手が話す「内容」について、すぐに反応しない。つまり、評価しないということ。話の内容ではなく、それを話す相手の「感情」に焦点を当てる。
確かに「言い訳」を聞き続けるのはしんどいですよね。でもB君が「何を言っているか」だけに注意を向けるのではなく、言い訳してしまうB君はどんな「感情」なのだろうと、それをわかろうとするということなんです。
もしかしたら常に自信がないのかもしれないですよね。だけどそれを見破られたくないから「言い訳」してその場を取り繕うとする、とかね。
A子さん:確かに20代でこのプロジェクトに関わるのは、かなりのチャレンジなんですよね。だから背伸びしているのかもしれない。でもそれを他のメンバーには知られたくない。
Co:弱みを見せたら、何を言われるかと怯えているのかも。「平気で堂々と」しているというのも、精一杯虚勢をはっているのかもしれないですしね。でもそれをA子さんはB君に言う必要はないですよね。でも「そうかもしれない」と思って聴くと相手に対する見方が少し変わってくるかもしれない・・・。
最後は、
●同時に、聴いている自分の「感情」にも気づいていく。
ということかな。
言い訳ばかりするB君を目の前にして、A子さんはどんな感情になりますか?イライラしたり、もしかしたら怒りのようなものも感じているのでは?その感情は否定する必要はないけれど、どうして怒りを感じるのかな?と今度は自分のココロに聴いていくのです。
A子さん:え~、全くその通りなんです。「もういい加減して!」という感情が湧いてくるんですよね。それは、彼がいつもそんな態度なので、私自身がリーダーとして無能であることをつきつけられているように感じるからなんです。あ、そうなるとこれは自分の課題ですね。
「傾聴」ってハードルが高い。でも、自分なりに出来そうなこともあると感じました。いろいろ試行錯誤しながらやってみます。すべての人間関係にも応用できますよね。
<A子さんの気づき>
①相手の話を聴いて、解決しようとしない、わかろうとする。
②相手の話の「内容」だけでなく、「感情」にも注意を向けてみる
③傾聴しながら自分のココロの声にも耳を傾けてみる