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■ ADV(アドボカシー)な人々 #06


LIFE VIDEO株式会社 土屋 敏男「いまのきもち」 vol.4

片岡氏:有香さんは経済ジャーナリストなので金融業界に詳しいですけど、通常銀行や金融関係が融資先などの調査をする時って、黒字赤字とか云わば帳簿の中の世界じゃないですか。そういう業界が映像のコンテンツを今必要としている。そんなニーズが存在することを感じたりしますか?

谷本氏: すごく感じます。私は株主さん対象にいろんなセミナーをして、企業と株主さんと合わせるということもしていますが、株主さんが求めていることを企業側が全然提供できていなくて、まさに数字だけなんですね。

株主さんはやはり企業のストーリーを見ないと投資できない、株を数字だけで買っているのではなくて、社長のお人柄も知りたいと仰る。でもそういうビデオの作り方は全くされていらっしゃらないので、その辺のマッチングがうまくできていないと思いますね。

片岡氏: パワーポイントの棒グラフなんですよね。

谷本氏: ええ。その時のスポット的なものしか出していないんです。そうしたニーズに気づいていない企業は多いですね。
土屋氏: 会社のパンフレットでも、まあいろんな作り方があるんだろうけど、無機質なものだったり、大方、商品パンフレットだったりする。それで本当に伝えるべきものは何なのか、ということだと思いますね。

テレビのコマーシャリズムというのは視聴率に晒されるけれど、僕らはやはり人の心を動かすこと、泣かせるとか笑わせるというテクニックに何十年磨いてきました。スポンサーニーズで非常に短期的に、(商品が)何秒出ますか?って言われると、「そんなこと関係ねーよ」ってずっと思ってた(笑)

片岡氏: まあ大概の担当ディレクターはそうですよね(笑)

土屋氏: この前の大雪の時に、山崎パンがあの雪の中でパンを配る映像がYouTubeで上がって話題になったじゃないですか。あれが何十時間映ろうと関係ないわけで、こういう時に出る社員のアクションという、その物語に人は興味があるんですよね。そこを、そういう事件じゃなくても歴史を聞くことによって浮かび上がらせることができますよと。つまり「誠」ですよね。

片岡氏: ちょっと変な質問ですが、最近例の作曲家のことが話題です。要は、悪意のあるなしは別にして、テレビの作り手が騙されちゃう可能性もあります。例えば有香さんのビデオを作るとします。でも人はやっぱりある程度自分のことを良く見せたいから、良い事は言うけれど、都合が悪いことは内心思っていても言わないじゃないですか。でもそこを土屋さんはグイグイいくということですか?

土屋氏: それでいいのよ。自分が良いと思っていることって、それは深さの問題なんだな。こう思ってもらいたいと思っていることって浅くて、「どうしようもなく自分ってこうなんだ」というところがその人の魅力じゃないですか。それって解ってしまうから。
片岡氏:ある意味、追い詰めるって感じですか。よく言えば、その人の本音に迫るというか。

土屋氏: その人の本当のエネルギーの出かたとか、こういう事があるとこう動いてしまう、これっていったい何故なのかとか。何故か解らないから突き詰めていくというか。「あの時のこれってこうなのかな」と自分で探っているところが映る。その映っている画が、見ている人に説得力があるんですよ。

テレビはいくらでもデコレーションできちゃうからね。ナレーション付けたり音楽付けたり。感情を揺さぶるテクニックというものを持っちゃっているわけですよ。それをもっと裸にして、「なるほどなあ、そういうことか」と本当に思うその「感じ」というのはもう、音楽もナレーションも要らないんです。それは間違いなく見ている人の心を揺さぶるし、ましてや子供や社員と共有していくための力になる。

片岡氏: プロが撮影して編集してオーダーメイドで映像を作るって、一般の人が思っているビデオ撮影よりケタが1つ2つ違ってたりするじゃないですか。さらに、まだ会社も創業5年だったり10年だったりと短く、自分の外見に自信がなかったりとか、ネガティブなことを言い出すとキリがなくて、そもそも自分なんかが映像に出るに値するのかなどと考えてしまう人もいます。そういう意味ではもっと気楽というか、あまり身構えずに自然体で出てもらって良いんですよね?
土屋氏: そういうことだよね、今Facebookで無料で使えるアプリになっていて、自分の写真をアルバムに並べて音楽もいくつか選べるんですよ。するとなんかね、自分にしか見えないものが見えてくるんですよ。「ああこの時こういう事があったな」とか。自分が今どこに向かっているのか、今何故ここにいるのか、という深堀りができるのがライブビデオだと。

僕はLIFE VIDEOがTシャツのようになれば良いと思っているんです。Tシャツも100円のものもあれば、エルメスの6万円のTシャツもある。って、僕らはTシャツ自体が無いところに、エルメスのTシャツを作り始めているという(笑) 安いものはこれから出てくるだろうけど、一番最初はエルメスで良いだろうと(笑)

片岡氏: おじいちゃんが孫のビデオを作るとか、孫達がおじいちゃんの還暦のお祝いに作るとか。そういう当たり前のような風習になるのが理想ですよね。

土屋氏: おじいちゃんが孫の5歳、15歳、25歳・・85歳まで10年毎の契約を、遺産の一部として先払いで頂いてね(笑) まあ一応日本テレビだから潰れないかと思うし(笑) 80年撮ってもらえるパックを孫への唯一の遺産としていただけたら本当に楽しいと思うね。この前ベルリンの壁のあたりを5年毎に何十年と撮り続けているのを観たんだけどすごく面白かった。日本も20年後なんてどうなってるかわからない。

今の映像見て、「2014年のこういう時代って、なんやかんや言ってものんびりしてて良いよね。街を歩いている人もそこそこ良い服きてるし」みたいな。「三丁目の夕日」でもいろんな人がそれぞれの想いで見てるじゃない。「テレビってこんなに目をキラキラさせながら見てたんだ」ってすごく心に刺さるわけですよ。

片岡氏: 正座してですね。

土屋氏: 車業界の人たちは「うわあ、あれ使ってたんだ」みたいな。そういうことを映像として記録して今はWEBにも載っけることができる。亡くなったおじいちゃんやおばあちゃんにWEBでいつでも会える。それも自分しか見れない映像として。自分へのメッセージをクラウドに置ける時代がもう確実にあるわけです。