生成AIとリスキリングについて考える |
5月も後半に入り、新生活も落ち着いてきた頃でしょうか。1年間継続してきたコラムも本日が最終回です。本日のテーマは「生成AIとリスキリング」について考えてみたいと思います。
■生成AIができること
①テキスト生成AI
読者の方も一番想像しやすい業務だと思いますが、文章やテキストデータを生成する機能です。例えば、「記事の執筆」「文章の校正」「チャットボットへの実装」「文章の要約」「翻訳」といったことが可能だ。「プログラミングコードの作成や修正」もこの領域に含まれます。作業効率の向上、アイデアの創出といったメリットがある一方で、間違った情報を生成してしまうことや、学習データに偏りがあると偏見に基づく情報や差別表現が生成されるというデメリットもあります。また、データプライバシーの観点から、入力情報に個人情報を含まないといった対策を講じる必要もあるでしょう。
②画像生成AI
生成AIが作ったイラストを目にしたことがある方も多いと思います。まさに画像を生成するための技術として、先述したVAEやGANという手法があります。新たなデザインを生み出せることから、創造性と多様性の促進、プロトタイプの作成といった活用方法が考えられます。一方で、生成された画像が、他の作品等の著作物を模倣している可能性があり、特に商用使用をする際には、著作権に触れていないことを厳密に確認することが求められます。
③動画生成AIほか
画像生成の技術を応用して、動画を生成することも可能です。既存の映像や動画を元に新しい映像を生成したり、特定のエフェクトを挿入したりすることも可能で、特殊効果をつけることにも使われている。この他にも、音楽や音声を生成することもできます。
また、新APIモデル「GPT-4o」は、日本時間の2024年5月14日午前2時に、米OpenAI社による『OpenAI Spring Update』で最新のGPTモデルとして公開されました。
GPT-4oはテキスト、オーディオ、画像を組み合わせて入力・出力することができる新しい技術で、人間とコンピュータの対話をより自然に行うことができます。
■生成AIを活用する意義(人事業務の場合)
リスキリングとして、すぐに生成AIについて学びたくなるかもしれませんが、自身の業務の中でどのような活用ができるのかイメージしておくと良いでしょう。下記は人事業務を例にまとめてみました。
●業務効率の向上
人事部門は、間接部門であり、常に業務効率化やスリム化が求められる部署です。そのため、生成AIを活用する上では、まずは人事業務の中の「運用」領域において、積極的に活用をすることが近道だと考えます。その際には、費用対効果(ROI)を求められることになるため、業務ごとにかかっている労働時間、部下から上司への確認、その差し戻しなどに費やしている時間などを算出しておくことが必要です。
●散在している人事データの正しい解釈と統合
人事部門において生成AIを活用する際の“ネクストステップ”として挙げられるのがこの用途です。人事業務の中の「企画」領域に該当するものになります。
近年、「データドリブン経営」が注目される中、人事部門においてもデータドリブンな業務遂行が重要であるとされてきました。現在、各種SaaS※1サービスの活用によるデータも蓄積されているなど、人事データは会社のさまざまな場所に散在している状況です。本来の人事データが持つ意味やその正しい解釈、またデータガバナンスといった一定のルールの下で種々のデータを統合していくプロセスに、生成AIを活用することができると考えます。
※1 SaaS(Software as a Service)とは、提供者(サーバー)側で稼働しているソフトウェアを、利用者がインターネット経由で利用できるもの。
●戦略立案・アイデア出しのサポート
経営戦略の理解・現状把握には、社内の多くの資料を読み解いていく必要があるため、通常かなりの時間を要することになります。このプロセスも、生成AIのサポートを受けることで、時間の短縮が可能です。また、求める人材像の策定や研修プログラムの設計など、アイデアを要する場面もあるでしょう。今までであれば、採用サービス会社や研修会社から情報収集していたプロセスを省略し、デスクトップリサーチ※2やアイデア発想ができるようになります。
※2 デスクトップリサーチとは、情報やデータを収集する際に、インターネット等を用いてデスクトップ上でリサーチする手法。
■生成AI分野のリスキリングをするには
生成AIの隆盛に伴い、様々な資格試験が登場しています。これらは生成AIについてエンジニアでなくても、基本概念の理解を進めていくことができるプログラムになっています。
●生成AIパスポート
<概要>
AI初心者のために誕生した、生成AIリスクを予防する資格試験です。AIを活用したコンテンツ生成の具体的な方法や事例に加え、企業のコンプライアンスに関わる個人情報保護、著作権侵害、商用利用可否といった注意点などを学ぶことができます。本資格の提供を通じて生成AIリスキリングを促し、生成AIを安全に活用するためのリテラシーを有する企業・人材の可視化を推進しています。
<学習期間目安>
2ヶ月程度
<問題数>
60問
<受験料>
11,000円(税込)
●Generative AI Test
<概要>
Generative AI Testとは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、生成AIに特化した知識や活用リテラシーの確認の為のミニテストです。
OpenAIやMidjourneyを始めとする近年企業活動にも導入がすすむ生成AIを、企業で安心かつ有効に活用するために必要不可欠な知識を有しているかどうかを確認できます。
<学習期間目安>
1ヶ月程度
<問題数>
20問
<受験料>
2,200円(税込)