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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) ライフスタイル 2014-10-15
自分らしい未来の送り方 ~ゲーテの幸せ講座~

10月。運動会シーズンの到来とともに、いよいよ秋も深まって来ました。

早くも書店に並び始めた手帳を見て、「え!? 今年もあと少し?」と焦りを感じた方もいるのではないでしょうか。

仕事や学校などでは、4月始まりの日本では、10月はちょうど折り返し地点。ぼんやりしている間に折り返し地点を通り過ぎてしまいがちですが、この時期の「手帳販売開始」は、図らずも私たちに大切な「時機」を教えてくれるようですね。

年度の折り返し地点の10月は、ゲーテの言葉とともに、今、生かされている人生を、どう「活かして」あなたらしく幸福感一杯に歩むことができるのか、考えてみたいと思います。

 

喜んでことをなし、

なされたことを喜ぶ人は、幸福である。

(「反省と格言」より)

先日、テレビでエッセイストとしての活動を中心に、取材を受ける機会がありました。マイペースで人生を歩む私に、女性レポーターの方が「どうしたら、そういう歩み方ができるのですか」と問いかけました。世間一般の「出世街道」からは外れている私ですが、たしかに私は自分の人生の選択を、納得しながら生きている感があります。

高校生のころ、進路指導の前にぼんやりと自分の「未来」について考えたことがありました。陸上競技少女だった私に仕事をバリバリこなすキャリアウーマンのイメージは程遠く、さりとて、制服を着る仕事のあれこれ(お店?事務職?銀行・・・?)を考えてみても、しっくりくるものはありませんでした。とにかくやってみたい勉強ができる大学へ進学してから考えようと思ったのですが、その他に「社会貢献の仕事がしたい」「会社に依存しない仕事がしたい」と取りとめのないことをぼんやり考えたものでした。

さて、テレビでも放映されたエピソードですが、私の子供のころの遊びの一つは、「ゴミ拾い」でした。親友とともに、ゴミ袋とトングと軍手を持って集合。大人から見れば「偉いね~」というところですが、私たちにその称賛は必要ありませんでした。ただただ、身近なところがきれいになっていくことがとても楽しかったのです。

この一見、何のつながりもないエピソード、今はしっかりとつながっています。フリーランスで文章を書く仕事をする(会社に依存しない仕事)かたわら、地域活性化の手助け(社会貢献)をする仕事をしているのですから。でも最初から今のような仕事ができると思っていたわけではありません。その間には、大きな組織で働き、海外の小さな企業で働き、帰国してまた中小企業で身を粉にして働いてきた「修業時代」がありました。学生のころ、文章を書くことが大好きだったことも忘れ、親も心配するほどあくせく働きながら、頭のどこかで「ぼんやり」抱いていた未来を忘れずにいただけです。

でも、その中でヒントがあるとしたら、このゲーテの言葉のように、「どんな仕事も喜んでお引き受けしてきた」ことから始まります。

新卒で入社した会社では、誰もが怖がる上司が二人。直属の上司と、雲の上の上司である担当役員。二人ともお茶を入れるのも好みがうるさく、仕事に厳しいから誰も近づかない。でも末っ子育ちの私は、「自分が一番できなくて当然」というおかしな自信?があるため、少々叱られてもめげることはありません。指導してくれて感謝、そういうスタンスでした。ドイツに渡ってからも、誰も手を挙げなかった仕事を引き受け、運よく再建という結果を導くことができました。日本に帰っても同様で、前任者がお手上げになった案件、会社と社員、現場と本部の板ばさみになる仕事・・・。30代前半まで私の仕事はほとんど「人の嫌がる仕事」をいかに楽しく成果を上げるかという課題の中でやって来たように思います。

同時に、その中には必ずそれを見守り、応援してくれる方たちがいました。周囲が手を差し伸べてくれる時にはけっして拒否せず、有り難くそのお知恵や能力をお借りしました。

「自分にできることはたかが知れている」という気持ちとともに、3人兄弟の末っ子にして、唯一の女の子という環境に育った私は、「甘えん坊」の性質が沁みついています。

さてその結果が、今の私です。もうちょっとこうなれば・・・と思う時がないと言ったらウソになります。けれども自分の人生を自分らしく、多くの仲間に支えられ、応援してもらいながら、自分の仕事で人さまの役に立っている実感ができる日々に心地よさを感じています。

振り返ったとき「あの仕事はやるんじゃなかった」という仕事は、ひとつもありません。

同じするなら喜んでした方が楽しいし、良い成果が出ます。差しのべられた手には、喜びでお返しする方が、相手にとっても幸せをもたらします。

もし、あなたが「誰もが嫌がる仕事」を頼まれたら、できるだけ率先してお引き受けすることをお勧めします。嫌がる仕事を引き受けたあなたは、どんな結果になろうとも、きっと感謝される人になるでしょう。それを「喜んで」引き受け、良い成果を出したら、あなたは周囲に感謝されるだけでなく、あなた自身にも大きな自信をもたらし、またひとつ、素敵なきらめきを纏う女性になっているはずです。そう、その「面倒な仕事」は、あなたを輝かせるチャンスでもあるのです。

誰かと比較して幸福になろうとする前に、まずはあなたが「喜ぶ人」になりましょう。

秋の夜長が嬉しい季節。あなたの身に起こった「今日あった嬉しいこと」を考えながら、朗らかな顔で眠りにつけば、きっとあなたの未来は、あなたの思ったような人生へと向かっていくはずです。

 

そんなに顔をしかめるな。

なぜ君は世の中にそんなに飽きるのか。

自分のそばに、身の周りにあるものを、

みんな知らないでいるのだ。

(「温順なクセーション」より)

 

このご時世、本当に顔をしかめたくなるようなことばかりです。

甚大な自然災害や事件事故のような「本当の災難」は別ですが、問題なのは、それ以外の「どうでもいいこと」。

もちろんそれは、フェイスブックや、ブログ、インターネットや情報誌、ニュースからの情報の氾濫。実は、その中のほとんどは「あなたに関係のない、どうでもいいこと」です。

約300年前に生きたゲーテがそのような環境であるはずはありません。

しかし、そのころにも、きっと「社会の雑音」が、世間の人々の幸せな生活を阻害していることを、ゲーテは感じ取っていたのでしょう。現に、彼は別の本にも「新聞を読まなくなったら、なんと清々しい毎日だろう」というような言葉を残しています。

当時のゲーテと言えば、この現代における「ちょっとした有名人」の粋をはるかに超えた有名人です。ゲーテの熱狂的なファンの一人に、バロック音楽の天才、ベートーベンが挙げられると言えば、その度合いがわかるかもしれません。

そのゲーテをして、「身の回りにあるものの大切さ」が何より大事だと、言い回しを変えては、何度も何度も言わせるのです。

インターネットに溢れるその芸能人のプライベートな話は、本当にあなたに必要ですか?

会ったこともないフェイスブックの「友達」が食べたごはんの内容、本当に興味がありますか?

昨日聞いた、真実かどうかわからない身近な人の噂話は、あなたの人生を潤していますか?

あなたの人生、あなたにしか生きることはできません。

あなたも私も、生まれてから1秒1秒、来るべき死に向かって歩きつづけています。

その「死」がいつやってくるかは誰にもわからない状況の中で、あなたが「他人」のために過ごしている時間、そして他人と自分を比較したがために、自分の人生を不満へ貶めているとしたら、もったいないことだと思いませんか。

他の誰でもないあなたを大切にすることが、あなたが一番最初にできる、あなたらしい人生への第一歩。

先日、仕事で、ある会社の社長さんと対談をしました。

「世の中、悪い方へ行っているということばかり新聞やニュースは言うけれど、違うと思う。宇宙はいつも良い方向へ向かっている。それを信じて生きていける社会を作りたい」。

悪いことばかり報道されるが、良いことを伝えるメディアが少ないという視点から、「日本の素晴らしいところ」を発信している季刊誌の理念に賛同し、毎号執筆している私にとっては、心から共感できる言葉でした。

もちろん、世の中には良いこともあれば悪いこともあります。でも、その前にあなたの周りにどんなに素晴らしい宝の原石が転がっているか、ちゃんと見つめたことはありますか。

他人と比較して、自分の人生が情けないな、味気ないなと嘆いてはいませんか。

たとえば私は以前、仕事上毎晩外食をし、週に何度もパーティーへ参加するという暮らしをしていたことがありました。そういう生活が好みの人も肌に合っている人もいるでしょう。でも私はその生活に戻りたいとも思ったこともないですし、当時でさえ、銀座や六本木で遅くまで食事をしていても、両親が待つ、緑多き横浜の片田舎の家に毎晩帰っていました。ホテルに泊まった方が楽でも、朝、小鳥のさえずりで目が覚めたり、家の前を散歩する人が気持ちよさそうに深呼吸するのを見ながら朝食をとる。その生活の方がどんなに豊かに思えたかしれません。そして今は、大切な家族と、近くの海でピクニックをする穏やかな一日の方が、豊かで贅沢な時間に思えます。

それぞれが、それぞれにしかない生活があり、そこにしかない豊かさ、自分の肌に合った価値感がある。

そこに気づいた時、はじめて人は「自分の意思で、自分の人生を歩む」ことを楽しむ準備ができるのではないでしょうか。

家に帰った時、家族の顔を見た時、自宅のお風呂に浸かった時、ペットを胸に抱いた時・・・。それぞれに感じる「ホッ」とする瞬間があります。

それこそが、あなたの持っている小さな宝物。小さな宝をたくさん詰め込んだあなたの人生は、キラキラときらめく、素敵な宝箱。その唯一無二の宝箱を大切にできるのも、あなたにだけ与えられた特権です。

そう、「幸福の青い鳥」は、今この瞬間にも、あなたの足元にそっと羽をおろして休んでいるはずです。


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