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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) ライフスタイル 2014-05-21
心の倦怠感に見舞われたら ~ゲーテの幸せ講座~

五月の大型連休も過ぎ、仕事や学校に行くのがなんとなくおっくう。期初の緊張感がゆるんで、なんとなくやる気がおきない。いわゆる「五月病」の季節。いつも前向きでがむしゃらだった若いころの私も、ときにはこんな季節の病に負けてしまうことも。

そんなときに「カツ!」を入れ直してくれたのが今回ご紹介するこの格言たち。

心も背筋もピンと伸ばして、誰もが憧れる素敵なポジティブオーラを放ちましょう。

 

半時間位ではなにもできないと考えているより、

世の中の一番つまらぬことをする方がまさっている。

(「格言と反省」より)

この言葉に、ドキッとさせられる人はけっして少なくないと思います。

特にスマートフォンやインターネットなど、誘惑の多い現代。「ほんの少し」のつもりでも気がつけば何時間もダラダラと見てしまった・・・なんてことは、多くの人に当てはまることではないでしょうか。

「仕事は忙しい人に頼め」とはよく言われる言葉ですが、忙しく活躍している人には、こんな無為な時間がありません。だからこそ頭がクリアな状態を保ちながら、時間を有効に使って仕事ができるということなのでしょう。

さて、私が初めてこの言葉を肝に銘じたのは、23歳でドイツに赴任したときです。社長秘書として渡独した私でしたが、ひょんなことから、とんでもない異動をすることになります。英国人経営の赤字小売店買収に伴い、その再建責任者として飛びこめというのです。

そこにあったのは、「三大不良」。13年積もりに積もった不良債権、絶対に売れそうにない商品の不良在庫、仕事のやる気もなければ、会社や周囲への不満だらけ、しかもあわよくば在庫を持ちかえってしまういろんな国籍の不良社員。

物販店の再建という未経験の仕事を、異国の地で外国語を使ってやり遂げるという前途多難の波にのまれそうになっていました。何をすればいいのかさえもわからない日々。そんなとき、この言葉を見つけ、目からうろこが落ちた思いでした。

一念発起した私は、この言葉を紙に大きな字で書きとめ、自分のデスクの前に貼り付けました。物販経営の素人でもやれることがある。たとえば掃除婦を頼むのをやめて、自分がトイレ掃除をする。切れた電球を取り換える。小さな額からコツコツ支払いをしていく。思いついた企画はとにかく端から実行してみる。

あっと驚くような奇策を仕掛けたわけではありません。けれども「小さなつまらぬ」仕事を続けた結果、次第に店舗がきれいになり、売れるものは何かがわかるようになり、支払いの小まめさに取引先の信頼が戻り、気がつけば、経営は黒字化に成功。社員たちは仕事の誇りと楽しみを知るようになり、半年で「三大不良」は姿を消していきました。

今でも、気合いを入れなければいけないのに、なんとなくエンジンが動かない、そんなときにはこの言葉を思い出します。そして、まずはデスク周りの片づけなど「何でもないこと」に手を動かします。するとだんだんと仕事モードになってくるのです。

後日知ったことですが、これには科学的見地からも効果があるそうです。アスリートがまず準備運動から始めるのと同じで、どんな仕事の人も、何でもいいからまず手先を動かすと、脳に血が巡り、頭もクリアになってくるそうです。

ゲーテは経験の中から、小さなことでも「行動する」ことは、「考える」に勝ると知っていたのでしょう。「行動派哲学者ゲーテ」はこれに類する言葉をいくつも残しています。

どんな名峰でも、まずは最初の一歩がなければ辿り着くことができないのと同じように、どんな大仕事でも、まずは小さな行動から。直接仕事に繋がらないことだっていいのです。

五月病になってしまったあなた。デスク周りはきれいですか?衣替えは済みましたか?忘れていた返信や頼まれごとはありませんか? さあ、今からでも、なにか一つ、「小さな仕事」をやってみてください。

小さな達成感の積み重ねは、きっとあなたの「名峰」に導く礎となるでしょう。

 

あせることは何の役にも立たない。

後悔はなおさら役に立たない。

前者は過ちを増し、後者は新しい後悔を作る。

(「格言的」より)

晴れて入社した会社。意気込んで迎えた春。ゴールデンウィークなどで緊張が解けた瞬間に、気力が萎えてしまう。だれしも経験するものです。そしてゴールデンウィーク明け。長い休みを経て、体は休めたはずなのに心がついてこない。目の前にやるべきことがあるのにと気ばかり焦る。焦った末に、思いどおりにいかなくて自分を責める。そして後悔。

焦りと後悔の負の連鎖は、こうして雪だるま式に膨れ上がり、前向きな同僚や上司に合わせられなくて、自分の殻に閉じこもりがちに。とりわけ、自分がネガティブな状況にあると、周囲が実際以上に楽しそうに見えたりするものです。

ゲーテは、焦りも後悔も、ともに無用のものであるだけでなく、抱きはじめたら自分をマイナスの連鎖に引き込むものだと警鐘を鳴らします。

このズバリとした物言いが、か弱き?お仕事女子の心に、心地よく響くではありませんか。

ゲーテは、この言葉を通して、今日より先(未来)でもなく、過ぎてしまった過去でもなく、今、目の前にある現実だけを見つめなさい、と教えてくれます。未来も過去も変えることができるのは「今」の行為だけ。今を真摯に生きれば、「これから作られるであろう過去」は変わり、とうの昔の過去の失敗でさえ「大したことはなかった」という杞憂に変え、さらに「ポジティブな今」の積み重ねは「あの失敗があったからこそ」と思える喜びの種に変化し、眩しい未来を引き寄せます。

焦りも後悔も経験したことのない人などいません。だからこそ、ときにはこの言葉を思い出してください。力を注ぐべきは今この瞬間だけであると思えば、心が少し軽くなっていきませんか。

キラキラと輝く海面はあなたの人生。ときおり波が高くなり、ときには凪が海を支配します。サーフィン、ヨット、海水浴、釣り。それぞれに適した海の姿が異なるように、あなたの人生に凪いだ日があっても、高波の日があってもいいのです。

もし、あなたがサーファーだったら、やり過ごしてしまった「良い波」のことなどくよくよ考えず、次の良い波に出会うために目の前の海面とだけ向き合うはずです。

五月病。大いに結構。でも、時には目の前にある「このとき」だけを見つめ、少しだけ動いてみましょう。いつか、辛い時期を経験したあなたにこそ「そんなときもあったよね」と、自分よりも若い世代や、子供たちに思いやりにあふれた言葉を掛けてあげる優しさが備わっていることに気づくはずです。

一つひとつのあなたの経験は、あなただけでなく周囲の人にも生きる力を与えることができるのです。



 


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