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■ ADV(アドボカシー)な人々 #10


フリーライター 赤木 智弘&NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長 大西 連 「いまのきもち」vol.2

赤木氏: 一旦今の立場から出た時、支えてくれるものが全く無い。特に住宅支援って日本には本当に無いんです。衣食住っていうのは最低限の必要なんだけど、衣食はまだ安いものがあるとして、住居は公共の住宅がどんどん減ってしてしまいっています。特に高度経済成長時代に作った公共の団地はほとんど建て替えていて、家族向けのある程度高級なものになっています。低所得者向けというのがなくなってきています。

大西氏:日本の公的住宅って6%しかないんですよ。日本の貧困率が16%と言われてます。これではとても収まりません。

赤木氏:その6%の多くもいわゆるファミリー向けだったりするんです。

片岡氏:単身者を想定していない。

赤木氏:単身者向けの安いアパートもまだ残っているんだけど、老朽化していくからどんどん減って、さらに状況は悪くなっていくと思います。

谷本氏:シェアハウスも結構増えていると思いますけど、ああいうところがカバーするというのはできないんですか。

大西氏:アッパーな人たち向けの良いシェアハウスはあります。その一方で貧困層向けには「脱法ハウス」と言われるものがあって、毎日新聞がスクープを書いて、公的な役所がそういったところを斡旋するという問題も明らかになっています。国交省も規制に乗り出しているんです。それこそ貧困ビジネス。

狭い部屋にベニヤ板で仕切りを作って、家賃が15万円くらいだとしたら、そこに20人入れて3万円づつ取るんです。家賃が15万だから単純計算で45万円の利益が上がる。敷金礼金なしで滞納したらすぐ追い出す。賃貸借契約でもないし定期借家契約でもない。よく分からないレンタルオフィスみたいな使用契約・利用契約という業態が増えてきています。

大きなターミナル駅の近くの雑居ビルとか、風営法が厳しくなったので、抜けてしまった飲食店の後とかを安く買い取って、ネットで例えば、「池袋・ゲストハウス・低家賃」で検索するとたくさん出てきます。ただ、困窮者のの最後の受け皿になっている部分もあるので、ちゃんと住宅基準を満たした低所得向けの受け皿を作らないと、よりアングラに向かっていきます。
片岡氏:行政も我々もますます把握できなくなる

大西氏:結局は新たな「業態」が生まれてくるだけです。

片岡氏:その脱法ハウスを規制することによって、結果的に追い出されてしまい住居を失う人たちが出てきてしまうんですね。

大西氏:そうです。実際あるネットカフェがそういうことをやっていて、規制がかかって追い出されちゃった人たちがいて、僕らも支援して何とか次のアパートを探したんですけど、僕らと繋がれなかった人はどこに行ったかわかりません。多くの方は就労していて、それこそ12万円から18万円くらいは稼いでるんですよね。こうした人たちも行政が設定した制度からは漏れているし実態もよく見えません。でもたくさんいらっしゃるとは思います。

谷本氏:その日暮らしのような生活になってしまうと、当然ながら中長期的な生活プランも立てにくいと思います。そういう人たちが長期的な視野を持てるようになるためには、何が一番必要ですか?

大西氏:日本ではキャリアプランを描くことがとても難しく、一度レールからこぼれてしまうと、その後に就ける仕事の業種や業態・雇用形態などがかなり限られてしまいます。ステップアップはかなり難しいです。職業訓練といった制度も一応はあるんですが、残念ながらすぐにステップアップして雇用に繋がる制度ではありません。

制度面において中長期安定して働ける雇用環境が日本社会にあるかというとなかなかありません。短期の「日雇い派遣」という形で業務を丸投げされていて、労働生産性は高くなるけど賃金は低く、労働条件も厳しいという、“ブラック”的な働き方をしていて辛い人たちが多くいます。その日暮らしをしているから社会保険料も払えません。将来は無保険・無年金になって生活保護しか受け皿がない。雇用全体の話も住まいの話もマクロ的な話になってくると思います。赤木さんはどうですか。
赤木氏:僕は仕事というものが、すべての人にとってのちゃんとした受け皿になるというのはもう不可能だと思うんです。仕事というのは、ある程度の需要があって供給もあるから成り立つわけです。企業は一時的に人を雇ったとしても、事業が失敗すると潰れてしまうわけです。すると働いている人たちはとこかに放り出されてしまう。企業を受け皿にすると、国が企業に対してお金をつぎ込むしかありません。私はそれは本末転倒だと思うんです。

本当は国が人を救わなくてはいけない。だけれども人を救うために国は企業にお金を入れて、企業に人を雇えるようにして人を守っているという「間接的なこと」をやってしまってる。しかし企業は儲けなければ潰れる。企業が潰れると人は無職になるのは当たり前です。これはどうしようもないことだけど、どうしようもないことを起さないためにと、そこに国が変にお金を使ってしまっていて、その分直接人に対する給付は少ない。

そこで、企業にしがみつくことでしか生きられない人がいっぱい出てきます。労働力の供給が過当競争になれば企業はどんどん搾取しようとする。そうした中でブラック企業といった問題も出てきました。労働者たちの立場が弱くなってくるというのが状況だと思うんです。

大西氏:病気を理由に休職する人が利用する「傷病手当」のデータをを調べたところ、全国健康保険協会によれば、「精神及び行動の障害」で休職する方(傷病手当を受給する方)は30年前は4.45%だったんです。ところが昨年では25%にまで上昇している。

しかも、その後に資格喪失、休職から退職した人は、うつ・適応障害といった精神及び行動の障がいがによるケースが47都道府県のすべてで一番多いというデータが明らかになりました。傷病手当を受けられるというのは、ある程度安定した正社員の人たちです。ところが正社員でさえ、かなり大変な働き方になってきています。企業にしがみつかないと生きていけないという状況の中で、どんどん追い詰められていく。これは非常に大きな問題です。

日本の労働人口は全人口の半分くらいなので、あとの半分は年金や社会保障制度や家族など、さまざまな形で支えられています。しかし、日本では労働というもの価値の中では一番高くて、働かないのは一人前じゃないというような価値観が強いですよね。ぼくもNPOで働いているのですが、周囲のプレッシャーは感じています。(笑)

片岡氏:NPOの活動は仕事ではないと(笑)
大西氏:「壷」でも売ってるんじゃないかと言われることもあります(笑)。NPOで働いてホームレスの支援をやってるよと言うと、何か怪しいことやってるんじゃないの、みたいな(笑)

大西氏:そういう意識ってまだまだすごく強いですね。それこそリクルートスーツ着て就職活動して、正社員に入れば安泰だよねという意識が、僕の年代でもまだ強いんです。そこからこぼれると、負の烙印といいますか、自分は落ちこぼれちゃった、スポイルされちゃったという意識がすごく強くなってしまいます。プラスに向くことがないんです。

労働というものが最上位の価値だとみなされると悪い連鎖が起きてくる。でもこれからは少子高齢化で労働人口は減少してきます。その価値基準だとこぼれてしまう人たちにとってはとても苦しい、生きづらくなっていくわけです。ですから、労働以外の視点、最近は「インクルーシブ・グロース」(さまざまな人たちをを取り込んだ成長)という言葉を使ってるんですけど、ゆるやかに裾野を広げていく成長が必要だと思います。

片岡氏:排他的にならないということですね。

大西氏:そうです。インクルーシブに成長していかなくちゃいけないというので、IMFも提言を作ったりしています。そういう発想で、社会の中で労働雇用からこぼれた人をどう支えるか考えていかなければならないですし、また、本来稼いでいる人が税金を納めることは、税金を納める自分たちにとっても良いことだよねと思える環境を作ることが大切だと思うんです。

谷本氏:新たな雇用先や産業を作ることは確かに理想だと思うのですが、現実にはなかなか簡単にいかないじゃないですか。労働力に流動性を持たせるということは良いことのような気がするんですが、その流動性が日本ではすごく固定化されていますよね。そこをうまく流していくためには何が一番必要ですか。
赤木氏:ひとつヒントになるのは、主婦労働をどう評価するかということだと思います。主婦労働って賃労働じゃないですからいくら働いてもお金は儲かりません。けれど社会にとっては必要です。旦那さんが労働するためには、家にいる主婦が家のことをちゃんとやらなくてはいけないですし、逆に言えば家のことをちゃんとやるから旦那は外で働いいけるということですから、少なくとも主婦は旦那の働きに対してすごく貢献をしています。つまり、主婦労働は会社や労働に対しても、とても貢献しているわけですよ。

もちろん育児や介護や高齢化の問題などもあって、家庭内での労働はとても重要で必要とされているにもかかわらず、主婦労働についてる人たちには十分な権利がなくお金も回ってきません。それはちょっとおかしいんじゃないの、ということを広めていくことがヒントになるんじゃないかと思います。つまり社会にとって必要な労働に対してちゃんと見合った分配を行うという考え方を世の中に広げていくことが地道な手段だと思います。

大西氏:介護や子育てといったアンペイドワークをペイドワークにしていくために、お金がついたり制度を作ったりというケースも出てきてはいますが、まだまだ低所得なんです。核家族化で家族が全ての介護をまかなえる時代ではなくなってきていますから、今後の超高齢者社会では介護のニーズはさらに大きくなっていきます。

実際に対人援助のマーケットはすごく広いと思うんですが、では誰が対価を支払うのかという時に、それを利用する人だけだと、どうしても手詰まりになってしまう。個人の負担だけでは回らない部分も大きい。企業や社会全体で負担をしなくちゃいけないという風に考えるようになると初めてお金が回ってくるようになるんです。社会全体で対価に見合ったお金を払えばいいんです。そこにお金が動くしくみがあれば対人援助の仕事は内需としてまだまだあると思うんです。

片岡氏:必要とされる支援に対して支払われる対価が「見える化」されると言いわけですね。

赤木氏:そこで「旦那が奥さんにお金を出す」という風になると、今度は権利関係ができてしまう。

片岡氏:「クライアント」みたいになっちゃいますね。

赤木氏:そうでない形を構築することが必要じゃないかと思うんです。
大西氏:ちょっとした工夫だと思います。たとえば先日、相対的貧困率というを日本政府が発表しました。母子家庭の貧困率が50%超えていたんです。日本は80%のシングルマザーが働いていて、世界で一番シングルマザーが働いています。離別・死別・非婚といろいろあると思いますが、シングルマザーの人が自分の年収の中で養育費をどれくらいもらっているかというと平均でいうと3%しかない。養育費の支払い自体をしていない場合も多く、非常に少ないんです。

谷本氏:へえ・・

片岡氏:ほお・・

大西氏: では、相手の男性がみんな低所得者かというと必ずしもそうではありません。払う約束はしたけど払われてないといった理由などで、結局はそれを国が税金で補填してるんです。スエーデン等は決められた養育費に対して国が元夫から徴収する制度があるそうです。もちろん夫の所得が下がればちゃんと減額されたりしますが、仕組みとしてちゃんと国がやっている。本当に地味なことなんですけど、そういったことを制度的に整えていくことが重要でしょう。

赤木氏:あとね、やっぱり国が分配することに対して嫌がる人がいるんです。つまり自分たちが得たものを自分たちが分配するのは良いんだけど、自分たちが得たものを国が分配するとなると、とたんに不公平感が出てくるわけです。そして、それが現金給付だと「ばら撒き」と言って批判されます。

片岡氏:アメリカの場合結婚する前に、別れたときにどう財産分与するかなど、事前に契約書を交わすというケースもあったりと聞きます。良く言えばきっちりだし悪く言えばドライです。日本に向くかどうかというとわかりませんが、やらないで後から大変なことになるよりは事前にやった方が良いような気もします。

赤木氏:会社が安泰でないように家族も安泰とは限らないわけです。どこかでこうしたことは整理しておかないといけないと思いますね。


 


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