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■ ADV(アドボカシー)な人々 #10


フリーライター 赤木 智弘&NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長 大西 連 「いまのきもち」vol.1

片岡氏:実はですね、赤木さんの論考を友人がFacebookでシェアしてくれて、コラムを読んだのがついこの間というか・・
 
『「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。』
 
谷本氏:えーっ、今更?そうだったのですね。
 
片岡氏:最近の話だとばかり思って読んでいて、ぱっと日付見たら2007年だった(笑)ネットでそういうことってよくあるじゃないですか。最近の話だと思って読んでたら、実は昔の話だったという。だけど今でも通じる内容だったこともあって全く違和感なかったです。書かれた時って31歳?
 
赤木氏:そうですね。今はもう38歳になりましたけど。(笑)
 
片岡氏:第一次安倍内閣の頃ですね。安倍さんの名前が出ていたのでつい最近の話かと。「再チャレンジって、そんなギャンブルできるか!」って、そうだよな、そうだよなって思いながら読みました。(笑)それから7年経ったわけですけど、あのコラムを書かれた31歳の頃と、38歳の現在と比べて、ご自身の心境や、あるいは社会のムードなど、何か大きく変わっているのか、あるいはあまり変わってないのか、その辺りの「近況」をざっくりと伺いたいのですが。
 
赤木氏:今の状況でいうと、社会のムードとしては一貫して貧困問題に関しては無関心だと思います。震災を経てというのがあるので、むしろ貧困問題全般に関しての社会の関心は薄れたという感じがしています。みんなの意識は被災地の人々に向かいました。一方でそうでない苦しい立場の人たちのことは、忘れ去られかけているというのが正直な今の気持ちです。
 
片岡氏:ご自身はあの頃「ニート」という立ち位置でコラムを書かれていました。7年経った今のスタンスとしては、コラムニストとして自立というか自営されているという感覚なのですか?それとも今でも「ニート的なるもの」は心に持ち続けているのですか?
 
赤木氏:自分自身では変わったということはないと思っています。まあ年とって先行きどんどん苦しくなってくる中で、一応文章書くという、世間一般の人からするとウルトラC的な生き方もあるので、まだなんとかなっていますけど、それがいつできなくなってもおかしくないし、まあ苦しいということに変わりはないです。(笑)

片岡氏:「ニート」に社会性があるとか、ないとか決め付けてしまうことは問題ですが、「ニート的なるもの」から、ある程度、社会性を帯びてきたという感じですか? 
 
赤木氏:そうですね。完全に社会から切り離されているというわけではない、という気はしています。
 
谷本氏:あの論考を書く前と後では、名前を多くの人たちに知ってもらうことになって、ご自身のポジショニングは大きく変わったと思いますが。
 
赤木氏:なんか有名税ばっかし払わされている感じはしますね。書けばみんなに文句言われるみたいな。(笑)
 
片岡氏:谷本氏:(笑)
 
谷本氏:あの論考以降、「赤木さん」というブランドができてしまって、それをあえて演じなければいけないということもあるんですか?
 
赤木氏:自分が全く意識していないところで、それをさせられるというのがありますね。最近なんか「非モテ」の象徴みたいなことを言われたりとか。
 
片岡氏:谷本氏:(笑)
 
赤木氏:俺自身は意識していないし、自分自身の問題なので他人にとってはどうでもいいことだと思うんですけど。まあ別に「非モテ」として何か主張してるわけでもないし。個人的なことまで社会的なことに思われてしまうのは、キツいことはありますね。
 
片岡氏:谷本氏:(笑)
 
片岡氏:「丸山」の記事を読んで思ったのですが、いわゆるマルクスの「資本論」の流れにある唯物論的歴史観といいますか、歴史的必然によるプロレタリア-ト革命などの研究されている方なのかと。マルクスが思い描いていた「労働者」というのは、いわゆる「正社員」ではなくて、赤木さんのような人たちのことだったのかなと、ふと感じました。
 
仮にマルクスが赤木さんのコラムを読んだら、「こっち、こっち」と言うのではないかと思うくらい時代にマッチしていたと思います。それは「正社員」よりも「派遣社員」や「ニート」の人たちのほうが社会的には「弱者」です。「正社員」は確かに「労働者」ではあるけれど同時に「既得権益者」でもある。僕はその辺の赤木さんの意図が見抜けなくて。丸山真男やマルクスの「パロディ」としてコラムを書いたのか、あるいはあくまでも自分の「私小説」といいますか、個人的な思いとして綴られたのか。

赤木氏:そんなに読み込んではないので、パロディとしてではなく、あくまで小説的なものですね。決して丸山さんの思想と合わせてどうのこうのという話ではないです。
 
片岡氏:アイコン(記号)としての「丸山」?
 
赤木氏:そういうエピソードがたまたまあってそこになぞらえただけで、丸山自身の論考とか証文的なものは意識して書いていないですね。
 
片岡氏:20代でホームレス支援活動をされている大西さんに来ていただきました。僕が最近気になったのは、高齢者のホームレスの方もいらっしゃるけど支援現場に足を運ぶと若い方も結構います。“ホームレス”の定義が「路上生活」だとすると、20代30代で「野宿」している人は必ずしも多くはないのかもしれないけど、マンガ喫茶やネットカフェ難民と言われる人も“ホームレス”に含めるならば、若者の比率がずっと上がるんじゃないですか。
 
大西氏: 2002年に「ホームレスの自立に関する特別措置法」が成立し、それに基づく「概数調査」というものがおこなわれるようになりました。駅や公園にテント張ってダンボールを敷いて寝ている、いわゆるホームレスのおじさんが全国でどのくらいいるのかを調べるものなのですが、2003年時点では25000人、それが今年になって7200人に減少し、「ホームレスの人っていなくなった」「すごく減ったね」とかと言われるようになりました。
 
ですので、それを受けて、国の施策も少し減らしちゃおうとかという話があったりするんです。とはいえ、2002年というとネットカフェや派遣労働とかが、まだ無かった時代。この調査で定義している「ホームレス=野宿」はあくまで「ホームレス状態」の一部でしかないと言われています。それに、仰るように近年、若年のホームレスが増えていまして、僕が所属している「もやい」という団体に相談に来る方の3割が20代30代の方なんです。
 
その中でもいわゆる野宿の方は3割くらいしかいなくて、ネットカフェやサウナで生活している、知人宅を転々としている、新聞配達に住み込みで働いている、お金があるときはネットカフェだけど、ない時はファーストフード店にいたり、それでもお金が無いときは野宿をするとか、日雇いの派遣労働をして日銭を稼いでなんとかやりくりしている。そういう若い人がすごく多いです。国の統計にはこうした生活形態の人たち、新しい「ホームレス状態」の人たちの定義がありません。この人たちの数は統計上出てこない。なので、単純に「ホームレス」が減っているかというと、必ずしもそうとは言えないんですよね。

2006年にNHKでワーキングプア特集が組まれました。この時に「もやい」を取材していただいて、相談に来られた方の取材をしてくださったんですが、2008年に国がネットカフェ難民の調査をやった時点では、20代と50代が多く、それ以降は調査をやってないので実態が全くわかりません。僕らも調べたいと思っているんですが、なかなかネットカフェに入れてくれなかったするので、どうしても相談ベースでの対応になってしまう。
 
年越し派遣村って覚えている方もいらっしゃると思うんですけど、2008年2009年の年末年始にいろんなNGOや民間のホームレス支援の団体が一緒に支援活動を行い、2009年2010年は東京都が行ったのですが、その期間は役所が閉まる季節なので必要な制度を使おうとしても使えない。それ以降は行政もなかなか重い腰を上げてくれません。仕方がないので、昨年の年末、自分たちでファンドレイジングして年越しのためのシェルターを用意しました。その時は60歳70歳の人もかなりいましたが、平均年齢が46歳と比較的若かった。
 
その中で大きく3つのグループに分かれるんですが、1つめはいわゆる長期の路上生活者。高齢者が多いので、腰とかちょっと体調が悪い方たち。少し軽度な知的障がいがある方も中にはいます。2つめのグループは40代50代の方。この方たちはアルコールの依存症や、精神的な病気、うつ病や統合失調症などの症状があってホームレス支援の制度からはこぼれてしまっていたりします。3つめのグループが近年増加している若年層です。
 
この中で取材にも応じてくれた男性がいます。派遣労働していて月収18万円くらいあるんです。ちょうど赤木さんと同じ年で、スーツを着てネットカフェから出勤していたんですが、いやいや月収18万円もあればなんとかなるんじゃないかと思うんですけど、税金とかいろいろ引かれていくと手取り15万くらいになると。
 
片岡氏:手取りが18万じゃないんですね

大西氏:額面なんですね。手取り15万でネットカフェとなると、1泊シャワー付きで1800円くらいしますから月に5~6万かかっちゃう。それでロッカー代とか入れていくとなかなかお金が貯められない。以前は地方にある某大手メーカーの工場で派遣労働していて、そこを雇い止めになってしまったんですね。
 
30万くらいの手持ち金を持って東京でアパートを探したんですけど、定職がないとアパートも借りられない。仕事もなかなか決まらないうちにお金が無くなってしまった。そのうち仕事は決まっても、今度はアパートの敷金や礼金が払えなかったりと。年末年始に体調崩してしまい、我々に相談に来られたんです。
 
ただ、収入が一定程度あるので、ネットカフェで生活するという不安定な状態にもかかわらず、なかなか利用できる制度がない。今の仕事に関しても、やっとその会社で働くことになり、せっかく見つけた仕事なので辞めたくないと仰るんです。でも半年毎の契約なので、契約が切れるとまた結び直すという、なんか怪しい働き方をしてるんです。この年齢での再就職は大変だし、せっかく就いた仕事だからと。今は支援団体のシェルターから出勤してお金を貯めているんですが、そういう方って行政側の定めるどのような定義にもあてはまらないんです。
 
18万円の収入があれば、生活保護より多いし、就労しているので求職者支援制度も使えない。しかも平日休めないので役所に相談に行けない。現状の行政側の定義ではフォローしきれないくらい、働き方や住まいのあり方が多様化しています。そういう方がいろいろなところに散在しているんじゃないかなと感じています。
 
時代と共に社会状況が変わり、働き方が変わってきました。いろいろなものが細分化されてきているので、そういう人たちがこれまでよりも見え難くなっています。それこそ何人いるんだろう、どう定義したらいいだろうというのが分かっていないんです。月収が18万もあるってことは必ずしも「貧困」ではないんです。非常に「不安定」な状態の人が増えているというか。
 
片岡氏:そうなんですよね。「貧困」ではない。むしろ「生きづらさ」といいますか。
 
大西氏:だから僕らもどう打ち出したらいいのかすごく悩んでいます。
 
片岡氏:その方は地方から出てきている方ですか?
 
大西氏:地方から出てきて大学も行ってたんですね。でも家族関係があまり良くなくて、新聞配達をしながら学費を出してもらう新聞奨学生をしていたそうです。大学を中退して一旦正社員で働いていたんですが、会社の業績が上がらないということで仕事がなくなってしまった。その後は派遣を転々としている生活をしたそうです。

片岡氏:昔の“金の卵”みたいに、地方の学校を出て、東京に「夢サ抱えて出てきた」というわけではない。どっちかというと仕事が無いから地方を追われて出てきたということでしょうか。
 
大西氏:「もやい」では年間約3000人の方から相談を受けていて、データ分析もしてるんですが、家族という切り口で見ると、男性と女性を比較した時、女性のほうが比較的経済的に困窮状態に無いように見えるんです。所持金とか住まいの状況で困窮していないように見える。でもそれは世帯の所得で見るからなんです。
 
なんで我々のところに来ているかというと、そこから出たい、そこには居られない、DVや虐待といったいろんな事情や家族との関係に困難を抱えている。あと例えば1000万円の所得で4人家族がいたとして、世帯で見れば豊かですけど、経済的DVといって妻がほとんどお金もらってないという場合、その妻は「貧困」なんです。
 
そういう家庭内の再分配の問題というのは全く定義できていません。個人で見るとすごい貧窮状態なのに、家族から出ないと「貧困」にさえ分類されない。でも実際は間違いなく「貧困」なんです。こういう見え難い新しい「貧困」の状況はすごく広まっています。
 
谷本氏:もともとあったけれど顕在化していなかっただけなのか、あるいは増えてきているのか、どっちなんですか?
 
大西氏:暴力の問題とか家族の問題というのは、もともとあったものが明らかになってきたものもあります。単純に核家族であるとか正社員も含めて低所得化しているので、扶養能力が弱くなっていることもあります。
 
谷本氏:安定的でない雇用による経済的な要因とか、いろんな複合要因があると。
 
大西氏:個々の家庭の事情はあると思います。いろいろな要素が絡まっています。まず経済的な貧困、経済的な状況が回復すると、あらゆることが改善されます。まずご飯が食べられる。安心して眠れる。これを買いたいあれをこうしたいという希望が湧いてくる。そして次の生活に繋がっていく。
 
ところが、先が見えなくて、この仕事いつまでやれるのかわからないとか、仕事が見つからなくて「お宅のお子さん何やってるの?」と近所から言われるとか、経済的な状況が安定しないとどんどん悪い方向に向かってしまい生きづらくなってしまいます。まさに赤木さんが書いてる「希望がない」という社会ですね。
 
谷本氏:リベンジがすごくしづらい社会ですからね。

 



 



 


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