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■ 東京ウーマンインタビュー


ヨガという軸、その延長にある演じるということ Vol.1

ヨガという軸、その延長にある演じるということ

6月17日(土)に公開される映画「心に吹く風」で16年ぶりに女優に復活した真田麻垂美さんに、映画のこと、家族やアメリカでの生活とヨガ、これからのお仕事についてお話を伺いました。

「心に吹く風」
日本で韓流ブームの火付け役となった「冬のソナタ」をはじめ、多くのテレビドラマを手掛けてきたユン・ソクホ監督が初めて挑んだ長編映画。ビデオアーティストのリョウスケが撮影のために訪れ、車が故障し電話を借りるために立ち寄った家で、高校時代の恋人、春香と再会することから物語が始まる。北海道・富良野の雄大な風景が、奇跡のような数日間を美しく儚く彩る。
「偶然」が生んだ16年ぶりの映画出演
片岡:16年ぶりの映画出演ですが、きっかけはなんでしたか。

真田:この映画はリョウスケと春香が出会う「偶然」から始まります。私も今回「偶然」から始まり、「偶然」が重なってこの映画に出演することになりました。

以前お世話になっていた方との食事会に、今回のプロデューサーである深田さんもいらしていて、そこで、「今度冬のソナタの監督が日本で映画を撮るんだ」という話から、ワークショップオーディションに誘われたことがきっかけでした。

私は16年も現場から離れているので無理だと思うとお断りしたんですが、「主人公もちょうど真田さんと同じくらいの年齢だし、気軽に参加してみませんか?」と言われたんです。

でもその時は、深田さんは、私が以前こういう仕事をしていたことを知っていて、気を使って誘ってくれたんだな、と思ったので「わかりました」と笑顔で答えたんです。

そうしたら、二か月後のワークショップ前日に、「真田さんエントリーまだしていないんですけど、プロフィール送ってもらえますか?」って連絡をいただいて(笑)「あれ?本気だったんだ」とわかってそこから家族会議をしました(笑)

その時に主人が「前向きに楽しんできたら、こっちは大丈夫だから。きっと全てにおいてプラスになるよ。」と後押ししてくれたので、エントリーすることにしました。

片岡:ワークショップはどんな様子でしたか。

真田:シナリオの一部、リョウスケと春香のシーンを色々な組み合わせで演じました。それぞれ20分位話し合ってから演じていきました。

片岡:最初に本をもらった時の印象というか、感想はいかがでしたか?

真田:全部を読ませていただいたのはワークショップ3日目です。1日目、2日目と、少しずつ人数が絞られていったのですが、最終日の3日目には男女各3人まで絞られていました。そこで初めて1冊のシナリオを渡され、それを1時間で読んでと言われました。

読み始めたらその世界に一気に入ってしまって・・・映像が全部目に浮かぶようなシナリオで、気が付いたら泣いている自分がいました。涙が止まらなくて、ハッと周りを見回したらみなさんも同じように泣いていて。

「それでは演技をやってください」と言われた時も、心がぎゅっと掴まれたままで、そこから3日くらい抜け出せませんでした。それぐらいすてきなストーリーだったんです。
春香の生活スタイルをイメージして10キロの増量
片岡:役作りのために10キロ太ったとお聞きしましたが本当ですか。

真田:演じることから離れて16年、結婚して出産もし、ある意味春香と同じように、自分よりも大切な存在を中心に過ごしてきたように思います。

ヨガのインストラクターもしていたので、生徒さんのために、どういうシークエンスを考えるかとか、この人の痛みを少しでも開放してあげたいなとか、そういう思いからのクラスをずっとしていたので、自分自身がどうなのかということは後回しになっていた部分があったのかな、と思います。そこからこの映画に出演することになり、気づいたんです。

物語は、普通の主婦をしていた春香の前に偶然リョウスケが現れて、「あなたはどうしたいの?」と言う。そこで、ふと我に返る、というところから始まります。そこはその時の私と全く一緒だと思ったんです。

なので、春香という女性がリョウスケと離れてから何を大切にして生きてきたのかを考えました。仕事もしていたと思いますが、その糧は何だったのか、きっと当たり前のことを当たり前にひとつづつ丁寧にやってきた女性なんじゃないかと思ったんです。

そのひとつとして、三食きちんと作ってしっかり食べる。そこを基準に、役作りをスタートしました。撮影までの半年間、家族にそうやって食事を用意し、自分もいただいていたら、しっかり10キロ増えました(笑)。それと同時に娘もややふくよかになりました(笑)。

片岡:面白いですね。役作りというより生活を変えたらそうなったんですね。

真田:そうなんです。私はもう独り身ではないので完全に役に入るためには、生活スタイルから変えないと準備が追いつかないと思ったんです。食生活が変わり外見も変わっていくことで感覚も変わっていきました。

そういうことを積み重ねていく中で、監督から春香の生い立ちを聞き、兄弟はいたのか、好きな色は何色か、彼女がどういうものに興味を持っていたのか、そういうもの全部思って日常を過ごしました。

そうすると自然と喋り方も変わっていきましたし、色々なことに対する感じ方も変わってきて。娘も私と感覚が似ているので、私が変わると共に一緒に変わっていく(笑)。

片岡:春香も大事にしているんですもんね、娘さんのこと。そこがポイントですね。

真田:そうですね。共通点はたくさんありました。
ユン監督の作品の一部になれたことが光栄
片岡:ユン監督とお仕事をするのは初めてですか。

真田:初めてですが、「冬のソナタ」をはじめ監督のドラマは全部見ていました。特に「夏の香り」が好きで、今回、監督の作品の一部になれたことは光栄で、ずっとわくわくしていました。

片岡:具体的に、どんなアドバイスをもらいましたか。

真田:「女優さんは映画出演となれば美しく映りたいときれいになろう、痩せようと思うかもしれないが、春香は痩せないでほしい。むしろ今より太ってくれてもいい」と言われました。

先ほどお話したことにも繋がりますが、じゃあちょっと太ろうと。太ることに関しては何の抵抗もなく、映画の中で自分がどういう映り方をするのかは重要ではないので、むしろ「春香に近づけるなら」と、すんなり受け入れられました。それと、監督からは、私のスローテンポな喋り方もちょうどいいと言われました(笑)。

片岡:そのまんまで、違和感がないですね。

真田:そうみたいです(笑)普段の生活だとちょっとテンポが遅いのかもしれないんですけど、監督の思う春香にとっては必要な要素だったようで、特にこうして欲しい、ああして欲しいということはあまり言われませんでした。
映画を通じて家族のような絆をはぐくむ
片岡:今の真田さんと「月とキャベツ」の真田さんて私の中では繋がります。春香は春香になっている。今日は春香が来るかと思ったら、真田さんが来た(笑)。
ブランクを感じさせないですね。

真田:ありがとうございます。すごくうれしいです。

片岡:眞島さんとの顔合わせはワークショップの時ですか。

真田:ワークショップが12月。年が明けてすぐの1月、ちょうどこの(インタビューを受けている)部屋で初めてお会いしました。眞島さんには、「月キャベ(『月とキャベツ(1996年)』見ましたよ」と言われました。

片岡:月キャベ・・・(笑)。

真田:そうなんです(笑)。私も「テレビでよく拝見しています」と言って、すぐうちとけました。眞島さんってすごく明るい方なんです。

富良野での撮影の間は、毎日昼も夜も、監督、眞島さん、通訳のキム・チナさんと私の4人でご飯を食べていました。それが3週間続いたのでもう家族同然(笑)。

片岡:食事すると仲良くなりますもんね。

ピアノのシーンが「月とキャベツ」とちょっと重なりました。似てるっていう言い方は悪いのかもしれないんですけど…。

真田:試写会に、「月とキャベツ」の篠原監督はじめスタッフの皆さんが見に来てくださったんですが、「あのシーンはさ…ちょっと月キャベに似てるよね」、「そうそう、あそこはちょっと意識してるよね」なんて言って、「ちょっと話足りないから、このままご飯行って話そうよ」ってなりました(笑)。

その時に「真田麻垂美という女優が復帰するということが僕たちは何よりもうれしい」、「邦画界に帰ってきてくれることが嬉しいんだ」。と言ってくれて本当にうれしかったです。

そして「真田麻垂美の復帰作がユン・ソクホ監督のこの映画で良かったね」って言ってくれて。皆さんが映画を見ている時、私も後ろの席に座っていたので反応が気になってしまったのですが、その言葉を聞いてほっとしました。本当にうれしかったです。
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