自分の人生の見つけ方~アルケミスト⑩~ |
秋晴れの嬉しい10月。このコロナ禍の中でも、その陰鬱さを吹き飛ばすような、元気な子供たちの声が聞こえます。
運動会の季節ですね。
気が付けば、来年まで、もう3ヶ月を切りました。
今年の振り返りと、来年への準備を、そろそろ始めるころではないでしょうか。
『アルケミスト』サンチャゴ少年の旅も、いよいよ終わりに近づいています。
もう、彼は本物の錬金術師に出会い、さらに運命の相手―ファティマ―にも出会います。
しかし、サンチャゴはファティマをオアシスに残し、旅を続けなければなりません。
それは、彼が夢を追求するために必要なことだと、彼自身が決めたことだからです。
錬金術師を師として、砂漠へ戻るサンチャゴ。
その砂漠の旅の先にしか、サンチャゴが望む夢はないのだと信じて、ひたすらに旅ゆく決意をしたのでした。
「おめでとう」
錬金術師はサンチャゴに対してこう言います。
それは、サンチャゴが、運命を追求して生きることを選んだからです。
もう、旅のおわりも近いのです。
ところが、錬金術師はサンチャゴに、何一つ教えを与えてはくれません。
ただひたすら、ふたりでラクダに乗り、そして旅を続けます。
どうして何も教えてくれないのかと尋ねるサンチャゴに、錬金術師はこう答えるのです。
「学ぶ方法は一つしかない。それは行動を通してだ」
その言葉に、さらに頭を抱えるサンチャゴ。錬金術師にさまざまな質問を投げかけます。
しかし、錬金術師が答えたのは、自分の心に耳を傾けなさいということでした。
なぜ、自分の心に耳を傾けなければならないのか?
どうして、他の人は教えてくれないのか?
サンチャゴはまだ腑に落ちていないようです。
錬金術師は続けます。
「おまえの心があるところが、おまえが宝物を見つける場所だからだ」
みなさんは、心の声を素直に聞いていますか?
自分の心よりも、大切な答えが、誰かの口から出てくると思っていますか?
きっと、そんなことはありませんよね。
でも、だれしも不安なのです。
おそらく、こんな感じではないでしょうか。
自分の心が成熟していないのに、本当にその答えは自分の心の中にあるのか?と。
それは、サンチャゴも同じです。自分の心はいつも揺れ動いているのに、その心に耳を傾けても大丈夫なのか?
錬金術師に不安を語ります。
錬金術師は、なんと答えたのでしょう。
「おやおや、それは良いことではないか。おまえの心が生きている証拠だ。心が言わねばならないことを、聞き続けなさい」
あなたの心も、私の心も、大きく揺れ動くときがあるでしょう。
不安にさいなまれるときもあれば、希望を抱き、生命力に満ちているときもあるでしょう。
嬉しくて前途洋々な未来しか見えない時も、思わぬ躓きに、絶望感を感じることもあるでしょう。
それでも、心の声を聴き続けなさい、と錬金術師は言うのです。
心に起伏があり、揺れ動くのはあたりまえであって、落ち込むことではない。
むしろ、「心が生きている証拠」だと、暖かく語り掛けるのです。
文豪ゲーテもこんな言葉を残しています。
「もはや愛しもせねば、迷いもしないものは、埋葬されてしまうがいい」
つまり、それが、人間というものなのだと、感情の起伏を受け止めているのです。
でも、最後には、希望や夢をもって、その起伏を受け止めてあげてください。
そのためにも、自分の本当の心の声を閉ざしてはいけません。
日本人は、我慢することが得意ですし、それが美徳だと言われて育ってきました。
たしかに、他者に損害を与えるようなことは我慢しなければなりません。
でも、必要以上に、他者を気にして、自分の心を封印する必要はありません。
自分の心の声を聴く。
我慢強い日本人には、ちょっと難しいことかもしれませんね。
でも、だからこそ。
みなさんの夢を、心の声を、封印しないで聞いてあげましょう。
他の誰が聞いてくれなくても、
あなたがあなたの心の一番の味方に、一番の聞き手になってあげましょう。
冒頭にも書きましたが、10月はそろそろ来年という未来に向かって、
じっくり見つめなおし始める時期に最適です。
秋の夜長、たまには本を閉じ、友との語らいをお休みし、
自分自身の心の声に、じっくりと傾けるのも悪くありません。
心の声が、あなたの素敵な旅の続きを教えてくれるでしょう!
Schoenes Leben & schoene Reise noch!