新しいあなたへ~新シリーズ「ココロの処方箋」~ヘッセの言葉⑰~ |
8月もちょうど折り返しの時期に来ました。
そして、このころ、8月15日は終戦記念日ですね。
「終戦記念日」という言い方に賛否はありますが、ここでは敢えて触れないことにしましょう。
とにかくも、日本が戦争という悲しい歴史のただなかにいた数年に終止符を打った、その日であることに間違いありません。
みなさん、夏休みはどちらかに行かれましたか?
わが家は、去年に引き続き、今年も1週間ほど沖縄に行ってきました。
1週間というと長い気もしますが、幼子を二人連れているので、行きと帰りは一日がかり。
正味5日間の旅となりました。
長男の物わかりが少し良くなってきた去年から、夏休みは「戦争を考える季節」ととらえることにしています。
昨年の沖縄旅行では「陸軍司令部」のあった地下壕に見学に行きました。
戦争の悲惨さを親の口からではなく、子供自身の心で感じてほしいと思っています。
地下壕では、ちょうど若い自衛隊の方々も集団で見学に来ていました。
すっと背筋の伸びた立ち姿はとても清々しく、街では見かけない爽やかな集団に出会ったことが、長男にも少し、印象に残ったようです。
小学一年生になった今年の夏は、「ひめゆりの塔」を参拝してきました。
3歳になったばかりの次男はわけのわからない様子でしたが、
家族四人分の花束を買い、戦争の犠牲になった少女や教師たちに、花をたむけてきました。
記念館では、戦争の写真、どうしてひめゆり隊が戦地へ行き、
どうしてたくさんの死者を出してしまったのか。
その経緯と、可愛らしい少女たちの在りし日の写真が展示され
悲しさを倍増させるのでした。
中へ進むと、生存者の証言ビデオが放映され、見学者のみなさんも身じろぎせずに見入っていました。
長男も、うっすらと涙を浮かべながら、しっかりと聞き入っていました。
長男の素朴な疑問です。
「なんで戦争なんて馬鹿なことしたの」
それには複雑な歴史や政治が絡まり、一言で正しい答えを導くことは難しいでしょう。戦争も、多くの市民にとっては不幸でも、ある人にとっては、正義だったのでしょうから。
そんな難しい問題に、ヘッセはこう答えました。
世界を満たしているはなはだしい差別、ヘイト、排斥、価値の上下の決めつけ、中毒、放蕩、困窮、傲慢、ひとたびも沈められない苦悩、絶えざる諍い、血みどろの戦争、あらゆる恐怖……。
これらのものはどれもこれもみな、われわれ人間の心から出てきたものである。
『クラインとヴァーグナー』
人の心の生み出した最悪の状況、それが戦争です。
帰宅後、夏休みの宿題の「えにっき」に、長男はこう綴りました。
「ぼくは、なつやすみにひめゆりのとうをみにいきました。
そこで、せんそうのことをしりました。
じぶんがしあわせでめぐまれていることがよくわかりました。
これからみんなとなかよくしていきたいとおもいました。
せんそうをみて、とてもいやだとおもいました。」
自分の心から出たこのまっすぐな言葉を、大人になっても大切に胸に抱き続けてほしい。
きっとヘッセの言葉の意味も、君にはわかるでしょう。
すべての人が、一人でも多くの人が幸せになれるように、小学一年生のできることは、愛をもって人と接し、「みんなとなかよくすること」でしょう。
大切な初めの一歩を学んだ一年生。
それを見た大人の私も、初心に帰れた夏でした。
みなさまも、今置かれている幸せを、先人たちが命がけで残してくれたこの世界を、どうか大切に過ごされますように。
ちょうどお盆の時期でもあります。
空を見上げて、先祖を思い、幸せに感謝する。
そんな夏になりますように。
Schoenen Tag noch!
Text by Akiko Sekiguchi