新しいあなたへ~新シリーズ「ココロの処方箋」~ヘッセの言葉⑦~ |
金木犀の薫りが、街を包んでいます。
近くでは、子供たちの運動会の声が聞こえます。秋の遠足に軽やかに足を運ぶ、子供たちの歌声が聞こえます。
街では秋らしいおしゃれに身を包んだ人たちが、楽し気に行き交う姿が見受けられます。
夏の厳しさも、新学期の張り詰めた空気も、すこし和らぎ始めるころですね。
秋と言えば、読者のみなさんは何を思い浮かべるでしょうか。食欲の秋? 芸術の秋? それとも読書の秋? 秋の夜長…も素敵ですね。
私事ですが、筆者は本業の執筆業のほかに、大好きなことがあります。それが「インテリア」。
子供のころから、少女雑誌に載っている「簡単な模様替え」なんていう記事を見つけては、スクラップブックにして、大切にとっておいたものです。いても立ってもいられなくて、白と赤の女の子らしい部屋から、一日でモノトーンの部屋にペンキ塗りしたこともあります。あれはたしか、中学生のころでした。
読書も大好きでした。親友が外国人ということもあって、外国に強いあこがれを抱き、いつか海外にも行ってみたかった。少女のころの私は、やりたいことは、山ほどあったのです。
そして今。人はそう変われるものではないのかもしれません。今でもやりたいことが山ほどあります。これまでやりたかったことは、だいたい経験することができました。
海外留学、海外勤務も叶えたし、バリバリ働いてみるという体験もできたし、文筆家になりました。
結婚もして、子供が増えても、私の好奇心は、萎えるどころか、増すばかりです。
インテリアに関連する、仕事にできる資格を取りましたが、さらに上位資格や興味深い資格があると知り、今年はあと4つ、講習や試験が待っています。
わがまま? そうかもしれません。でも、人はなりたいようになっているし、生きたいように生きるのだと思うのです。
たとえば、2時間、何もしないのが幸せだという人もいるでしょう。
2時間あったら、何か勉強ができるかも、何か作れるかも、と思う人もいるでしょう。
どう思うかが、どう行動するかにつながり、その積み重ねが自分の現実を作ります。つまり、自分の未来を創っているのは、自分の過去の行いなのです。
ヘッセの言葉をお借りしましょう。
今、この目に見えているもの、今のこの現実、それは自分が心の中に持っているものとまったく同じだ。
すでに心の中に持っていない現実というものは、存在しない。
(「デーミアン」)
デーミアンとは、人の名前です。
この物語の主人公は、ジンクレールという少年です。幼少期から成長するまでの物語となっています。舞台は第一次世界大戦の時代。当時スイスのベルン(ドイツ語圏)にいたヘッセが、別の名前を使って発表しました(後日、ヘッセだと言うことがわかってしまいます)
主人公ジンクレールは、先生の授業に疑問を持ちつつ、神学校に通っています。
そこへ、いつもジンクレールを悩ませる学友がいました。
ある日、ジンクレールの前に、不思議な雰囲気を持った少年デーミアンが同級生として現れます。デーミアンはなぜか悪友を蹴散らしてくれたり、先生が教えるキリスト教的解釈に異論を唱え、別の解釈で様々なモノの見方をし、それをジンクレールに教えます。
やがてデーミアンとは離れ離れになりますが、戦争に従軍したジンクレールの前に、ジンクレールのお母さんが現れ…。
ジンクレールは、「善と悪」「勝組と負け組」のような二極化された考え方に疑問を持ち、さまざまなモノの見方、自分自身でモノを見ることの大切さを考えるようになる青年に成長していきます。
デーミアンが発する言葉には、深いものがあります。そこには「本当に信頼するべきは自分の心」というヘッセの思いが流れています。
主人公ジンクレールの生い立ちとして描かれていますが、ヘッセ自身の生い立ちにリンクしています。ジンクレールは、ヘッセそのものなのです。
今の現実をよくするのも悪くするのも、自分次第。
あなたの心の中のものが映し出されたもの。それが目の前の現実だと、ヘッセは伝えます。
あなたの心に、今何が見えますか?
心と現実は、リンクしています。今の現実を変えたかったら、心を変えることです。モノの見方を変えることです。
過ごしやすい季節の秋は、ゆっくり自分に向き合うために、最適な季節かもしれません。
心と向き合って、「素敵なあなた」を現実のものにしてみませんか?