ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン |
『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』 Bridesmaids (2011)
監督 ポール・フェイグ
脚本 クリステン・ウィグ、アニー・マモロー
出演 クリステン・ウィグ、マーヤ・ルドルフ、ローズ・バーン、メリッサ・マッカーシー、ジル・クレイバーグ、ジョン・ハム、クリス・オダウド
「女同士って大変」っていう作品紹介どうなった? と、各方面からほとんど聞かれていませんが、やっとご紹介します。抱腹絶倒のコメディですが、でもご注意ください!この映画には途中、とんでもないヒドいシーンがあります。間違っても、ゴハンを食べた直後や食事中には見ないほうがいいです。私も吐きそうになりました(笑)。
シカゴから車で約2時間のミルウォーキー。アラフォーのアニー(クリステン・ウィグ)は、ケーキ店の経営に失敗、恋人も去り、セフレの最低男(ドラマ『マッドメン』の主役ジョン・ハム)と虚しいセックスをする日々。アニーの支えは、幼なじみのリリアン(マーヤ・ルドルフ)との友情だけだ。「男って、なんでアレを顔に押しつけるのが好きなの? キモくて直視できない」など、女同士で言いたい放題(全編に渡って下ネタ満載)。
親友リリアンが結婚することになり、アニーは「ブライズメイド」の「メイド・オブ・オナー」に指名される。「ブライズメイド」とは、欧米の結婚式には欠かせない新婦の介添人で、中でも「メイド・オブ・オナー」は最も新婦と親しい人が任される「式の仕切り役」。準備に精を出すアニーだが、ブライズメイドのひとり、金持ちの後妻ヘレン(ローズ・バーン)と、ことごとく対立することに…。アニーが選んだ安いレストランでの食事会は、食中毒を引き起こし大パニックに(→これがとんでもないヒドいシーンです)。
アニーの考えたプランは、ヘレンの金満攻撃の前にあえなく撃破、リリアンとの友情にもヒビが入り、人生どん底となってしまう…。
それにしても独身最後のパーティやらブライダルシャワー(新婦にプレゼントをあげる会で、結婚祝いとは別らしい!)やら、アメリカの結婚式って大変! 劇中で「メイド・オブ・オナーをやったらストレスで髪が抜けた」と語られるのも当然というか。ましてや、ヘレンのような女が仕切り出したら…。
今年話題の本『女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態』(瀧波ユカリ・犬山紙子著、筑摩書房)のまんま、アニーとヘレンは対抗意識丸出しでマウンティング(動物社会での順序確認行為)し合う。「女同士ってやだな~」と、つくづく思わされる。
しかし「やだな~」で終わらないのが映画。脚本・主演のクリステン・ウィグは人気コメディアンで、彼女が出てくるところが一番笑えた『宇宙人ポール』(2011)や、コメディではない『LIFE!』(2013)など、近年多数の映画に出演している。そして共演女性たちのほとんどが、コメディアン仲間だ。下品なギャグはみな彼女たちのアドリブ。映画評論家の町山智浩氏によると、脚本のウィグとアニー・マモロー(彼女もコメディ女優)の真の目的は、「女はギャグや下ネタがわからない」「女の友情はありえない」という偏見をなくすことだった。2人はなんと、米国アカデミー賞脚本賞にノミネートされる。この作品は、女性コメディアンの友情が結実したものなのだ。
ところでもう一人、アカデミー賞にノミネートされた人が(助演女優賞)。ブライズメイドのひとりで、新婦の義妹役のメリッサ・マッカーシー。巨体のコメディ女優だが、まさかこの下ネタ満載の作品で、彼女の芝居に泣かされることになるとは。
アニーの母親役は、『結婚しない女』(1978)で男に依存せず自立する女性を体現し、一世を風靡したジル・クレイバーグ。白血病で亡くなり本作が遺作となった。70年代に続々と作られた女性映画のヒロインは、下ネタギャグを嬉々として演じたようだ。彼女の最後の姿も、しっかりと目に焼きつけてほしい。