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関口 暁子 文筆家 doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2017-02-15
あなたを強くするローマ人の言葉⑭~塩野七生『ローマ人の物語』より~

節分が過ぎ、早くも立春を迎えました。まだまだ寒さの残る外の空気ですが、日が長くなったのを実感するのは、やはり立春の時期ですね。

暦というのは、本当に素晴らしい。そう思う今日この頃です。

二月になると、急に周囲があわただしくなります。卒園、卒業、異動。4月を区切りとする習慣の日本では、一年の終わりというよりも、この4月から3月までの「期」の区切りを重視することが多くなります。

二月は整理の時期でもあります。高校受験、大学受験。じつにたくさんの人たちが、来るべき「春」に向けて準備をし、その成果を問われる季節なのです。

さて、そんな二月のローマ人の言葉は、古代ローマが終わりを告げる終焉期。皇帝の座に就いた若きユリアヌス(古き良きローマを復活すべく奮闘のさなか、戦死)と、「ローマの古き誇りの最後の炎」と称された官僚シンマクスの言葉をご紹介します。

 

できないと思っていたことができ、それが人々を幸せにすることに繋がるとわかったとき、その人は、これこそが自分にとっての使命と思うのではないか。

 

古代ローマの崩壊の原因の一つは、多くを受け入れ共存してきた多神教国家に、キリスト教という一神教が浸透してきたことにあります。もちろんキリスト教そのものが悪いわけではありません。当時のキリスト教を取り巻く人々の中に、皇帝を懐に治めることによって自らの地位を固めようとした人がいたことが問題だったのでしょう。

その中に、宦官たちがいました。中国での宦官の存在は有名ですが、当時のローマにも、男性器を切り取り、高級官僚として皇帝に使える宦官の存在があったことは筆者も知りませんでした。

彼らの関心は、自らの実質的な地位を固め、高めることです。対外的には皇帝がいたり、宦官ということで表立ってトップに立てないわけですから、皇帝を傀儡(かいらい・操り人形のこと)にしてしまおうというのが彼らのねらいでした。

そんな中、身内を含めて粛清のために周囲の表立った人材たちを殺害した皇帝がいました。その皇帝の粛清からも、唯一逃れた身内であるのがユリアヌス。哲学を学び、皇帝の器がないのではという疑問視を、周囲だけでなく自身も抱いていた彼ですが、次第に実力をつけ、自分の使命を見つけてゆきます。

その過程を作家、塩野七生さんが語った言葉が上の言葉です。

若者の持つ勢い、そして成し遂げたときの高揚感。それが自己満足ではなく、ローマ市民のためになっている。それが実感できた時の喜びは想像するに難くありません。

人は、結局社会のために生きることでしか、真の使命感は得られないのではないかと思うのです。自分のしていることで社会を変えたい。未来の子供たちのために良い社会を残したい。それが自分の仕事の分野で叶えられれば、それはまさに天職といっていいでしょう。

進路、転職、これから先の人生を考えるにあたって、使命を見つけることは簡単ではありません。けれどもそれを掴んだ人はきちんとその使命を社会に還元できるでしょう。

いま、人生という道の途中で、迷い始めているのがあなただとしたら、どうかまずは身近な人からでもいい、誰かを幸せにしようと努力することです。その幸せの連鎖は、いつしか社会へと繋がっていきます。それが、あなただけが持てる使命感です。

まだまだ寒い日は続きます。最後の冬将軍も、これからやってくるでしょう。けれどもその冬を越えたなら、春はもうすぐそこです。誰かの幸せのために、何かをしたい。そう思えたあなたなら、まもなくあなたにしかできない存在意義を見つけることができるでしょう。

 

理性と言えども限界がある。それをおぎなうのに、自分たちの歴史を振り返ること以上に、有効な方法はあるだろうか。

 

これは、「ローマの古き誇りの最後の炎」シンマクスの言葉です。皇帝ユリアヌス亡きあと、皇帝の座に就いた皇帝テオドシウスでしたが、彼はかつての古き良きローマの復活を良しとせず、ローマ崩壊への道をたどっていきます。

そんな皇帝テオドシウスに対してあてた、シンマクスからの手紙です。シンマクスは、もう一度「パクス・ロマーナ」を実現した古代ローマ帝国の復活を夢見ていましたが、理解あるユリアヌスを継いだテオドシウスにそれは通用しませんでした。最後は絶望の中で隠居生活を送ります。

いま、筆者は本を執筆しています。創業90年を迎える企業に関する本ですが、そのために「老舗」(一般に、100年以上続いた企業を指す)の強さについて、さまざまな本から学びを得ています。

「伝統は、革新の連続である」

老舗企業の当主の多くがそう語りますが、これには、伝統を重んじるというベース、先祖に感謝をし、敬意を払うという前提があってこそ、成り立つ言葉です。いくら革新の連続と言っても、歴史を軽んじ、なぜここまで続いてきたのか、という点について考えなければ、軽薄な経営の転換あるいは、寄り道にすぎません。たとえば、これまでの基幹事業、基幹技術を無視して、投資を行ったり、「別の畑」で資産を増やそうと考える企業は、その多くが結局は倒産の憂き目に遭っています。

革新というのは、あくまでも伝統や先人の知恵をベースに現代の人々に合うように変えるというものでなくてはいけません。世界でもっとも老舗企業の多いと言われている日本の底力は、ここにあるのです。

もしも、ローマ崩壊の前に、心あるシンマクスや皇帝ユリアヌスの言葉を真摯に受け止め、引き継ぐ者がいたら・・・。歴史にもしもは禁物ですが、そう考えずにはいられません。

一方で、長い歴史を持つ日本が、こうしていまも存続して、世界で独自の存在感を現わしているのは、国民の多くは、歴史を大切に思う人たちで占められているからだと思うのです。

過去にしがみつくのはいけません。しかし、なぜ今自分が生かされているのか。真摯な気持ちで自国の歴史に向き合い、家族の歴史に向き合い、自身の人生の歴史に向き合い、感謝の気持ちを持ち続ければ、あなたの未来も輝きだすと思うのです。

もうすぐ春です。頑なになっていた心も解きほどいて、自分を見つめ周囲に感謝する気持ちを改めて感じてほしいと思います。

あなたの心の中から、春はやってきます。


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