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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo 大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに… |
自分の人生の見つけ方~アルケミスト⑥~ |
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新型コロナウイルスが心配される中、外出自粛は解除され、各地の学校では登校が再開されました。 社会人のみなさんも、これまでの働き方の変革を余儀なくされている方も多いと思います。 この未曽有の事態に、世界中の人々が向き合っています。
『アルケミスト』の主人公、サンチャゴ少年も、自分の未来を見つける旅を続けていく中、幾多の出会いがありました。 そのいくつかは、素晴らしい賢者との出会いですが、それと同時に、困難にも遭遇します。
あるとき、サンチャゴは、彼と同じスペイン語を話す少年と、異国の地で出会いました。 旅先のかっこうのガイドが見つかったと喜ぶサンチャゴ。 少年に「お金を持っているか」と尋ねられ、持っているお金を見せたあと、案内してくれた市場で、異国の少年は忽然と姿を消します。
はっと気づいたサンチャゴでしたが、時すでに遅し。 サンチャゴが見せたお金の入った袋ごと、少年はいなくなってしまったのでした。
見知らぬ土地で、無一文になってしまったサンチャゴ。
自分の愚かさに落胆し、自らの置かれた境遇に嘆いていると、異国の少年に盗まれていないものがあることに気が付きます。 旅の初めに、不思議な老人からもらった「2つの石」 「はい」と「いいえ」を答えてくれる、前兆を知らせる、あの石でした。
その石を見て、老人との会話を思い出したサンチャゴ。 自分の人生は自分の意志で決めるんだという思いを再び抱いたサンチャゴに、また活力がみなぎってきました。
「この見知らぬ地で不遇にも、全財産を盗まれた被害者」であると思っていた彼は、「旅を続ける冒険家」であることを思い出したのです。 サンチャゴはつぶやきます。
「これは見知らぬ土地じゃあない。新しい土地なんだ」
いま、これまでに経験のしたことのないパンデミックの状況下は、「未曽有の悲劇」かもしれません。 しかし、ウイルスと人間との戦いのさなかにあるのか、あるいはポストコロナの「共存」が可能になるのか、とにかくも今私たちに置かれている状況も、「見知らぬ状況」ではなく、「新しい環境」「新しい生き方」へのスタートの合図なのかもしれない。 サンチャゴの旅を通して、そんな思いも抱きます。
自ら冒険家として奮い立たせたサンチャゴには、彼の旅の中でも印象的な「クリスタル商人」との出会いが待っていました。
彼と過ごすうちに、たくさんの人生の気づきとらくだを手にしたサンチャゴは、あるキャラバンの仲間に入ります。 そこで出会った仲間が、サンチャゴとの会話で、こんなことを話します。
「自分の必要と希望を満たす能力さえあれば、未知を恐れることはない」
彼はふるさとで、ある天変地異に遭います。大地震により川が決壊し、その村の人々は財産も地位も土地も、農作物も、すべてを失ってしまったのだそうです。 しかし、そんな「災害との出遭い」で、このような真実を見つけたのだと話したのでした。
実はサンチャゴは、少年のすりにお金を盗まれてから、自らが陥っていた「人間の弱さ」に気づいたのです。
「本当に起こっていることではなく、自分が見たいように世の中を見ていたのだ」
ということに。
だからこそ、自分が愚かな被害者だと思えば、そのように。 自分が無一文から立ち直る勇敢な冒険者であると思えばそのように、彼の取り巻く環境は変わっていくのです。 そして後者を選んだサンチャゴには、冒険者にふさわしい人やチャンスが次々と訪れるのです。 キャラバンの仲間たちとの不思議なシンパシーは、「哀れな被害者」だったら生まれなかったでしょうし、そもそもキャラバンに加わる未来もなかったことでしょう。
自分の人生は 「自分の意志で決定すると約束したんだ」 そう思い行動したサンチャゴの人生は、ドラマティックに進んでいきます。
さて、この現実の私たちは、サンチャゴの旅と、サンチャゴの様々な人や言葉との出会いをどう活かしていくことができるでしょうか。
コロナ禍という現実を、まずは客観的に受け止め、「被害者」ではなく、新しい「ウイルスと共存していかなければならないかもしれない世界」での、「挑戦者」「冒険者」として、自分ができることは何か、前を向いて立ち向かっていくことはないでしょうか。
私自身、このコロナ禍にともなう社会の変化によって、さまざまな学びがあり、新たなチャレンジをするための準備を始めています。 たとえコロナ禍でなくても、社会はつねに動いていて、過去に戻ることはできません。 コロナが終息した後の世界が、コロナ前である保証はないのですから、ポストコロナがどういう世界になっているのか、自分なりに考え、柔軟に対応し、そして変化を楽しみながら進化を続けていく必要があるでしょう。
サンチャゴが、被害者意識を捨てた瞬間に、サンチャゴを取り囲む世界は大きく好転し始めました。 それは、旅の初めに老人が言ったように「夢を実現しようとするものが本気であれば、宇宙がそれを手助けする」からなのでしょう。
いずれ来るポストコロナの「新しい世界」で、あなたはどんな生き方をしていきたいですか?
サンチャゴを見倣って、新しいあなたを見つめなおす機会ととらえ、前向きに歩みを進めていきましょう。
あなたの旅も、サンチャゴの旅も、まだまだ続きます。 素敵な旅の続きを!
Schoenes Leben & schoene Reise noch! |
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