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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2016-01-20
あなたを強くするローマ人の言葉① ~塩野七生著『ローマ人の物語』より~

読者のみなさん、遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

本コラムでは、これまでゲーテの言葉を一年、著名人の言葉を一年。大人世代の私たちに力をくれる言葉をご紹介してまいりました。

2016年はまた新たに、違う角度から素敵な言葉をご紹介してまいりたいと思います。時代は遡り、舞台は古代ローマ。現在のドイツを中心として栄えた「神聖ローマ帝国」ではなく、現在のイタリア・ローマを中心に栄え、あのカエサル(シーザー)やクレオパトラなどが活躍した時代の「古代ローマ帝国」です。

長きに渡り栄え、周囲の国々や神々と調和して生きた古代ローマ人やその周辺国の人々の生きざまを、塩野七生著『ローマ人の物語』から拝借し、私の解釈を交えながらご紹介してまいります。

単行本にして15巻という超大作を読破した方もいらっしゃると思いますが、忙しい東京ウーマン読者のみなさんにはなかなか時間的に難しいかもしれません。ぜひ、本コラムでそのエッセンスだけでも味わっていただければ幸いです。

 

敗けっぷりに良いも悪いもない。

敗北は敗北である。

重要なのは、その敗北からどのように起ちあがったか、である。(第1巻204頁)

 

最初から、厳しい言葉をご紹介しましたが、これは著者、塩野七生さんの言葉です。

紀元前の話。ローマ人はケルト族の来襲にたびたび見舞われます。この時代はどの国(部族)も年がら年中、戦をしているので特別なことというわけでもないのでしょうが、それでもローマ人が「蛮族」と呼んでいたケルト族との争いは、国を疲弊させることに変わりありません。

「ローマ人には敗北からは必ず何かを学び、それをもとに既成の概念に捕らわれないやり方によって自分自身を改良し、そのことによって再び起ちあがる性向にあった」という前置きがあるように、戦や内乱などに幾たびも見舞われながら、長期的に発展し続けるという古代ローマの底力の秘訣はここにあるようです。

 

ところ変わって、私たちの生きる現代日本の2016年は、まだ始まったばかり。古代ローマ人に倣うとすれば、2015年の棚卸をすることから始めてみてはいかがでしょうか。(優秀にも2015年のうちに棚卸が済んでいるという読者もいらっしゃることでしょうけれど!)

その棚卸結果をもとに、ぜひ自分の「至らなかったこと」に注目してみてください。

「上手く言ったこと」というのは偶然の重なりによるものが多いと感じていても、「失敗したこと」には、かならず自分自身でその原因に心当たりがあるものです。「失敗」や「敗北」に目を向けるというのは、必ずしもネガティブな行為ではありません。「負けは負け」と潔く認めることから、成功への道のりが始まるとも言えるのでしょう。

そして、何の苦労もなく成功するよりも、敗北を味わうことで、敗北の原因や敗北者の気持ちや痛みを知り、「次こそは」という熱意が生まれ、成功の味わい深さをより感じるというたくさんの「贈り物」がついてくるのです。負けを認める勇気が持てたと自分を褒めてあげても良いくらいですね。

その素晴らしい「敗北からの贈り物」を得るためには、自分の頭で考え、肌で感じ、自分自身の力で克服しなければなりません。ローマ人がそうであったように、「既成の概念に捕らわれないやり方」を模索することも忘れないようにしてください。なぜって、「マイナスをゼロ地点に戻す」ためではなく、「新しいあなたを生みだす」ための克服だからです。

その過程で、以前よりも清々しく、力強いあなたが生まれるでしょう。

普段、「ポジティブシンキング」と都合の良いことを言いながら、悪い結果には目を瞑るという悪い癖のある私も、今年はこの言葉から始めたいと思います。

 

今年もみなさんの毎日が輝かしいものになりますように!


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