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■ 未来へ繋ぐ女性の生き方


「子育て先進国」と言われるフランスの子育て事情

「子育て先進国」と言われるフランスの子育て事情

江草 由香さん
編集者・ライター
展示会プロデューサー
フランスの女性の生き方事情の第二弾は、フランス在住の編集者・ライター・展示会のプロデューサー、江草由香さんにインタビューしました。江草さんは、フランス留学後フランス人男性と結婚、現在中学生になる息子さんの子育てをしながら活躍されています。

日本でも子育てをめぐり、待機児童の問題等関心は高くなっているものの、2015年から実施される子育て支援策が、当初1兆1000億円の予算のうち7000億円しか確保できず、政府の財源不足が明らかになるなど、まだまだ不足しているというのが現状です。

2014年3月には、ベビーシッターの男性に預けられた2歳の男児が死亡するという痛ましい事件も起き、その背景から保育に関連するさまざまな問題も浮き彫りになってきています。一方では、地域など民間による助け合いの輪が広がるなど、保育の多様性は広がっているようにも思います。

フランスでは出生率が2.0と奇跡的に回復したことで話題ですが、ベビーシッター制度の充実や、高校までの授業料(公立)は無償など、教育やさまざまな子育て支援政策を国が後押ししていることが背景にあります。今回はフランスにおける「育児」と「教育」の今を取材しました。
フランス女性の就労率80%以上。子育てに優しい環境

フランスでは女性の就業率は、パートタイム就業も含めて80%と、かなり数値が高くなっています。正社員でも週3回しか働かないという働き方もありますし、仕事と子育ての両立はあたりまえになっています。

子育て中も仕事をして経済的に自立することは自分の自信にもなりますし、フランス人と結婚した日本人女性の中には専業主婦の方もおられますが、「なぜ働いていないの?」とフランスの人たちに聞かれてしまうと言います。

義妹は公務員だったのですが、子どもが病弱で、度々仕事を休まなければならず、日本人の認識だと周りに迷惑をかけるから辞めたほうが良いかなとと思うけれど、逆に「なぜ辞めるの?」と周りに止められたそうです。

結局彼女は自分の意志で辞めることを選びましたが、基本的にフランスでは、子どもを産んでも、どんな理由があっても、仕事は辞めない人がほとんどです。育児休暇も3年ありますし、無痛分娩が主流になっている理由も、仕事への復帰が楽だからだそうです。
子ども連れには親切なフランス人
フランス人は、電車や街の中でも子ども連れにはすごく優しくしてくれます。お年寄りでも、妊娠している女性には車内で席を譲ったり、ベビーカーでエレベーターを利用する時も、みんなが乗り降りを助けてくれます。子どもを連れていると親切にできる、角を立てずに譲り合える、という印象はあります。
パリの待機児童問題
パリでも保育園に入れないという待機児童問題は存在します。働くママがほとんどなので希望者も多い。どこの保育園も順番待ちの状態なので、「妊娠したらすぐに保育園を予約すること」と先輩ママたちからアドバイスされます。

それでも保育園に入れない場合「認定保育ママ」という制度があります。子ども3人まで預かってもらえるシステムで、割高ですが保育士の資格のある人たちなので安心です。経済的に余裕がある家庭では乳母を雇うこともありますが、複数の家庭で1人の保育ママをシェアするなど、いろいろ苦労はされているようです。

[補足]フランス政府の定める所定の研修を受けて認可されるベビーシッター、保育ママは25万人ほどが存在する。 その利用者には3歳未満でおよそ4万8千円、3歳以上で2万4千円の国からの補助がある。
3歳から学校。学童保育の充実
義務教育は6歳ですが、99%が3歳から学校に入学します。それも公立なのでお金はかかりません。3歳から毎日8:30から16:30まで通い、その後は学童保育で19時まで預かってくれます。

学校が休みの時も、朝7時半から19時まで預けることができるので、子どもが学校に入るとお母さんは安心して働くことができます。ちなみに学童保育は有料ですが、税金の控除の対象となっています。
フランス教育費事情/高校まで授業料無料、国立大学も年間20,000円程度。
実際にフランスで子育てをしてみて、日本と比べてフランスの方が育てやすいと感じます。その一つに、教育にほとんどお金がかかりません。フランスでは、高校まで授業料は無料。私自身が日本から留学した国立大学では、年間の授業料が当時の日本円に換算して15,000円程度でした。もちろん入学金もありませんし、16年経った昨年の調査でも、181ユーロと日本に比べて遥かに安いのです。

フランスの税金は確かに高いですが、きちんと還元されているので納税する価値を実感します。日本の奨学金制度では、学生が卒業後就職して学費を返済し続けるなど、フランスでは考えられないことです。日本では子ども1人あたり、大学までの費用を考えると何千万と掛かると聞きますから、日本の出生率が下がるのも教育費に関係しているのではないかと思います。

図表1-1-13 国公立大学の平均授業料と奨学金を受けている学生の割合
(出典)OECD「図表でみる教育~OECDインディケータ2008」 文科省HPより
※他国と比べるといかに日本の大学の授業料が高いかが分かる。
職場での子育て協力体制
企業は育児を理由に解雇できませんし、子育て中の母親が働き続けやすい制度があります。産休・育休後の女性を、同等のポストへ復帰させなければならないという法律もありますし、会社も残業というものがほとんどありません。

父親が家事や育児を分担する家庭も多く、毎朝父親が子どもを送りに出て、夕方6時半にはビジネススーツで子どもをに迎えに行くなど、子育て中の父親にはアフターファイブに飲みに行く習慣もほとんどありません。

私は剣道クラブに入っているのですが、始まる19時半には男性も皆、所定時間に集まるんです。 「会社で歓送迎会とか行かないの?」と聞くと、終業時間の後オフィスで1時間ほど、シャンペンとおつまみでパーティーをするだけだそうです。

いわゆるエリートの人でも、日本人のように会社に拘束されていないように思います。知人のエリート銀行に勤める人も、残業で帰りが遅い時もあるけれど、休日に出ることはほとんどないと言います。

フランスでは年に5週間の有給休暇がありますが、フランス人に言わせれば、「バカンスを取るのは権利じゃなくて義務」らしく、消化率も100%とされています。夫も管理職で労働組合にいますが、日本では考えられない、管理職のための労働組合があるんです。
日本の長時間労働について
日本の会社では仕事が終わってさっさと帰りたくても、それを許さない空気がありますね(笑)。私がフリーになったのもそこで、保障はないけれど、時間を有効に使いたくて会社を辞めました。

日本の外資系企業でも、子育て中の社員は集中して働くので生産性が高いと、その能力をきちんと評価をしていると聞きます。やはり長期労働は非効率ですし、意識を減少させていく方が良いのではないかと思います。
「介護」は地域と社会でサポート
日本では介護にご苦労されている方も多いようで、それも女性が働けない理由の一つになっているようですが、フランスでは、自宅で介護することも、高齢の両親と同居するということも聞いたことがありません。

フランスでは高齢になっても最後まで自立したいという気持ちも強いので、ある程度の年齢になると自発的に老人ホームか病院へ入るか、行政のサービスを利用します。

義父がパーキンソン病を患い最後は車椅子になりましたが、もちろん私たち子どもも手伝いましたし、家族が何もしないというわけではなくて、無理に家族をあてにしないということです。親も子を頼りにしないし、子も親を頼りにしない。つまり親も子も自立しているという認識があるからだと思います。

子どもたちは基本的に、30~40歳を過ぎて独身でも独立して家を出ます。今、若者の失業率も増えて大変なんですが、大概は仕事を見つけて親元を離れます。そういう意味では、子育てしながら働くことは、子どもの方も親を当てにしないということかもしれませんね。

日本では、子供が家にいたほうが嬉しいという親も多いかもしれませんが、フランスは子も親も自立意識が強いと思います。それに地域や近隣の方たちのサポートもありますから、社会で助け合わなければ、という気持ちがあるのでしょうね。
日本に望むこと
フランスで子どもを産んで日本に戻った人たちに聞くと、「ベビーカーを持って階段を上るのに、誰も手伝ってくれない」と言います。社会全体の空気として、母親が働くことへの理解や子育てについても、もっと協力的になって欲しいと思います。

「子どもがいるのに夫婦で出かけるなんて」、「仕事と子どもがとどっちが大切なの?」という声もあると聞きますから、日本は世間の目、こうであるべきだということに縛られているような気がします。

社会全体で子育てをする母親をもっと温かい目で見守って欲しいですね。 また、企業での長時間労働の見直しも必要かと思います。フランスでは父親も家事を分担しますし、育児もあたりまえに協力します。これからは日本のパパも子育てができる環境整備をしていかなければいけませんね。
江草 由香さん
1996年、映画理論を学ぶため渡仏、パリ第一大学映画学科に登録。PRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、1999年にパリ発情報誌『ビズ』を創刊。現在、日本の雑誌やWeb媒体にてフランスの情報記事、コラムなどを寄稿しながら、日仏バイリンガルサイト『BisouJaponビズ・ジャポンの編集長を務める。ジャパン・エキスポなどパリで行われる見本市で、日本企業や日本人クリエーターの出展をプロデュース、ギャラリーの展示会の企画コーディネートも行う。フランス人の夫との間に中学生になる子供とパリ郊外に暮らす。
HP:http://www.bisoujapon.com/
日本とフランスの子育てに関する制度や、他国との子育て支援予算を比較してみると、日本がいかに「子育て小国(AERA 4月より)」と言われる所以がわかりました。日本でも2014年3月のベビーシッターの事件から、よりスポットが当たり注目されています。

現在東京23区の待機児童は5000人近くもいると言われています。その解決には、新たに保育所を作る手もありますが、行政が認可保育所や認証保育所に出している補助金を利用者側に還元するといったことも考えられますし、フランスのように現金ではなくバウチャー(クーポン券)を配布して保育機関で使えるサービスを提供するなど、民間と手を取り合って小回りのきくサービスも必要かと思います。

女性の働き方も多様化し、保育の多様性が求められている今、保育サービスの充実はさらに必要になってきます。フランスは手厚い保障がありながらも、社会保障費は逼迫していて、中小企業はその税金の高さから国から出て行ってしまう問題も出てきています。

まずは関心を持つこと、そして全体のバランスを考えてどうアクションできるかを皆で考えることが、よりよい未来づくりの一歩となると思います。
加藤 倫子
PRESS ROOM
ライター、広報・PR支援を個人事業で行う。 ニュースの仕事を通算で8年。社会、政治、国際のニュースをテレビ、週刊誌、Webで取材・編集に携わる。他にも金融機関で営業職を4年、会社のPRや新聞広告作成など広報の仕事を任される事が多く、外部広報・PR業務を受諾、企画支援、新規事業支援、ライター業も。報道(メディア)とビジネス両面の経験を強みとし、仕事を展開している。
写真協力:Yuzo Komoriyama(加藤倫子プロフィール)
写真協力:記事内フランス国内写真Office MaMi


 


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