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■ ADV(アドボカシー)な人々 #01


コラボラボ代表 横田響子 「いまのきもち」 vol.4

「ねばつく床」と「ガラスの天井」
片岡氏:国際NGO団体の広報担当もしているので、たまにちょっと真面目にもなるんですけど、女性だという理由でなんらかの不利益を被るのであれば、それを不利益でないような形にするというのは、今、非営利団体など社会活動の方でやっていかないといけないテーマで、グローバルでも今が旬のテーマなんです。

「女性の権利拡大」これは今どんどんやらなくちゃいけない。日本でも安倍総理が先日コミットされました。ざっくりと大きく分けて、非営利団体がやる女性のための支援活動と、営利団体としての女性起業家支援のような動きもあり、、さらにもうひとつ、国や公共団体が支援するもっと根源的な公的権利や女性差別の撤廃的なもの。

日本は他の国のように制度的な差別などの露骨な人権侵害がある訳でもなく、一応、法律的には男女の権利はニュートラルです。ただ、"ねばつく床”を女性が這い上がるための支援と、 "ガラスの天井"を打ち破るための支援活動は、NGO・NPO側だけでなく、民間企業も、政府も一緒にやっていかなきゃいけない。

普通に会社にいて普通に頑張っている女性たちは、ある程度までいくと多かれ少なかれ見えない壁(ガラスの天井)に苦労されている。「見えない壁」(ガラスの天井)を、なかなか越えられない人が多い。
僕の友達にすごく優秀な女性がいて、有名大学出て、ボスコンかマッキンゼーかアクセンチュアか忘れたけど、そんなような有名なコンサルティング企業にいるんだけど、彼女は自分が優秀なこともわかっていて、「育児と仕事の両立だったら余裕でできます」と言う。ただ「育児とキャリアの両立になると不利になる」って言うんです。

要するに、同じ実力でも、子育てをしないで奥さんに任せっきりの男性との出世争いやキャリア競争になると自分は不利だって言うんだよね。

じゃそこをどうしていくかというと、僕がいる世界の医療団というNPO法人の医療支援活動とは直接は関係ないのだけれど、日本アドボガシー協会では広い意味で関連してくるので、その辺をやっていこうかなって思ってるんですよ。きょうのこの鼎談も広い意味でそういう活動に入ることになる。

ただ、女性社長たちは見えない壁(ガラスの天井)を自分の力で打破っちゃってますよね。

横田氏:ちなみに今回のイベント(1月のJ300)は内閣府と一緒にやります。内閣府とうちの実行委員会と、いくつかの団体を巻き込んでやります。

片岡氏:お役所と一緒にやると何がいいの?規模的なもの?財政的な援助をしてくれるの?

横田氏:財政的なものもありますけど、これから大企業に行脚しにいくぞという意味では、うちだけで大企業の誰かにトントンってやるよりも、内閣府や大学、老舗の団体と一緒なら分かりやすく動けることもありがたいです。
片岡氏:「お墨付き」があると全然違うもんね。女性でフリージャーナリストで活躍されてて、一番大変な事って何ですか?家庭との両立か、あるいは営業か。あるいはどうしてもアシスタント的な役回りになっちゃう「ガラスの壁」があるのかどうか。

谷本氏:まさに先ほど仰っていた「キャリア」と「子育て」の両立ですね。フリーって、結構頑張らないといけないじゃないですか、拠り所がないわけだから。しかし、周りは、「いいじゃない、会社員の人と結婚しているから、リスクを取れて。もし、自分が家長だったら、フリーのようなリスク取れないでしょう」と。

でも、そこにパラドックスがある気がするんです。自分が家長じゃないということは、家長たる人をサポートしなければいけないという環境が生まれるわけですよね。つまり、家事や育児は受け持つと。そういう、ある意味において制約された環境の中で、なかなか、リスクをバンバン取ったり、フリーとしてサバイブするためにアクティブに動きづらいように思うんです。

つまり、一見、旦那がサラリーマンで安定しているから自分はリスクを取れると思われるけれど、その安定を崩すことが出来ないから、実は、リスクが取りづらいという現実がある気がします。

横田氏:育児されてるんですか。すごい。

谷本氏:ええ。プラスそこに介護が入ってきたりしています。それもやっぱり女性がしなくちゃならないんです。
片岡氏:良くも悪くも育児や親戚付き合いなどの「非営利活動」が生活の中に入ってくると、「営利活動」に割ける時間と割合は当然減りますよね。

谷本氏:ええ。私もいろいろ取材する中で、女性としてこういう生き方や働き方が出来たらいいよね、と思える人たちを見ていると、やっぱり完全にお金にリンクしているんですね。

よく言われる1500万円の壁って本当にあると思うんです。それ以上の方は思い通りにベビーシッター代に使えたり、ハウスキーパーを雇ったりできて、ストレスフリーに見えます。でももっとそれ以下、例えば、500万円以下だと諦めて自分でやるしかないので、キャリアも積みづらいし、リスクも取りづらくなるっていうことを考えると、やっぱりお金が重要なんだなっていう気がします。

片岡氏:こんなこと聞くと、ご主人には怒られてしまうと思いますが、正直なところ、お二人は、独身で仕事されていた方が、やりやすかったんじゃありません?

谷本氏:女性社長の方たちはそうじゃないかもしれないんですけど、残念ながら業界によっては、結婚すると女の価値が下がるみたいな暗黙的なこともありますからね。

片岡氏:女優業とかはまさに典型的でね。
横田氏:今、ママ女優みたいなニュータイプが出てきてますよね。

片岡氏:あれはあれでうまく「進化」できたパターンだよね。バージョンアップしてるタイプ。

横田氏:キャスター業界はそうなんだ。

谷本氏:キャスターは完全にそうですね。

片岡氏:メディアってどうしても出演者を消費する新陳代謝の世界で、キャリアを積む一方で、新しい人の新鮮さっていうのは強い「売り」ですからね。

横田氏:女性社長界はママブームです。最近ママの社長の取材をしたいって依頼がよく来るんですよね。で、「横田さんは子どもさんいますか?」って言われた時、いなきゃ対象にならないのか?と思うくらい。実はその質問の意図が違っていて、深夜番組だから、お子さんがいると深夜に出にくいですよねという意味だったんですけど。