自分の人生の見つけ方~アルケミスト①~ |
読者のみなさま、新しい年を迎えましたね。
いつになく穏やかで暖かな年明けでしたが、みなさま年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。
昨年は、歴史的な改元がありました。
戦後から立ち直った昭和から、経済的に低空飛行を続けた平成。
しかし、30年続いた平成の世は、少しずつ、日本人が「西洋かぶれ」から卒業し、日本という固有の国の文化を見直し、誇りを見出し始めた時代でもありました。
サッカーやラグビーのワールドカップ、野球やバスケ、テニス……。
世界で活躍するさまざまなスポーツの選手の活躍と、崇高なまでのスポーツマンシップやサポーターの礼儀正しさ。
未曽有の災害となった阪神淡路大震災や東日本大震災での苦難に耐えながらもけなげに生きる日本人の姿。
世界がこれらを見出し、称賛してくれたおかげで、どちらかといえば自己肯定感が低めの、言葉を変えれば謙遜が美徳とされる日本人自身も、その「日本人らしさ」を大切にし、誇ってもいいのだなという思いが芽生え始めたそんな時代だったと私は述懐します。
さて、御代替わりを迎えた令和。
世界を股にかけて生きてきた皇后が日本の国民と文化を背中にさらに輝く姿。
広い視野と暖かく深い心、さまざまな才能をお持ちの天皇陛下の大きな存在。
そしてこの一月に、令和二年となりました。
令和はじめての新年を迎えた今年は、改めて自分らしい道へ、新しいステップへといざなってくれる名作から、美しくも力強い言葉をご紹介したいと思います。
本コラムでご紹介する今年の名作は、パウロ・コエーリョ著『アルケミスト』。
ブラジルの文豪パウロ・コエーリョは、私の大好きな作家のひとりです。おそらくすべての著作を読破しているはず。
その中でも、私が「パウロ・コエーリョ・デビュー」をしたのが、この一冊です。
ある貧しい少年が、錬金術師になるべく旅をする冒険物語。
ずっと昔に少年少女だった大人にも、たくさんの気付きを与えてくれる名著です。
夢を追う時、自分を信じることがいかに大切か、少年は旅で出会う様々な人や出来事から学びます。
さあ、私たちも一緒に、「自分の道を見つける旅」に出発しましょう。
夢が実現する可能性があるからこそ、
人生はおもしろいのだ。
(---と、少年は思った)
羊飼いのサンチャゴ少年は、本も読めるし、神学を学んでいました。
なぜなら、彼の父親は、羊飼いではないからです。
貧しい村の、貧しい家に生まれ育ったサンチャゴ。その父もまた、貧しい暮らしを生きてきました。
けれども、身を粉にして働いて、息子を学校に行かせました。
そして、小さいながらも、家を建てたのです。
それは、賢いサンチャゴ少年を神父に育て、村の自慢にしたかったから。貧しさをバネに、一所懸命働くことは悪くありませんが、父はその「一所懸命」の成果を、息子の職業として、手に入れたかったのです。
独身のときに読んだこの本も、二児の母となった今読めば、親の子供に懸ける愛情や期待というものが伝わり、ちくりと胸を刺します。
自分の叶えられなかった夢の実現を子供に託したり、自分が体験した悔しい思いをしないようにと、子供にその苦労を避けさせようとしたり。
それはある意味ではエゴと言えるかもしれませんが、ある意味では、少し未熟な愛でもあります。
父親の懸命の努力により、サンチャゴはラテン語とスペイン語を話せるようにもなりました。
神父にさせたいと願う父に、あるときサンチャゴは、「自分は旅をしたい」という夢を、思い切って打ち明けます。
父親は、旅をする誰もが、自分の故郷に帰ってくるし、おまえにもいつか、この村が一番美しいと思う時がくるだろうと言いながらも、古いスペイン金貨を3枚渡して、息子の旅を祝福します。
「息子よ、これで羊を飼いなさい」
そのとき、少年は見たのです。
父の瞳の向こうにも「旅をしたい」という古い願望が眠っているのを。
息子を安定的な仕事に就かせたい、村の自慢にしたいと思いながらも、かつて自分が見た夢を、同じように抱く息子を見れば、父は応援するしかないのでしょう。
サンチャゴの住む村を訪れる旅人を見て、サンチャゴは彼らの住む世界も見たいと願います。今度は自分も旅人になって、世界を見たい。
「そのこと(広い世界を知ること)の方が、神を知ったり、人間の原罪を知ることより、彼にとっては重要だった」のです。
旅をするには、お金がかかります。現に、この村を訪れる旅人にはお金がありました。
貧しい家の人間が旅をするためには、どうすればいいか。
「わたしたちの仲間で旅ができるのは、羊飼いだけだ」
「では、羊飼いになります」
こうして、サンチャゴ少年の旅は始まりました。
ご紹介した言葉は、旅を続けるサンチャゴの言葉。
―もっとも大切なことは、少年が日々、自分の夢を生きることができることだった―
この物語がいう「夢」とは、遠い将来のことではありません。
少年は、これから何をしたいのか、すぐ身近な未来に正直に、旅を続けます。
もちろん、
―上着にも目的があり、彼にも目的があった―
それは、一年前に訪れた村で出会った少女と再会すること。
その少女との再会を夢見て、日々たくさんの学びと出会いを経験していきます。
少年の旅を支えているのは、
「夢が実現する可能性があるから、人生はおもしろいのだ」
という、彼の信念です。
あなたの人生にも、そして私の人生にも、夢を実現する可能性があります。
可能性を可能に変えてゆくのは、もちろん人生の主人公である私たち自身であることは、明白です。
私の夢を、お話しましょう。
一つは、三冊目の本の完成。進行中のこの本が、自信を持ってみなさまにご紹介できるクオリティにすること。タイムリミットはあと少しです。
二つ目は、英語を話せるようになること。夢の実現のために、昨年は久しぶりに英語の勉強を再開しました。本の執筆でおろそかになりがちでしたが、ゴールデンウィークごろに、またエンジンをかけ直すプランがあります。
三つ目以降は、ずっとやりたかった乗馬や、中断している着物のお免状取得、ドイツ語の勉強の再開や、たくさんの本を読むこと、毎日の生活を楽しむことや、人々を愛することなど、本当にいろいろです。
これだけ欲張りで、どれだけ今年中に実現可能かはわかりませんが、一つひとつ、しっかりと自分のものにしていこうと思っています。
そしていつか……。
この場でご紹介してきたコラムをまとめた本を上梓できたらいいなと思っています。
せっかくの、一度きりの人生。
夢が実現する可能性を無駄にしないで、楽しく生きていきましょう。
この一年は、サンチャゴ少年の不思議な旅の物語と一緒に、私もあなたも、夢を一つひとつ実現させる年にしていきたいですね。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさまにとりまして、実りある素敵な一年になりますように!
Ein glueckliches neues Jahr!