あなたらしく生きるために~バックの言葉⑧ |
長い梅雨が明けたと思ったら、蒸し暑い日々が続く。暦の上では立秋を過ぎても、その暑さは絶好調!
私たち日本人には見慣れたいつもの日本の夏の光景です。
先日、発表された資生堂の調査によると、日本の夏を「自国より暑い」と感じている訪日客は80%にも上るそうです。
面白いのは、日本人が「日本より暑そう」と感じるような、アフリカ・中東の方々の方が、その率が高いということ。
湿気を多くはらんだむせるような日本の夏は、乾燥した空気の地域の方から見たら、さぞ息苦しいことと思います。
そんな日本の夏も、いよいよ後半に入りました。
子供たちは夏休みの宿題の残量を気にしつつも、終わりの見えてきた夏休みを謳歌していることでしょう。
昨年から、私は夏になると、8週間限定の仕事をしています。国立大学の講師です。
なぜ8週間かと言えば、この大学はセメスター(二学期)制ではなく、クオーター(四学期)制を取っているからです。一つの完結する講義を1クオーターで行ないます。
さて、不肖この私がどのような講義をしているかと言いますと、名づけて「実践ベンチャー論」。
毎回2コマを使って展開するこの講義。
最初のコマで同校OBの会社創業者や、同校のある県にゆかりのあるベンチャー企業などの経営者たちに毎週講演をしていただき、次のコマで学生が講師が無作為に分けたグループに分かれて、ゲストスピーカーの生き様や会社の特徴、ベンチャー企業の共通点などを話し合ってもらいます。
最終的には、だれか一人(もしくは1社)対象者(または企業)を選び、グループ発表をし、最優秀グループを決めるという流れで8週間2コマ、トータル15コマ(最後の週だけ1コマ)で単位を付与するというものです。
「実践ベンチャー論」というだけあって、実際に起業した経営者が、学生の目の前で生い立ちや起業のいきさつ、失敗談や苦労話、あるいは成功話を聞かせていただけることに、特徴があります。
さらに、経営を実践している経営者だけでなく、学生達も、司会進行を毎回担当して参加型授業を「実践」。
さらには、企業研究として「もし自分が起業するなら」「もし自分がこの会社の経営企画を担当するなら何を提案するか」など、社会人になったつもりでグループワークや発表を「実践」します。
グループを無作為に決めるのは、それが社会人となったときの勉強になるからです。
学生の頃と違って、会社に入れば、上司や部下を選ぶことはほとんどできません。配属する部署でさえも、多くの方は会社から命じられた部署に所属し、その中でパフォーマンスを示さないといけないのです。
このような訓練を大学にいながら(しかも単位をもらいながら!)実践できる場を作ることを目的としています。
さてこの講義で、今年も8名の経営者の方にご登壇いただきました。
トラック一台から東証一部上場企業へと育てた経営者。
営業一筋から起業し、やはり東証一部上場企業へと成長させたOBの経営者。
3代続く老舗企業でありながら、代が変わるごとにベンチャー的要素を発揮して時代の波を乗り越えた若社長。
親の借金のために指に保険をかけるまで追い詰められたところから起死回生の成長を続ける飲食経営者。
などなど、素晴らしい経験と、不屈の精神を持った経営者が毎週かわるがわる学生達に語りかけ、安定志向の国立大学の学生に、「もっと夢を持て!」とハッパをかけます。
初めて経営者を目の当たりにし、そのパワーに圧倒されていた学生たちも、週を重ねるごとに、何かの気づきを得ます。それが、「一から起業し、成功している経営者には共通点がある」ということ。
この講義を受けてくれた学生達には、きっとリチャード・バックのこの言葉を読んで、深く頷いてくれるでしょう。
では、今月の言葉をご紹介します。
限界、常にそれが問題点である。
君達自身の限界について議論せよ。
そうすれば、君達は、
限界そのものを手に入れることができる。
じつは、初めて『イリュージョン』を手にしたときの高校生のころの私には、ピンと来ない言葉でした。
限界そのものを手に入れる? どうやって? そんなことができるの?
たかだか16年の経験の少ない頭では、まったく理解できませんでした。
けれども今、この意味はよくわかります。そしてこの意味がわかる担当学生たちは、とても幸せだと思います。まだ18-22歳の、社会に出る前の学生が、この意味を知り、これについて深く考え、そしてこれからの輝ける人生の課程で実践していけば、本当に彼らは限界そのものを手に入れることができると信じています。
学生達が、創業経営者たちから学んだことは、まさにこのことでした。
どの経営者も、最初から最後まで順風満帆な方はいません。
他人が抱えた借金の肩代わりで、財産を全て失ったり、親の代では戦争によって、すべての財産を没収されたり、同業の大手企業にノウハウを盗まれたり、周囲からは「そんなことは絶対に無理だ」と馬鹿にされたり。
それでも彼らが嬉々として学生の前で講演してくださるのは、それらを乗り越え、自らの手で勝ち取った未来がそこにあるからです。
そして、自信を持って、そしてまるで口をそろえたように、学生達に語りかけます。
「諦めなければ、失敗ではない」
どんなに周りから見て失敗の連続でも、自分さえ諦めなければ、それは「実現への旅の途中」なのです。
子供たちが、太陽の光をいっぱいに浴びて、真っ黒に日焼けをして、旅行をして遊んで、夏休みに一回り逞しく成長するのと同じように、
毎年夏に行なうこの授業を受けた学生達も、夏は一回りも皮がむけ、大きく強く、芯のある逞しい青年へと成長していきます。
みなさんにとって、この夏、成長するチャンスはあったでしょうか。
もしそのような機会に出会えなくても、諦めずに前に進むことの大切さをこの言葉を読んで思い出していただけたら幸いです。
最後に。
わが子がヨットの遠征に行っているとき、70代のコーチが子供たちに贈ったという言葉をご紹介したいと思います。
「あなたたちには、何にでも挑戦する資格がある」
子供だけでなく、私たち大人にも、きっと挑戦する資格を持っているはずです。そして自分の諦めずに続けることが、私たち自身の人生を輝かせることを、まずは私たち大人が率先して示して生きたいですね。
夏は、成長の季節です。
この夏を乗り越え、ますますあなたらしく輝いたみなさんに出会えますように!
Schoenen Tag noch!