新しいあなたへ~新シリーズ「ココロの処方箋」~ヘッセの言葉⑭~ |
初夏の日差しが眩しい五月。
気がつけば、この連載も14回目になります。
うっかりものの筆者は、12回で1クールにしようと思っていたのに、すっかり通り過ぎてしまいました。
そのくらい、ヘッセが素晴らしい言葉を残しているということでもありますね。
せっかくなので、キリの良い回まで、ヘッセの言葉をご紹介していこうと思っています。
まだまだお付き合いくださいね!
さて、爽やかな陽気と、元気な日差しとは裏腹に、
はじめての環境になじみ始めた矢先に連休があり、
ゴールデン明けは「五月病」というやっかいな「病い」が潜んでいます。
聡明な読者のみなさんは、きっと社会でご活躍のことと思いますが、
その一方で、自分自身の生き方に不安や疑問を抱くこともあるのではないでしょうか。
それは、懸命に生きている証でもあります。
不安を抱くことは、私たちが人間である証なのです。
ヘッセのこんな言葉をご紹介しましょう。
人は不安を抱えている、
不安ゆえに働き、心を配り、誰かを愛そうとする。
不安がわたしたちに、行動の力を与えている。
(『クリングゾル最後の夏』)
もしも、悩みのかけらもない人がいたら、
もしも、一抹の不安も抱かない人がいたら、
よほど神がかった人であるか、
反対に動物的であるか、ではないでしょうか。
人を愛おしくなるのも、人が愛おしいのも、
それは心が完璧でないから、それを互いが認めているからです。
人間存在の危うさを知っている人、
自分自身の弱さを知っている人は
他者に対しても、赦しの心がある人でしょう。
反対に、自分の心にある不安や未熟さに気付けない人は
極めて傲慢で、自分の弱さを棚に上げ、他者に厳しい人であるでしょう。
あなたが今、心に不安を抱いていると自覚できたなら、
それはあなたが人間らしく、ハートフルであるということ。
もっと懐の広い人間になれるチャンスだと言うこと。
青空が眩しすぎて、なぜだか切なくなってしまうあなた。
夜空の月が美しすぎて、知らずのうちに涙がこみ上げてしまうあなた。
そんなあなたにこそ、多くの人が共感を抱き
さらに魅力的になる力が宿っていると思うのです。
梅雨がやってくる前に、自分の心や弱さと向き合い
憂鬱な季節を乗り越える力を身に付けたいものですね。
今日もヘッセは、強く優しく語りかけます。