あなたを強くするローマ人の言葉④~塩野七生『ローマ人の物語』より~ |
古代ローマ史のみならず、世界史に残る賢将カエサル(シーザー)が活躍する第四巻。カエサルの優秀さを表す言葉もたくさんあるのですが、今回は人間の愚かさについての言葉をご紹介して、肝に銘じたいと思います。
2000年前の人間も、現在も、素晴らしい部分はもちろんですが、残念ながら愚かな部分も変わりません。そしてそれら人間の愚かさを熟知して人身掌握術に長けていたのがカエサルです。私も、世間の雑音に惑わされず、少しでもカエサルの理性を学びたいものです。
人間とは、噂の奴隷であり、しかもそれを、自分が望ましいと思う色をつけた形で信じてしまう。(第4巻)
カエサルはプロパガンダの重要性を認識していました。うわさ好きな人々が、彼らの都合に良いように解釈されて広がり、自らパニックに陥ったり、疑心暗鬼になったり。
今も昔も変わらないのが「その他大勢」の凡人たちです。だからこそ賢人の存在が際立つわけですが。SNSが発達した今、「噂の奴隷」の末裔たち(現代人)は、相も変わらず世間のうわさ話に一喜一憂しています。しかも人間の悲しいところは、「良いうわさ」よりも「悪いうわさ」の方が広く早く流れて人々の中に浸透してしまいます。
それは私たちが「人の良いところ」よりも「他人の不幸」や「他人の悪さ」を面白がる傾向にあるからに他なりません。ビジネスにも忙しい「東京ウーマン」な読者の方々には縁遠いかもしれませんが、昼間のワイドショーは芸能人の不幸話、政治家の不祥事、悲しい事件事故のオンパレードです。
時事情報として必要な情報も中にはあるでしょうが、ときには連日のように同じ人の起こした同じ事件について事細かく報道しています。人の噂話よりも、自分自身の生活に眼を向けて、決してうわさの奴隷にならないこと。聡明であった古代ローマ人たちでさえ、抗いきれない人間のサガと言えますが、少なくとも私たちの根底には「噂の奴隷」たる血が(恥ずかしながら)流れていることを認識していることが大切です。
そしてもっとも大切なことは、もしもあなたがそのような「噂の主人公」になってしまったとしても、動じない精神性を身につける努力をするということです。中高生のいじめもしかり、ママ友いじめもしかり、噂の奴隷たちによるいじめで、幾多の尊い命が失われたことでしょう。どうか聡明なみなさんはそれらに加担しないよう、清く過ごしてほしいものです。
あなたの周りに悪意の噂をする人たちがいたら、あるいはあなたがつい噂したり、だれかを批判したくなったら、ぜひ肝に銘じていただきたい言葉があります。
非難とは、非難される側より非難する側を映し出すことが多い。(第4巻)
もしも非難される側になったら、世間から試されているのは、あなたではなく相手であることを心に留めて、忍耐強く振舞いましょう。噂の奴隷である人たちも、時が経てば誰が清く生きているのか、きっと理解してくれるでしょう。
始まりの季節。たくさんの新しい出会いがあると思います。その新しい出会いを、この先もずっと素晴らしいものにするために、人間の愚かさを反面教師にして爽やかに生き抜きたいものです。