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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2017-12-20
新しいあなたへ~新シリーズ「ココロの処方箋」~ヘッセの言葉⑨~

12月も後半になりました。

今年も残すところあと10日ほど。

一年というのは、本当に早く過ぎてしまいますね。

 

読者のみなさんも、大掃除や年末のやり残したことの片付けなど

新しい年に向けて着々と準備を進めていらっしゃることでしょう。

あっと言う間に過ぎてしまう一年。一か月。一日。

 

それが身に染みる年末だからこそ、

年内最後のヘッセからのメッセージは、ちょっと辛口のものを

選んでみました。

辛口ではあるけれど、だからこそ肝に銘じたいとも思える言葉です。

 

怒り。不信。あせり。嘘。裏切り。意地悪。

これらのことは、日々の中で、

ふつうにいくらでもあるようなことなのだけれど、

これらのうちの、たった一つでもあったときは、

その日をどうしようもなく台無しにしてしまう。

 

とても短い一回限りの人生の大切なこの一日が、

そのためにまったく塩辛い味に変わってしまうのだ。

(『ペーター・カーメンツィント』)

 

出典は、以前もご紹介した『ペーター・カーメンツィント』からです。

 

横綱日馬富士の暴力疑惑、そして引退。というニュースはまだ記憶に新しいですが、

異国の地から一旗揚げようとやってきて、長い間、苦しい修業を積んできた日馬富士。

日本で親方として生きようと、帰化の申請をしていたとも聞きます。

ふだんはおとなしく控えめな性格だったという話もありました。

どんなにこうした長い間の蓄積があっても、

暴力、という一つの事件により、彼の横綱人生、あるいは

今後の相撲人生がまるで夢であったかのように消えてしまうことになりました。

もし、あのとき振り上げたこぶしを見て、一瞬でも我に帰ったら。

もし、あのとき、被害者の体にあたる前に、誰かが止めることができたら。

日頃の評判が良い日馬富士だけに、誰もがその「もし」を望んでいたと思います。

もちろん、怪我をした被害者も、そしてなにより、本人が一番…。

 

しかし、残念ながら、その「もし」はあり得ないことなのです。

 

こうした「ある一瞬」のできごとが、それまでのその人の人生を

これからのその人の人生を、一変させてしまうということがあります。

 

私たちの身の回りには、暴力というような物騒な話ではなくても

ヘッセが指摘したような「ふつうにいくらでもあるような」小さな悪事というのは

誰にでも経験はあるのではないかと思います。

 

あのとき、あんな言い方をしなければ、あの人から嫌われることはなかった。

あのとき、もっと早く対処していれば、誤解を生まずに済んだ。

あのとき、もっと相手の気持ちを察してあげられることが出来たら…。

 

残念ながら、過去へ戻れない私たちには、もう「あのとき」はありません。

だからこそ、毎日毎日を丁寧に。

一瞬一瞬を大切に。言葉も、振る舞いも、表情や対応も。身だしなみ一つにも。

 

大切な「あなた」が、(本人からしたら)「ほんの些細なこと」で、

あなたの大切な人生を塩辛い涙味にしてしまいませんように。

ヘッセは、本の中から呼びかけます。

 

家族だからわかってくれる。

仲良しだから許してくれる。

あんまり会わない人だから、気にしなくてもいい。

 

年末の大掃除や断捨離とともに、

そういう自分の弱さや狡さを、一つずつ手放していけますように。

そんな思いで、年の瀬を過ごし、新しい年が笑顔で迎えられますように。

私も、そして読者もみなさまも。

 

今年も一年間ご愛読ありがとうございました!

みなさまにとって、来年も素敵な年になりますように、お祈りしています!


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