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鈴木 良子 コラムニスト YOSHIKO SUZUKI
すぐに「私って世界一不幸」と思うネガティブ思考の持ち主であったが、妊娠を機に一転「世界一の幸せ者」に転向。息子と二人、てんやわんやの毎日だが、心は「華麗なる二人家族」を目指そうと日々奮闘している。
華麗なる二人家族~シングルマザーの楽しい毎日~ ライフスタイル 2014-09-11
あ~夏休み

私の仕事は出版社の中で広告や販促をする仕事なのだが、一年を通して仕事量に山谷がある。出版物は、短くても出版する日の大体2カ月くらい前には誌面のイメージができ上がっているし、取材やら調査やらが入ると、半年くらい前には企画していたりする。つまり、真夏にクリスマス企画を立てたりしている。

そんなわけで、世間が長期の休みをとる頃――お正月は「春・新学期」の企画をしているし、桜が咲く頃には夏の仕込み、夏休みは冬に向けての準備…と、クリスマスも花見も夏休みも満喫できないことが通常だった。まあでも、クリスマスや花見、夏休みなどのイベントも私にとって「絶対欠かせないこと」ではなかったし、できれば夏休みなんかは、人と時期をずらして空いてるときにリーズナブルに思う存分満喫したい!と思っていたので、イベントに乗り遅れても全く気にしていなかった。

しかし、子どもができるとなかなかどうして、そういう行事が無視できなくなってくる。

もちろん保育園でクリスマス会やら夏祭りやらが行われるから、というのもあるが、何というか、子どもの親として「人並みに世間が楽しんでいる行事を体験させてあげたい」と思うようになるのである。不思議なものである。混んでてもお花見に行こうかな…ゆっくりお花見したいから場所取りもしてこようか、などと考えてしまうのである。

今夏は例年に比べるとかなり時間的に余裕があった。どこに行ったって夏休みの子どもで混んでるし、なにしろ暑いんだから家でのんびりしていた方がいい、はずなのに、気がつくとどこに行こうか、イベントはないだろうかと、一生懸命探し考えている自分がいた。

というわけで、気がついたら夏休みは毎週末イベントが入っていた。朝5時に起きてラジオ体操の収録に参加したり、区の旅行に当たって見ず知らずの区民の人たちとジャガイモ掘りしたり、25年ぶり位に海で泳いだり…。独身のときには考えられないイベント選定とフットワークである。

4歳になったばかりの息子は、連れまわされ感が否めない時もあったが、総じて楽しんでいた。ラジオ体操の収録の後には「新しい朝が来た~♪」とすぐに歌を覚えていたし、人見知りが治ったか?と思うほど、名前も知らない区民のおばさまたちになついてかわいがられていた。海に至っては行ったことも見たこともないくせに、どこで覚えたか、東京駅の新幹線乗り場でゴーグルと浮輪をつけて周囲の笑いを買っていた。

過ぎてみると、どれも楽しいイベントばかりだった。息子への「やってやった感」で、私はとても満たされていた。

8月31日。

世間の小中学生と同様、私も宿題に追われていた。何と息子の保育園では年少クラスなのに夏休みの宿題らしきものが出されていたのだ。

子どもか親か、誰に課された宿題なのかはわからないが、夏の思い出を記さなくてはならなかったようで、8月31日は朝から思い出の写真を印刷しながら、全神経を脳みそに集中させ、何があったか記憶を呼び戻していた。宿題が終わったのは夜中…。

まとめあげた夏の思い出を眺めながら、気がついた。

「子どもに人並みにイベントを体験させてあげたい」なんて、なーんておこがましかったんだろう、と。「夏の思い出ページ」に貼りついた写真はみんな、息子がいなかったら絶対にできなかった体験ばかり。親の私が、息子に夏を楽しませてもらったんだ…。

独身時代に「めんどくさそ」と思いこんでいたことは、実はやってみるとみんな「楽しいこと」ばっかりだった。子どもってきっとそんな力を持っているのだ。

こんな夏も悪くない、というか、来年もまたこんなふうに過ごしたい。

そう思った夏休み最終日だった。


 


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