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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) ライフスタイル 2014-01-15
心新たに、仕事を楽しむために ~ゲーテの幸せ講座~

年が明け、みなさんの生活に「日常」が戻ってきましたね。

届いた年賀状を見ては、友人知人の子どもの成長に感心しつつも、さして成長もしないわが身を振り返れば、一年という時の早さに反省交じりに驚く。大人なら、一度くらいそんな思いをしたことがあるのではないでしょうか。

けれども年も改まり、気分は一新。年末年始に反省したなら、気持ちを切り替えて前向きに新しい「自分時間」をゲーテと一緒に楽しみましょう。

 

われわれの願いは、われわれのうちにある可能性の予感であり、われわれが成しうるであろうことの先触れである。

(『詩と真実』第二部より)

何かを成し遂げたいと思った時、まず最初にすることはなんでしょうか。そう、まずは心にその思いを刻むこと。願う、という行為が夢の実現のための第一歩。

この言葉が収録されている『詩と真実』は、世界三大自叙伝に数えられるゲーテの自叙伝。すでに世界的な作家であり哲学者であり、地位も名誉も手にしていたゲーテが、学生の頃を振り返って、「経験者」として吐露した言葉ですから、その言葉にも重みがあります。

願い、それに向けてわずかでも踏み出してゆく。その繰り返しが、自分が描いた自分像に近づく一歩だと、ゲーテがその体験から語る言葉で、私たちに勇気を与えてくれます。

何事も、「一番を目指す」とか、「やり遂げる」ということができずに、中途半端な学生生活を送っていた私は、将来の夢も漠然としていて、しかも散漫。それでも「何かをしたい」と思うこと、それを出来る範囲でもいいから行動に移すことで少しずつ「なりたい自分」を見つけられるのかもしれない。そんな期待を抱かせてくれました。

そして今。いつかこうなりたいと願ったいくつかの夢が、ほんの少しずつ形になりはじめています。31歳で会社を辞めて文章修業を始めたときに師匠から「添削不能」と言われて課題を突っ返された時、中学生のころ、「あなたは作家になれるかも」と励ましてくれた国語の先生の言葉と、ゲーテのこの言葉を心ひそかに大切に抱きながら、「やりたいと切望している、そして修業を始めたのだから、きっといつかできるはず。添削不能なのは、努力が足りないから」。そう前向きに取り組むことができました。

仕事で芸歴数十年、あるいは業界でトップクラスという方々とお会いする機会があります。彼らの共通点は「夢」は見るものではなく、叶えるための青写真だと考えていることでした。彼らがもし、その夢を途中で諦めていたら、私たちが彼らを見ることはできなかったのです。未来は自分が作るというのは、彼ら著名人や一流のアスリートたちを見ればよくわかりますね。

あなたも、「どうせできない」「ただの夢だから」と思うのではなく、「こうありたい」と心に思ったその時こそが、自分が夢見た「願いの花」のつぼみを認識したときだと思うようにしませんか。どんな「なりたい未来」も、願いを自覚し、目標を決めることから始まります。

さぁ、この一年、あなたはどんな「願い」に向かってスタートを切りますか?

 

 

記憶は消えてしまってもよい。

現在の瞬間の判断をあやまらなければ。

(「格言と反省」より)

潔い言葉です。毎日毎日、大人も子供も、たくさんの判断をして生きています。

大人になると、そこへ経験値が積み重なり、比較的「安全」な判断を下すことができるようになってきます。それはそれで悪いことではありません。

けれども、人生には、そして地球には「不測の事態」というものが突然やってきます。そのとき、過去の経験を活かしつつも、もっとも大切なのは「目の前」に現れた現象に真摯に向き合い、行動を決めて前に進んでいくことではないでしょうか。

会社の役員をして4年が経とうとしていたとき、日々の仕事への注意は散漫になり、前例でものごとを判断してしまうことが多くなっている自分に、はっと気づかされた言葉です。

人は、つまらない記憶があるから、それに振り回され、誤った判断を下してしまうことがあります。人間は万能ではありません。自分の過去の経験が絶対に正しいものとは言い切れないのに、つい大して考えもせずに前例を重視してしまう。

ある案件があったとします。かつて自分が提案したとき、それはうまくいかなかった。そして数年が経ち、自分が上司になり、部下が似たような提案をしてきたとします。そのとき「それは前もやったけど、だめだったから」。そう言ってしまったことはありませんか。似ていたけど、ちょっと違うかもしれない。提案は同じでも、プロセスや提案先、ターゲットを変えれば結果が違うかもしれない。そもそも、当事者が変われば、結果が大きく変わることだってある。それは親と子の関係でも同じです。

前例が重なると、そういう「違う」未来に背を向けてしまうことになりかねません。

仕事も人との出会いにおいても、大切な瞬間をいつも孕んでいて、それを人はいつも自ら選択して「今」という状況に立っています。それを自覚して、一つひとつを、その瞬間を、真摯に向き合って生きていけば、きっと後悔のない人生になるはずです。

そして、情報が溢れている現代社会。たくさんの情報、たくさんの記憶から、あなたは何を選んで生きていくのか。人の情報に左右されるのではなく、きちんと自分の責任で判断を下して、生きる醍醐味を味わわなくて、後悔はないのか。

250年前に生きたゲーテが、情報ジャングルとなった今を生きる私たちに、そんな警告を出してくれたようにも思えてきます。

 

今年一年、みなさんの毎日が充実した輝かしいものになりますように!


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