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村井 えり ディレクター兼シナリオライター MURAIERI
世間知らずで勉強もできなかった私にとって、映画は多様な人生の教科書でした。心の奥深くにちょっぴりトゲが刺さるような、女性(と女優)の人生について考えさせられる作品を紹介しますので、是非一緒に考えていただけると嬉しいです。
映画が描くオンナの人生いろいろ 趣味・カルチャー 2014-04-26
サニー 永遠の仲間たち

『サニー  永遠の仲間たち』  써니/Sunny(2011)
監督・脚本:カン・ヒョンチョル
出演 ユ・ホジョン、シム・ウンギョン、カン・ソラ、ミン・ヒョリン、チョン・ウヒ、コ・スヒ、ホン・ジニ


韓国・ソウル市内の高級マンションで、何不自由なく暮らす40代前半の専業主婦・ナミ。しかしその表情はどこかおぼつかない。順調に出世する夫との会話はほとんどなく、反抗期の娘ともうまくいっていないのだ。
ある日ナミは、母と同じ病院に入院する高校時代の友人・チュナと、約25年ぶりに再会する。未だ独身で会社社長のチュナだが、ガンで余命2ヶ月の宣告を受けていた。チュナは、女子高時代の仲良しグループ「サニー」のメンバーに会いたいとナミに頼む。ナミは、チュナの最期の願いを叶えるために、仲間を探し始める…。

あらすじを書くと重そうだが、基本コミカルな作品だ。しかしながら、切なさとノスタルジーで胸がいっぱいになる。昨今の「泣ける」といった宣伝文句が大嫌いなので、この手の「病気で死ぬ」といったものにはロクなものがないと思っているが、これは違った。作り手もそのことを意識しているようで、冒頭、病院のテレビでいわゆる「韓流メロドラマ」が流れていて、患者たちがそれを見ながら「やっぱり2人は兄妹だったよ」「また不治の病だよ」と、“よくある展開”に対してブーブー文句を言う楽しいシーンがある。もちろんこの作品も、終わってみれば定石通りの展開とも言えるのだが、とはいえステレオタイプやクリシェに対する、作者のささやかな反抗が垣間見える。

仲間を探すナミの旅と同時進行で、高校時代が回想される。25年前の1986年。田舎から、ソウルの女子高に転校し、“なまっている”とイジメに遭うナミ。しかしチュナ率いる、学校で一番元気のいいグループが、ナミを仲間に引き入れる。さすがリーダー、チュナは男気?あふれるカッコイイ女だ(彼女がもうすぐ死ぬことを、我々観客は知っているだけに余計に切ない)。その他のメンバーは、二重まぶたにしたいぽっちゃりさん、口が悪い子、文学少女、ミス・コリアを夢見る子。謎めいた学校一の美少女も、なぜかメンバーだ。ナミはそんな仲間たちと共に、他校とのケンカにダンスといった楽しい?学園生活、そしてイケメンへのほのかな初恋も経験することになる。

1986年の韓国は軍事政権下にあり、民主化運動が吹き荒れていた。韓国映画には「殺人の追憶」などこの時期を描いた作品も多く、そのどれもが暗く辛い時代の雰囲気を伝えている。この作品もそんな世相と無縁ではなく、ナミの兄が労働運動に参加したり、町中に機動隊がいたりする。しかしどんなに辛い時代でも、ナミたち女子高生は、音楽やファッション(80年代だからかなりダサい)などのサブカルチャーや、おしゃべりに夢中である。この映画が“よくある展開”から脱しているように見えるのはまさにここで、特にデモ隊と機動隊が衝突するその前で、「サニー」と他校グループが殴る蹴るの大ゲンカをするシーンは、世相の暗さに反比例するように、楽しく爽快な名シーンだ(それにしてもこの映画の女子高生たちは、とんでもなく暴力的です)。

やがて見ている私たちは、ひとつの疑問を感じるようになる。こんなに固い絆で結ばれた仲間なのに、なぜ25年も会わなかったのだろう? その謎が解明し、仲間たちのその後の人生に接するにつれ、こんな仲間や青春がなかったはずの私でも、心を揺さぶられるようになる。映画内の彼女たちとほぼ同年代だけに、大ゲンカのシーンの背景に掲げられた「ロッキー4/炎の友情」の看板や、ソフィー・マルソー主演で大ヒットした「ラ・ブーム」からのモチーフも、たまらないものがあった。この作品の男性版のようなインド映画「きっと、うまくいく」と共に、必見の青春≪回顧≫映画だ。

次回は、これとは真逆の「女友達ってイヤだよね〜」という映画を紹介するつもりです!


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