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森山 亜希子 人材育成トレーナー(ダイバーシティ、コミュニケーション) Inner Diversity
ダイバーシティという、さまざまな意味と想いが含まれるコンセプトがこのコラムのテーマです。わたしたちの身近な生活、自然、芸術、旅などの視点から、ゆったりリラックスしながらも、一緒に考えてみられるコラムを目指しています。
ダイバーシティで過ごす日々 キャリアアップ 2015-03-27
"Diversity"の日本語について考えてみました

日が少しずつ長くなり、すっかり春めいてきました。
暖かくなると、心もやわらぐようで気持ちがいいですね。

わが家では毎年春の恒例行事として、鳥の巣箱を設置しました!
今年もシジュウカラが巣を作ってくれて、ひな鳥たちを無事に育ててくれますように。
小鳥たちをおどろかせないよう、こっそりと様子を見守っています。

さて今回のコラムでは、"Diversity"を日本語で何と言うのがよいのか、改めて考えてみます。

実はこのコラム連載のタイトルは、当たり前のように『ダイバーシティで過ごす日々』と、Diversityを”ダイバーシティ”というカタカナで表しました。

というのも、以前に勤めていた会社でも、社内でのDiversityの取り組みはダイバーシティとカタカナで表記されていましたし、Diversityに取り組む多くの企業には、ダイバーシティ推進室と呼ばれる部署や、ダイバーシティ&インクルージョン(略語でD&I)と呼ばれる社員の教育・研修プログラムなどをあわせた施策があります。また最近では、ダイバーシティ・マネジメントという言葉も、ビジネス書などで目にする機会が増えてきました。

そうした理由から、Diversity=ダイバーシティは、私にとってはなじみのある呼び方です。

しかし、さまざまな分野や立場の方々と話をすると、”ダイバーシティ”と言っても通じることの方が少なく、しかも割合としては相当に低い、ということが次第にわかってきました。

現に”ダイバーシティ”というキーワードでGoogle検索をすると、一番に出てくるのはお台場にあるショッピングプラザ・ダイバーシティ東京です(!)

(これは数年前、ダイバーシティ研究所代表・田村太郎さんの講演で教えていただきました。
今でも検索結果はそのままのようです。)

Community Businessという、香港を拠点にDiversity関連の調査を行うNPO団体があります。そのレポートによると、2012年の時点で、日本のビジネスパーソンによる”ダイバーシティ”という語の認知度は、わずか14%でした。

ここ数年で、経済産業省も「ダイバーシティ経営企業100選」を始めたくらいですから、現時点での認知度は当時と比べてかなり高まっていると思います。それでも恐らく”ダイバーシティ”という語は、知ってるい人は知っている、という域を出ないのではないでしょうか。

またカタカナとして時々ですが、"ディバーシティ”という呼び方も見かけます。

これは英単語であるDiversityの発音方法に、冒頭のDiをダイと発音するのか、ディと発音するのかの2通りがあり、後者をとってカタカナ表記したものと思われます。ケンブリッジのオンライン辞書で調べてみると、前者がイギリス英語、後者がアメリカ英語の発音ようです。

そう考えると、アメリカ英語の”ディバーシティ”でもよいのでしょうが、あまり目にしないことを考えると、視覚的になんとなく、日本語としてはしっくり来ないのかもしれません。

これらに対して、最近は”多様性”と、従来からある最もシンプルな日本語での表現を多く目にするようになってきました。

先日、『バベルの学校』という、フランスの移民の子どもたちが通う学校のドキュメンタリー映画を観ました。テーマはまさにDiversityであり、上映中にはDiversityのフランス語(=Diversite (最後のeの上にはアクセント記号))も表示されていましたが、日本語版パンフレットではすべて”多様性”と表現されています。

また最近では政治の世界でも、”多様性”を尊重して渋谷区が同性カップルの結婚を特区として認め、国も東京オリンピックを前に”多様性”の観点から性的マイノリティへの配慮を検討するなど、”多様性”という言葉が政治家たちの発言の中にも聞かれるようになってきました。

あくまで個人的な見解ですが、”ダイバーシティ”と外来語で呼ばれているうちは、流行や何か特別なことだったのが、”多様性”と表現されるように変遷してきたのは、私たちの普段の暮らしにより根付いた、身近な価値観として受け入れられつつある兆しなのではないでしょうか。

もしそうだとしたら、Diversity実現に尽力されてきた多くの方々の努力が実り、日本の社会が少しづつ変わりつつある、本当にすばらしいことだと思います。

ところで、DiversityにはBio Diversity、すなわち生物多様性という言葉もあります。

自然保護活動に長年従事されている慶応義塾大学の岸由二教授は、生物多様性という言葉をあえて使わず、よりわかりやすい日本語で伝えたいとの想いから、”生きものたちの賑わい”と表現されているのだそうです。

”生きものたちの賑わい” ー たしかに、生物多様性と聞くと少し堅い印象がしますが、生きものたちの賑わいと聞くと、さまざまな生きものがわさわさと、自由に動き回っている感じが伝わってきて、なんだかとても楽しそうです。

実際に、”生きものたちの賑わい”という言葉が多くの人たちの共感を呼び、神奈川県の三浦半島にある小網代の森という自然豊かな流域が大切に守られているとのこと。

人に関するDiversityも、”多様な人びとの賑わい”、あるいは共感を広げられる他の表現を、みんなで考えられたら素敵ですね。私も考えてみます!

 

 


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