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森山 亜希子 人材育成トレーナー(ダイバーシティ、コミュニケーション) Inner Diversity
ダイバーシティという、さまざまな意味と想いが含まれるコンセプトがこのコラムのテーマです。わたしたちの身近な生活、自然、芸術、旅などの視点から、ゆったりリラックスしながらも、一緒に考えてみられるコラムを目指しています。
ダイバーシティで過ごす日々 キャリアアップ 2014-09-26
心が触れ合う嬉しさ〜ハワイ島紀行

そよ風の空気もすっかりと涼しくなり、秋へと移り変わってきました。

実はこの8月下旬から9月上旬にかけて、夫と2人でハワイを旅してきました。今回の旅のメインはハワイ島です。今回のコラムでは少し季節が戻りますが、その旅で感じたことを中心に書いてみたいと思います。

ハワイ島はハワイ諸島の中で最も大きく、英語ではビッグアイランドと呼ばれています。そこに海底からの標高としては世界一高いマウナケア山、活火山のキラウエア、雨量の多いヒロ、ほぼ毎日が晴天のコナ、全米一とも言われる牧場があるワイメア高原などがあり、世界に14ある気候区分のうち11があるという、気候面での多様性にも恵まれた場所です。

ハワイという土地が世界中からの人々を惹きつけるためか、この10日間ほどの旅を通じて、毎日のように異なる文化の人々との出会いがありました。時にはただあいさつを交わし、時には人生を深く語り合ったりもしました。

実は海外に出たのは約2年ぶりだったのですが、この旅で私が一番に感じたのは、やはり多様な文化の人たちと話をするのはとても楽しい!ということです。

その“楽しい”という感情には、言葉は違っても心がつながりあっているようだったり、わけの分からなさや意外性だったり、思わず出会えた嬉しさだったりが混ざりあっています。

たとえ多くの言葉を交わさなかったとしても、お互いの目を見て微笑み合い、心と心が触れ合えたと思えるようなコミュニケーションが毎日のようにありました。ファーマーズマーケットの屋台で出会ったアジア系のおばさんは、注文をすると温かい笑顔で見送ってくれました。トレッキングの最中に出会ったアメリカ人と思われる大きな男性は、強烈な日射しの下で子ども3人を抱えて歩き、真っ赤な顔で汗をふき出しながら地べたに寝転んで休憩していました。その姿に負けず劣らずゆでだこのような状態で歩いている私たち夫婦も思わず笑ってしまい、“Good luck!”とお互いに見あって励ましの声をかけあいました。そうした小さなたくさんの出会いが、日々の時間をどれほど心豊なものにしてくれたことでしょう。


ヒロから1時間ほどのプナ地区で滞在したリトリート施設では、ノースカロライナ出身のご主人とフィリピン出身のチャーミングな奥さんがとても楽しく迎えてくれました。この施設は遠くに海を望む11エーカー(東京ドームと同程度の広さ)もの広大なオーガニック農園の中に作られており、敷地内にはあらゆる熱帯フルーツや野菜、生花などが育てられています。それを住み込みで働くポーランド人のご夫婦とたった4人で手入れをしているというのですから、驚きです。

大学でアートを専攻したというご主人は、Tシャツを脱ぐと全身タトゥーだらけという元バイク乗りでありながら、宿泊部屋をハワイの植物の絵や写真などでとてもセンスよくかわいく装飾しています。しかも彼は、自然災害があっても自力で乗り切っていけるようにと、太陽光発電のソーラパネル小屋3棟に、雨水で生活用水をまかなうためのウォーターキャッチメントと呼ばれるシステムまで設置するなど、一見アメリカ南部出身のただの田舎のおじさんに見える彼(失礼!)は、実は世の中のエコロジーの最先端を行くような生活を切り開いていたのです。しかし彼からそうした気概のようなものは感じられず(これもまた失礼)なんともお茶目でユーモラスなのです。

日本ではあまり報道されていませんでしたが、実は8月上旬に22年ぶりというハリケーンがハワイ諸島を直撃しました。最大の被害地になったのがこのプナ地区で、リトリート施設は幸いにも無事だったそうですが、私たちが訪問する前には一時6,000人ほどが避難をしていました。

その影響で、ある日車道を走っていると大きな木が倒れていました。行きには通れた道でしたので、ほんの少し前に倒れたことは間違いありません。見ると完全に道がふさがれてしまっており、こうなったらかなり遠回りでも迂回しなければならないと思い始めたところでした。

すると次々に地元に住んでいるのだろうと思われる人たちが現れ始め、その中のひとりがなんと斧を持ってきたのです。そして相当の木であったにもかかわらず、斧での切り込み作業を始めました。ひとりの力でできることでは到底ありません。我こそは、という猛者が次々と現れ、交代し、なぜか自転車に乗っていたトライアスロンの選手風の男性も参戦し、幹をどんどんと切り崩していきました。現場には20名ほどの人が集まり、持っているミネラルウォーターを配り始める女性が出てきたり、子どもたちは近くで木登りを始めたりで、それぞれの想いで応援したり、作業をしたり、または遊んだり、そこには日本ではおそらくあまり目にすることがない、自由さと真剣さとが両立した風景が広がっていました。最後はチェーンソーを持った役場の方が現れ、巨木は結果的には約1時間後にあっけなく取りのぞかれましたが、通行が可能になり車に乗り込むと、お互いにすれ違う車と目で手でサインを送りあい、不思議な連帯感を確かめあいながらアクセルを踏みその場を去りました。

そんな濃い経験をしたプナ地区を離れ、コーヒーで有名な観光地コナに比較的近いキャプテンクックの宿に到着した時には、急に現実世界に引き戻されたかのようで、やや放心状態にありました。しかしそこは多様性の天国のような場所、ハワイです。旅の最終地となるそのB&B(海外版のペンション)では、アリゾナから2年前にハワイ島へ移住し、2年前に未経験ながら開業したばかりというアメリカ人とロシア人のご夫婦ホストがやさしく出迎えてくれました。翌朝はゲストとして滞在していたワシントンDC在住のご夫婦(本当によくしゃべる香港出身の奥さんと、真逆にもの静かなカナダ人のご主人)と計6人で1つのテーブルを囲み、とてもにぎやかな最後の朝食となりました。次の日にはスウェーデンからのゲストも来るとのことで、できれば会ってみたかったと帰国前のさびしさを感じながら、旅の余韻を味わいました。

○ ○ ○

東京に戻ってきてから、二人とも体がとても元気になり、たくさんのエネルギーをハワイ島でもらってきたのだと感じました。そして今も毎日元気に生活しています。私たちが経験したことは、旅だからこその醍醐味という部分がもちろんあることでしょう。そして広大な美しい自然が力を貸してくれたことは間違いありません。


しかしそれだけではなく、出会った様々な人たちが刺激をくれ、私たちの視野を広げてくれ、世界の人々と実はとつながっているのだという感覚と、これからもどんどんいろんな人たちに出会っていきたいとう好奇心を高めてくれたのだと信じています。

こうして旅ができたことに感謝し、そしてこの旅を通じて感じた世界の人々と出会うことの楽しさを、少しずつでも何らかの形で伝えていけたらとの想いで、今回の旅行記のようなコラムの筆を置きたいと思います。
 


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