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鈴木 良子 コラムニスト YOSHIKO SUZUKI すぐに「私って世界一不幸」と思うネガティブ思考の持ち主であったが、妊娠を機に一転「世界一の幸せ者」に転向。息子と二人、てんやわんやの毎日だが、心は「華麗なる二人家族」を目指そうと日々奮闘している。 |
子どもを産むことへのネガ② |
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前回に引き続き、子どもを産むことへのもうひとつのネガについて書こうと思う。 いわゆる「子どもの障がい」だ。 ちょっとデリケートな話題だし、人それぞれ考え方があるから、気にされる方は読み飛ばしていただきたい。
私は38歳で出産した。これはまさにマルコウと呼ばれる「高年出産」だ。 卵子も老齢化しているだろうし、初産の年齢が上がるほど子どもが障がいを持って生まれる確率が高い、ということはかなり知られていることだ。 妊娠中、気にはなっていた。「障がいのある子だったら、育てていけるだろうか」と何度思ったかわからない。いろんなことを想定したが、私は羊水検査は結局しなかった。 確率が何%だったらいいのか悪いのか、それすらもよくわからなかったし、障がいの確率が高かったからと言って、産むのをやめることは考えられなかったからだ。 そして息子は無事に生まれてきた。障がいなく生まれたことに安堵したのをよく覚えている。
ところが、である。 4歳2カ月目の日のこと。保育園から帰ってきたら、息子の様子がおかしい。 朝はふつうにしていたのに、帰ってきたら「あ、あ、あ、う~~~」と意味不明な声を上げていた。それもひっきりなしに、だ。しかも発声と一緒に目をパチパチさせている。器用なことに片目ずつ交互にウインクしているのだ。 「チック症ではないか」と思った私は、すぐさまネットで検索。ますます不安になるようなことばかりが書かれていてさらに落ち込み、手当たり次第、文献をあさり一気読みした。 簡単に言うと、チック症は脳の神経伝達物質の授受がうまくいかないときに起きる。なので成長途中の幼児から中高校生くらいまでによく見られ、成長が止まるころ、つまり成人するにつれて収まっていく。チックの種類は様々で、頻繁なまばたきや首をすくめるなどの運動チックと、無意識に声が出てしまう音声チックの2種類で、どちらか片方だと心配することはないが、両方が一緒に出ると少し厄介な病気に発展することがある、のだそうだ。
息子のまばたきと「あ、あ、あう~~」という発声は、1週間ほど激しく続いた。まともに会話ができないほど発声してしまうし、神経が反射的に体を動かしているのでとても疲れるらしく、口数も減りぐったり横になることが多くなった。目に見えて弱っているし、息子が息子でなくなっていく気がして、毎日毎日涙が止まらなかった。 そして思ったのだ。「生まれるときばかりに障がいがあるわけではない。子どもはいつ何時どんな病気になるかわからないのだ」と。
あまりに急に始まった息子のチックで、私は息子の将来を悲観した。絶望的になった。これから先、学校に行ってもいじめられるんじゃないか、ニートになるんじゃないか、就職もできないんじゃないか…。どこか知らない街に引っ越してひっそりと二人で暮らそうか、そもそも私はそんなこの子をずっと愛していけるだろうか…?不安でいっぱいになった。
そんなある日、すっかり無口になった息子が私に言ってきた。 「あのね、ママがなんで毎日泣いているか、知ってるよ。…ママ、会社で嫌なことがあったんだよね、だから泣いてるんでしょう?」と優しく抱きしめて背中をトントンしてくれた。 その瞬間、この病気を受け入れようと腹が据わった。誰かにからかわれてもいじめられても、一緒に立ち向かって乗り越えていこうという気持ちになった。 そう思い始めたらあら不思議、今まで気になって仕方なかった「あ、あ、あ、あうー」という発声やまばたきが、かわいいとさえ思うようになってきたのだ。
発症してから3カ月。 「母親が子どものチックを気にしなくなる頃、治っているものだ」と何かに書いてあった。本当にその通りで、あんなにひどかった息子のチックは治まり、今は少しだけ出たり出なかったりを繰り返している。 そして出てきたときは「今、頭が良くなろうと頑張っている証拠なんだよ。だからダイジョウブ、よかったね!」というと嬉しそうに笑っている。頭が良くなることが嬉しいのだそうだ。
私が今「障がいのある子が生まれても育てられるか」と聞かれてもやっぱり「はい」と言える自信はない。でも「生まれるときに障がいがないから安心」というのははっきり違うと答えられる。 なんの心配もなく、病気もせず大人になる子なんていないのだ。 病気になってもやっぱりわが子はかわいいし、私はそんな息子の母親になれてよかったと思う。 |
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吉田 美智子 ユング派心理臨床家・… はこにわサロン東京 |
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