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■ 未来へ繋ぐ女性の生き方


当事者だからできる助け合い〜若者と子ども達の未来の為に vol.1

当事者だからできる助け合い
〜若者と子ども達の未来の為に

未来を繋ぐ女性の生き方第7回は、シングルマザーを支援する一般社団法人シングルマザー支援協会・会長の江成道子さん、“生きづらい世の中”を訴える10代から30代の若者達をサポートするNPO法人(申請中)若者メンタルサポート協会の理事長・岡田沙織さんに対談をして頂きました。

日本のひとり親世帯の貧困の実態は、先進国の中でも最悪とも言われ、シングルマザーにおける就労所得は平均180万円(厚生労働省・平成23年度全国母子世帯等調査)とされています。シングルマザーはハイリスクな人材と見なされ、正規雇用も難しいと言われています。

江成さんは主に営業職の仕事をしながら5人の子どもをひとり手で育て、2年前にシングルマザーを支援する社団法人を立ち上げました。自立支援のみならず、母親が働く事で生まれる新しいマーケットを企業側に提示し、母親同士助け合える仕組みを企業に提案する等、勢力的に活動しています。

岡田さんは、2年前から“生きづらい世の中”を訴え、生きることに悩みを抱える10代から30代の若者達の相談をボランティアで続けてきました。非行・リストカット・ドラッグ等でSOSを発信する若者達。親の離婚や両親の不仲、社会での居場所のなさ等が背景にあると言われています。自身もドラッグやリストカット等、波乱な人生を経てきたという岡田さん。岡田さんはこの度、若者を支援するNPO法人を立ち上げました。

2月には川崎市で中学1年生の男子生徒が少年達によって残虐な暴行を受け亡くなりました。亡くなった生徒の母親はひとり親で仕事に追われ、子どもとコミュニケーションを取る余裕がなかったことも原因のひとつとも言われています。一方で、家庭環境や学校への不満からやり場をなくし、非行に走ったり、犯罪の加害者になりかねない若者達。

世の中での生き辛さ、その歪みを受けるのは若者・子ども達と言います。対談では、当事者だから出来る事に焦点を当てて、シングルマザーと若者を取り巻く環境や活動についてのお話をして頂きました。若者・子ども達が、元気に生きられる社会づくりをと、前向きに活動するお2人の対談です。
江成さんはシングルマザーの支援、岡田さんは若者のメンタル・サポートという事ですが、どんな活動をされていますか?
江成さん:「日本シングルマザー支援協会」は、女性の自立をお手伝いする、自立に向けた活動の提供でして、少し元気なシングルマザーがまだ元気になりきれていないシングルマザーの手をひこうとシングルマザー同士が助け合えたらという気持ちからスタートしました。

生活を支援するという考え方より、共に支え、共に応援しあうという方向で、少しずつシングルマザー同士が皆で良くなっていくイメージです。ひとつは企業へ私自身が足を運び、就職のイベントをするなど支援や情報提供をしています。また、シングルマザー同士がメンタル面、共感し合える場づくりということで2つめとしてはランチ会を開催したり、3つめとして結婚はとても大切な事と考えますので、再婚への支援、と3つの活動を柱としています。

岡田さん:NPO若者メンタルサポート協会(申請中)は、他にも若者支援をしている団体もありますが、自分自身が当事者であることに特徴があります。私自身が相談者である彼らの気持ちを分かってあげられるということが強みなのです。私自身、両親が離婚をして、9歳のころ、母親に生きる希望を絶たれるような酷い一言を言われたんです。それから世間で言えば道を外した思春期を送るようになりました。非行に走り、ドラッグ・自殺未遂も経験しました。

そんな経験から、ひとつは彼らの無料相談を実施することがひとつ。それは彼らの心の居場所づくりと考えています。ふたつめとして身体の居場所、駆け込み寺のようなものを作る計画も立てています。3つめは若者の就職支援です。例えば、少年院から出てきたり、ひきこもりだったり社会で不適合と言われる、中卒の子たちがホワイトカラーの仕事をしたくても、肉体労働系の仕事は在るけれどもやりたいことが今の社会はなかなか出来ないんですね、それで就職支援をと考えています。それに付随するビジネスマナーは、就職するまでに私が講師として教えるのですが、これらの3つを活動の軸にしています。
当事者の支援。共感の輪が広がり、協会設立へ。
活動をはじめたきっかけを教えてください。
江成さん:私も当事者であることが大切であると考えます。当事者が持つ悩みを共有できて力になってあげたい、という気持ちがありました。私は、2度の離婚を経験していて、一度目は27歳の時、夫の仕事上での失敗があり、子どもの生きられる環境でないと判断した為、子ども達を連れて出てゆきました。

2度目は夫のDVや借金の問題もありまして、やはり子どもを守る為にと出てゆきました。シングルマザーとなって、何としてでも子どもたちを食べさせていかなければならず、営業の仕事を中心に、トラックの運転手もやりましたし、5人の娘達を育てる為にとくかく必死で働きました。将来を考えても涙しか出ないというくらい、重責に追いつめられた事もありまして、そんな20代の自分に40代の自分が「大丈夫だよ」と言ってあげたい、という気持ちもあり、そういう方々の助けになれないかと思いました。それから同じ想いを持つ、数人のシングルマザー同士が集まり、スタートしたのです。

営業の仕事をしている時も、会社から指定されたその時間は働けなかったり、保育園との時間の両立が出来なかったり何度も壁にぶつかりました。やる気と経験はあるのに「夜8時にアポが入ります」と言う仕事ができないんです。保育園は18時までに18歳以上の大人が来てくれないと子どもは引き渡せないので、次女の16歳の娘に頼む事も出来ませんでした。

今の日本の社会で、女性はみんな無理をしているのでないかと思うのですが特に子育てをしている人はなおです。そして、まだまだ女性らしさを活かして、活躍する場がない。

女性活用と言われていても、一角の人が目立っているだけで、数としては圧倒的に少ないのが現状だと思います。私が協会として企業に伝えているのは、「男性が作った男性社会はそのままで十分立派なので、企業として、もう少し売り上げと市場が欲しいのではないですか?」と。それを女性フィールドでつくりませんか?という提案をしています。
女性同士が助け合える「女性チーム」を企業に提案
ですから、企業には今の売上げのまま、新たに女性チームをつくることによって、新しいマーケットを作る、ということを提案するのです。子どもがいる女性同士、子どもがいて具合が悪い時は、助け合いながら出来ます。そういったフィールドをつくることは、日本の企業なら出来ると考えています。

ただ、男性が考えても出来ないことで、早急に現場に女性を送ることが必要で、そういう仕組みを創りだす側に早急に女性を置くべきと考えています。

岡田さん:私は活動自体がこれからのところもありますが、実際に動いてみて、企業の感触はどうですか?

江成さん:それが思った以上に、企業の方の理解度が高いのです。「すぐに実行します」と言ってくれることもあります。これは予想外でしたね、想像を超えるくらい。ところが今度は、引っ込んでいる女性が出てこないのです。今、女性がもうちょっと勇気を出して出てきてくれないかな、という壁にぶつかっていて、どうすれば外に出てきてくれるかなと取り組みを始めているのです。

岡田さん:え、どういうことなのでしょう?
”自己肯定感”がない人が増えている?
江成さん:仕事がないから出てこないかと思ったら、「わたしなんか雇ってくれるのかな」とか、長く社会とか関わっていないから不安だったり・・・ということがあるみたいですね。

自己肯定感がないというか、意欲がないというのか・・・。自分が何をしたいのかが見えていない人が多いように思います。自己肯定感とは、自分のいいところも、ダメなところも、全ての自分を認め肯定する気持ちのことで自分の事を好きという気持ちを持っている事ですが、最近この問題は浮き彫りになってきているので、今年のシングルマザー支援協会の目標は「自己肯定感を高めること」なんです。

岡田さん:江成さんの協会もですか。実は、私の開催する講座でも「自己肯定感を高める」ことを集中的に行っています。自己肯定感というのは、掘り下げていくと、小さい頃の親子の関係があるように思えます。両親から十分に愛情を貰っていなかったり、要求を受け容れられていないということですね。思春期に非行に走らなかったとしても、20代30代で「私なんか・・・」と自分の事を否定的に思うようになって、恋愛して結婚したものの、相手に要求するばかりの依存するばかりになってしまって相手と旨くいかない、といった声もよく聞かれます。
母親が自分の人生を生きる時、子どもは自分の人生を生き始める
江成さん:自己肯定感、そうなんです。母親に自己肯定感もあって元気になって、自分の人生を生き始めると、子どもも自分の人生を生き始めるんです。私がよく言うのは「母親は子どもに背中を向けててください。背中を見せて、どんどん前へ進んでいけばいい」と。それが今、母親が子どもの方に内向きになってしまっている。それが逆効果、「ああいうふうにしなさい」「こういうふうにしなさい」と。すると子どもは進むに進めないし、そのうちに、子どもが自分の人生を生きられなくなってしまう、そんな実情を見てきています。
10代、20代の若者が抱える「生きづらさ」
岡田さんはどんなきっかけで活動をはじめられたのでしょう。
岡田さん:私は「こころが楽になるメッセージ」というテーマでブログを書いています。そこに私の生い立ちを綴っています。非行・ドラッグ・自殺未遂と壮絶な経験と、私自身がアスペルガー発達障害であることを公表しながらです。
主に10代、20代の自己肯定感のない若者、自信のない子、虐待を受けている子達に向けて書いていたのですが意外に反響があったのです。ポツポツと相談が来るようになり、無料で相談を受けるようになりました。すると身体に障害がある子や同性愛者だったりと、相談の幅が広くなってきてしまいました。当事者として相談できる事から、ジャンルの幅が広がってきて、協会にしようと思いました。

今、学校の事で悩んでいる子たちが多く、例えば「身体に障害があるので先生に遠足に行かせてもらえなかった」とか。個人で学校に意見を言う事は出来ないけれど「協会にしたら、学校に意見できるよ」と知人の弁護士に聞いたのがきっかけでNPOを設立しました。

今回、発達障害の臨床心理士さんから、少年犯罪の弁護士さんまで、同性愛者のセラピストさんから身体に障害がある方まで、色々な当事者の方に入ってもらって、協会にする運びとなりました。私自身、ずっとボランティアでやってきまして、寄付・協賛金を募ってもっと幅広いことをカバーしていきたいという想いで立ち上げたのが協会なんです。
母親から「あんたなんか生まれてこなければ良かったのに」
小学校3年生、9歳の時、母親に「あんたなんか生まれてこなければ良かったのに」と言われた事があり、はじめて手首に包丁を当てました。それからいじめにあったり、非行に走ったり、ドラッグをしたり、何度も死にたいと思いました。

私自身があの当時、分かってくれる大人がいたり、居場所があったら、ここまで時間がかからなかったかな、という想いがあります。もっと早く気づけば、もっと早く変われたのかと思います。家庭に居場所のない若者たちは、寄り添ってくれる大人や自分の居場所、居場所探しをしているんですその゙居場所゙をつくろうというのが今回の活動のきっかけなんです。
大人に心を開かない。
少年院から出てきた少女を変えた一言とは
岡田さん:私には2年前から、子ども達と一緒に暮らしている養女がいます。ドラッグを使用した経験から少年院に入っていました。少年院を出て、初対面で「大人には絶対に心を開きません」という状態でした。でも、会ったその日に私に心を開いてくれたんです。

江成さん:それはすごい!どんな言葉をかけたのでしょう?

岡田さん:自分がかけてほしい言葉を彼女にかけただけなんです。会ったその日、彼女とお茶をしながら「今まで生きててくれて、ありがとうね。よく頑張ったね。」と言ったら、うわーっとその場で号泣して泣き出してしまったんです。そしたら、彼女が「まだ泣けたんだ、私」とずっと泣いていなかった事にも気づいたそうです。数時間泣き続けました。今まで誰にも言われた事がないんだと分かりました。

今では、友人や親戚の人達に「お前が笑ってるなんて信じられない」と言われたそうです。
「死にたい」は「生きたい」、SOSのメッセージ。
10代、20代の子達からのメールにも「ひとりじゃないよ。大丈夫、ひとりじゃないから」と伝えています。カウンセリングの基本は、依存させてはいけないと言われているのですが、私の場合「いいじゃない。今、寄りかかれば」というスタンスです。後で気づいてゆけばいいし、

今は寄りかかっていい、と。だって、ひとりで寂しいのだから。

「死にたい」というのは「生きたい」というメッセージなんです。

だから「大丈夫。ひとりじゃないよ」とひたすら言うと、みんな自然に笑顔になってやりたいことをやって笑顔になっていく。そんな場づくりをしてゆきたいと思ってきました。でもやはり社会では、学歴がないといい仕事に就けないので、これからはそういった若者の就職支援までしたいと思っています。
企業は快く、助け合いの気持ちは”社会の常識”を超えて
江成さん:就職支援は活動の一環としているんですが、日本の社会に則って就職活動をしていくと、学歴等で全部はじかれてしまうことがあるのですが、個々に企業をまわっていくと、実は意外に手を打ってくれるんですよ。シングルマザーの支援で1年半くらい活動してきて、ようやく道が見えてきました。

「シングルマザーだから雇ってもらえない」「中卒だから雇ってもらえない」「まだ子どもが小さいから雇ってもられない」と多くの人が思っていますが、実際に企業の担当者に会って「こういう人材がいます」と企業にお願いをしにいくと「うちの会社で、たくさん雇いますよ」と実際にたくさんの求人を頂けるんです。協会では、それを求人情報としてメルマガで配信しています。

岡田さん:若者の場合も、中卒で少年院を出てきたり、高校中退をしたりで求人誌もウェブで求人を見ても全て高卒以上、専門卒、大卒以上となっていて、最初からはじかれてしまうのです。けれども知人で経営者の方が「うちの会社、中卒でもやる気あるならいいよ」という方もいらっしゃって。企業側との橋渡しが出来る、そんな支援も考えています。そこで必要なスキルはきちんとつける、そんな協会にしてゆきたいと。

江成さん:私もそう思います。多くの企業の協力に、世の中捨てたもんじゃない、って思いますね。でも、国がもう少しやってくれたらもうちょっと色々と事が早く進むな、ということは想いはあります。

岡田さん:私も時々、岡田さんのやることは本来、国がやる事ですよね?なんて言われます。
民間で動き、国を変えてゆく力に。
江成さん:でも、国に期待をするより、まずは一般企業や民間で動くしかないと思っています。協会を立ち上げて、費用面の自己負担もあり、大変な事もあります。その状態のままでは持続できないから、支援活動とビジネスの融合を考えているんです。今は、民間企業の方に動くパワーを感じているんですが、国も変わらないと自立できる人がきちんと育たず、さらに依存を生んでしまうと考えています。例えば、民主導で民と官が一緒になって整備が出来たら理想です。
イクメンの役割「子育てのママの精神的な支えになること」
シングルマザーを取り巻く環境については、いかがでしょう?
江成さん:シングルマザーが働く環境については、”子育てのしやすい社会かどうか”、そして”女性が活躍できる場かどうか”、この2つの視点を持っているんですが、子育てをしながら働ける環境が全く整っていないのです。20歳の次女に子どもがいるんですが、孫ですね(笑)。2年連続で保育園に落ちてしまい、これでは次女は働けず、家計も一部支えなければならず「一体どうするの?」というところまで来ています。

あと、男性が子育てを知らないのです。子育ての大変さを男性が知らない。泣いたから抱っこをしたり、お風呂にいれたり、オムツを替えたりということは誰にでも分かります。母親の受ける精神的な部分、そこを助けられるのは父親しかいないと私は思うんですね。

「イクメン」という言葉がありますが、父親が単に子どもの面倒を見ることではなくて、お母さんを心から愛して大切にする事だと私は思っています。そうするとお母さんもパワーが出るし、女性としても輝いて、母親としても輝いて子どもに笑顔で接する事が出来て、その子どもは自己肯定感のある、愛情たっぷりの子どもに育つと思います。
子育ての中でも”自分の時間”を持つことはとても大切
Q:では、旦那さんのいない、シングルマザーはどうしたら良いのでしょうか?
江成さん:シングルマザーの場合はそれが社会になりますね。子育てをひとりでしなければならないから、社会の仕組みが出来上がらないと難しいのではないかと思います。保育園も勤務時間の問題があったり、子どもの病気の問題もあったりと、あたりをクリアできるような働き方、というのを根本から変えていく必要があります。あと、自分の時間を持つことはとても大切で、心のケアにも繋がります。
日本では子どもをおいて外出するだけで批判されますよね。子どもがいるから、家にいなければいけない、とか・・・。恋人もいてはダメ、という声もあります。それで働かなければいけない、稼がなきゃいけない、と自由もなくなり精神的に追い詰められていく。けれど、自分がリフレッシュしなければいけないと考えます。エステでも旅行でも。社会にそういった時間を持てる仕組みも必要だと思います。夫婦の時間、シングルマザーならひとりの時間を持つことが必要です。

他国では、そういったことが制度の中にも組込まれています。時には自分の時間を持つことの大切さを分かっているから。それに子どもを見てくれて、安心・安全な場所がちゃんと社会に用意されています。
貧困は就労によって抜け出す支援を、目標年収は「300万円」
Q:ひとり親の貧困問題がクローズアップされることが多くなりました。
江成さん:シングルマザーの就労での平均年収は180万円と言われています。日本の雇用構造の問題がありますね。出産を経て正規雇用の職を継続就労しにくい雇用環境があるのと、働いても収入が生活保護以下になってしまったり、シングルマザーはハイリスクだとそもそも雇わない傾向にあります。さらに日本は20年前と比べると、当時の所得と今の所得が並んだのに、学費は倍かかる事になりました。それは貧困層に大きな打撃があり、シングルマザーはまさにこの問題に直面しています。

年収が低いのに学費はもの凄くかかるという現状ですが、海外から見ると、子育てや女性にあまりにもお金を使わない国で日本は有名なようです(苦笑)。

OECDの事務総長が「日本加盟50周年記念シンポジウム」で、日本の女性の働き方について労働参加率が低いこと、賃金が男性と比べて27%低いこと、非正規雇用の約7割が女性であること、労働環境が男性に有利になるようにつくられている上に、介護の問題も女性が看るようになる、こうした日本の在り方に改善を求めたそうです。

岡田さん:活動をしていくと、国を変える、ということに問題にぶつかりますよね。

江成さん:協会では、会員さんの年収をまず、300万円を目標にしています。300万円あればなんとか学費も、という状況ですが余裕があるという訳ではないのです。現状では、子育てをしながら300万円というのは意外に大変なんです。

もし、もう少し費用があれば自らも会社を作ってシングルマザーを雇いますね。その中で常に何が出来るかを考えています。民間企業レベルで何が出来るか。意外と熱い想いを持つ人が多いな、と捨てたもんじゃない、ということを企業側に凄く感じています。年収が高くなって、生活が変わったといった実例をもっと色んな人に見せてゆきたいと考えています。
子どもの未来に妥協しない、「泣き寝入りしない」こと。
江成さん:私の次女の子どもは、もう3年続きで待機児童のままなんです。苦肉の策と、今年は市役所に行き「夫婦共働きなので娘を一人、家においていきます」と言ったのです。すると役所がようやく動き始めたクレーマーでも、そういう行動をとった人には動いてくれるようです。だから泣き寝入りしてはいけないのです。
Q:若者を取り巻く環境についてはいかがでしょうか?
岡田さん:若者の居場所が無いのです。家にも社会でも。私たちの頃はもっと自由だったと思います。だんだん規制というか、窮屈なルールがどんどん増えてきました。

それで「今の若者は・・・」と叩く大人が多い。ハロウィンの日を例に挙げると、電車の中であの日は普通なら喧嘩になるような金髪同士の若い男の子が「それ、自分でやったんですか?すごいですね」と言ったりみんなが友達になれる日でした。六本木で写真をとってあげたら、お互いでお礼も言えるし、確かにルールがなっていない子もいますが、ハロウィンという事にかこつけて、みんなで遊びたいだけなのです。だけれども「日本では意味の無いハロウィンなどをして若者たちは」と叩く。学校もゆとり教育になってみたり止めてみたり、大人の都合に若者も子どもが振回されているように思うのです。
”寄り添い、共にいる”、若者の存在を受け容れて。
家庭でも、自己肯定感のない親が多いと見受けられます。虐待はもちろんですが、よくある相談が、両親が厳しくて、子どもがその厳しさに耐えられず、リストカット・ひきこもり・夜遊びに走っていくという相談が多いのです。片親という理由だけではなく、両親の教育に窮屈さを覚えるようです。すると、家でも居場所が無い、社会でも居場所が無い、遊ぼうと思ってもあちらこちらで規制がある、と。

少年院から出てきた、私の養子となった少女が笑顔を取り戻せたのも、何をしたという訳でなく寄り添ってあげただけなのです。とてもいい子なのに、家庭の環境でそうなってしまう、そういう子たちがたくさんいます。

でも、それを拾い上げられる、助けてあげられる場所がどこにもないのです。逆に魔の手はたくさんある。歌舞伎町に行けば、ドラッグ漬けにされて、売春させられる・・・。

落ちてゆける場所はどこにでもあるのです。ある若者がタクシーで、覚せい剤を見せられて運転手に「良かったら連絡ちょうだい」と言われたそうです。お客探しをしているんです。

魔の手、悪い方への引く手はあるのに、救う場がない。売春にしても、大人が若い子を誘いこむんです。例えば、ある少女が若い女の子の有名な某雑誌の編集長に呼ばれて、行くとアダルトビデオの出演のお誘いでした。そういう場所はあるのに、気持ちを救いあげられる場がなさ過ぎる、それで今回そういったことをやりたいと思った訳です。血の通っていないような援助では本当の支援は出来ないので、当事者だから出来る、寄り添ってあげられる支援をしたいと。一緒に住む少女の友達が悩んでいるときも「少年院で会ったようなカウンセラーじゃないよ、ぜひママに会って」という養女の一言で私に会いにきました。

若者をただ責めるのではなく、寄り添って”ともにいる”。そんな支援をしています。
自分を肯定できれば、他人を認められる
江成さん:責める事ばかりしている人は世の中自体に肯定感がないんです。自分を守る為に人のせいにしているんです。その人を認めると、自分が否定されている気になるようです。自分の考え以外の物を全否定して、自分を守っている傾向にあります。他人を認める、そんな訓練が必要です。

岡田さん:私のマナー講座でも、自己肯定感について話しています。この世は鏡というのはまさにそうで、相手のありのままを受け容れられないのは、自分のありのままを認められないのです。相手を尊重してありのままを認められないのは結局、自分はこうでなければならない、ここが足りないからここを埋めなきゃ、というように自分のありのままを受け容れられないから、そうなってしまう。
江成さん:自己肯定感が高い人は、他人を認められるのです。親に自己肯定感がきちんとあれば、子どものことを信じられるのだとも思います。

岡田さん:最近、母親から立て続けにきている相談が、「うちの子が夜遊びをするんです。どうしたらいいのでしょう?」という相談です。

「家に居場所が無いからですよね?家に居場所があったら居心地が良かったら家にいますよね」と伝えると、今度は「嘘をついて出かけるんです」と言う。「だって本当のことを言ったら、怒るからですよね?」と。話が噛み合わないんです。

自分が出来たことを子どもにさせる、と強制する親も多いのです。

つい最近もあったんですが、ある母親が「私はお母さんが厳しかったけれど、認められようと勉強も頑張ってきたし、人一倍頑張ってきたんです」と。「私の時には門限4時だったのに、娘の門限は8時にしているのに、なぜそれが娘には出来ないのか」と私に同意を求めてくるのです。

江成さん:躾とルールを教えるのは違いますよね。

岡田さん:自分の理想の子どもになってほしいようで、子どもを信じようともしない。
自分の理想像から外れると「なぜそんなことするの」と。だから子どもに裏切られるんです。
パターンはいろいろありますが、抑圧で夜遊びをしたり非行に走ったり、という子がいますね。
若者を取り巻く環境というのは、家庭環境と社会的環境が大きいのですが、あまり良いようには思えません。
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