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■ 東京ウーマンレポート


[W.I.Nで出会った素敵な人]~Anita Pratapさんの場合~

W.I.Nで出会った素敵な人

Anita Pratap さん
ジャーナリスト
第二次世界大戦の荒廃を乗り越えた日本。
新たに未来に向かい、日本を変革するための男女の役割とは?
Anitaさんは駐日ノルウェー大使夫人として4年間と言う歳月を日本で過ごされました。この経験をもとに、日本女性あるいは日本社会に対する率直な感想やメッセージをいただけますか?
ノルウェー外務省に勤務している夫と共に今まで数多くの国に赴任し、生活して来ましたが、その中でも日本は私にとって最も感銘を受けた国と言えます。

礼儀作法、相手の立場を思いやる細やかな心遣い、勤勉さ、そのどれを取っても世界の人たちが見習わなければならない美徳が日本社会には満ち溢れていると感じました。

ただ外交官夫人と言う立場を離れて日本の友人と語ったりする際、それは私が外側から見る日本の美で有り、そうした社会の秩序を保つために日本国民はそれなりの犠牲を払っているのかも知れないとふと感じたりした事もあります。

又、世界では、日本は「男社会」で殆どの女性が男性に従わなければならない弱い存在と言う印象を持たれている方が多いようですが、私が日本滞在期間に自分の目で見た日本女性、あるいは社会は、それとは多少異なる面が有ります。まず、様々なお付き合いを通して日本女性は自分の意見を持たず、男性に従うだけの弱い存在では無いと気付きました。

例えば、職場での立場は別にして、女性は経済の面からも家庭を100%コントロールしています。つまり強さを表現する場所と仕方、あるいは役割分担が違うだけで、実際にはもっとやわらかい形でしっかりと自己主張していると思います。

ただ、必ずしも女性のそうした社会へのかかわり方がベストと言っている訳ではなく、人口が減少し、少子化問題に直面していると言う現在の社会的な現実の中で、これからの日本は女性の社会への参画を含め、否が応でも社会的なシステムを変えていかなければならない過渡期に来ているのだと思います。
では今後、日本はどのような形で変わっていくと思いますか?
日本が第二次世界大戦の荒廃を乗り越え、劇的な経済発展を遂げたと言う事実は世界中の誰もが知る「驚き」ですが、そこに至る過程の中で、多分「男性は仕事、女性は子供を育て家庭を守る。」と言う社会的な役割分担システムを構築する事が、急速且つ、効果的な経済的発展を遂げるには必要不可欠な要素だったのだと思います。

でも戦後60年の歳月を経た現在、社会的状況の変化の中で先ほども申し上げたように日本も変換の過渡期を迎え、いよいよそうした役割分担的な社会のしくみを崩さなければならない時期に来ているのだと思います。日本の女性は世界的に見てもかなり高い教育水準を持ち合わせていますし、これから先、女性たちが日本の経済発展に貢献する大きな礎となるのは間違いないものと確信しています。

ただ、そうした変化を男性がどのように受け入れ、「母、妻、社会人」の三役を担う女性をいかに支えて行くかと言う事が今後の日本社会の変革への大きな鍵になるのだと思います。サイエンスの分野でもロボット研究に抜きんでている日本が労働力の一員としてロボットを適用するような画期的な方法も考えられますしね。
インドの国政選挙へ立候補!
政治という全く新しい領域へチャレンジする、使命感
今回インドの選挙に立候補されたと伺っていますが、全く新しい挑戦に立ち向かう決心をされた事について、その経緯をお話して頂けますか?
私は幼いころから医者になりたいと思い、それを目標に学業にも励んで来たのですが、残念ながら諸々の事情からその夢を断念し、何故か自分のライフプランの中にはなかった「ジャーナリスト」の道を選ぶ事になりました。当初は医者の道に進む事が出来なかった自分の運命を嘆いたりした事もありましたが、仕事を続けているうちに徐々にジャーナリストとしての仕事に生きがいと誇りを感じるようになって来ました。

何故ならジャーナリストは様々な社会的な問題や困難を提起し、広く世界にメッセージを送る事が出来る貴重な仕事だと気がついて来たからです。ある僻地の取材で子供や女性を含める弱者が悲惨な状況に陥り、苦境に立っている姿を目前にして、私はジャーナリストとしての立場を超え、同じ女性、子供を持つ母親の立場として世界の読者に向けて記事を発信しました。

そしてその記事が人々の心を打ち、ジャーナリストとして栄誉ある賞を受賞する事になりました。世界の悲惨な現実を知らせる事がジャーナリストとしての自分の使命と実感した、自分にとっても貴重な、そして初めての体験でした。

その当時から私はどちらかと言うと政治には無関心と言うか、常に距離を置いて接して来たように思いますが、約30年間に渡るジャーナリスト活動を経た今も尚、私は心のどこか片隅でいつも弱者の立場に立ち、弱者の声を外に向けて発信しなければならないと言う使命感のような想いを持ち続けて来たような気がします。

そして2013年9月、本命候補とは全く目されていないArm Aadmi Partyを率いるArvind Kejriwal氏のTV施政演説を耳にした時、彼の政治的洞察力の素晴らしさ、聡明さ、静かなほほ笑みの中に秘められた信念のようなものに感銘を受け、Kejriwal氏と共に今回の選挙戦を闘う決心に至ったと言う訳です。

ですから今回の選挙立候補は、私にとって自然の流れの中で訪れた必然の機会であり、迷うことなくそのチャレンジに挑戦する道を選んだと言うのが、立候補に至るまでのかいつまんだ経緯です。
その結果は?
マイノリティーの立場で立候補した訳ですから、残念ながら選挙には勝つ事は出来ませんでしたが、選挙活動を通して私なりのメッセージを発信し、それなりの役目は果たしたのではないかと自負しています。これから先、インドをより住みよい社会にする為に若者たちが私と同じようなメッセージを社会に向けて発信し続ける事が大切なのではないかと思います。
「子供の心」を持ち続けることで・
素晴らしいメッセージを有難うございます。最後に趣味を含め、ご自身について少し語って頂けますか?
そうですね。強いて自分について語るとすれば、私は年齢に関わらず、いつも心の奥底に「子供の心」を持ち続けていて、そうした純真無垢な気持ちが常に私の人生に活力を与えてくれているのだと思います。更に言えば、多分私はそうした自分が好きなのだと思います。

趣味は「読書」「物を書く事」「散策」ですが、日本で暮らしている頃はメインストリートを一歩中に入ると感じられる、ビルの谷間に潜む「都会の静寂」に魅了され、そうした空間の静けさが、私の「書く」と言う創作意欲を掻き立ててくれたのを覚えています。多分自分は、「書く」為に存在しているのだと深く実感させてくれる瞬間だったのだと思います。
有難うございました。また、2015年4月東京で開催予定のWIN Japan、または10月ヨーロッパの一都市(まだ未定)で開催されるWIN Internationalでお会い出来るのを楽しみにしています。
私もまた、日本に行ける事を楽しみにしているわ。
Anita Pratap さん
CNN南アジア支局長を皮切りに中近東、ヨーロッパ、アメリカをベースにフリーランスとしてジャーナリスト活動を続ける。現在は、タイム誌への寄稿、United Nationsでのスピーカー、ドキュメンタリー・フィルム制作などを通して幅広いジャーナリスト活動を繰り広げている。“Taliban takeover of Kabul” でAmerican George Polk Award を受賞。 「Island of Blood」(Penguin Books (August 26, 2003)を出版し、ベストセラーとなる。
FB:https://www.facebook.com/AAPAnitaPratap
仏教の道に通ずる「中庸」と「静けさ」を持ちながら、邪気の無い幼児が放つような燦々としたエネルギーを発信するAnitaさんの魅力につい引き込まれ、予定時間を上回り延々と続いたインタビューでした。

思えば、2014年は当時駐日ノルウェー大使夫人として日本に滞在していらしたAnitaにお願いし、1月14日、ノルウェー大使公邸で開催した「川畠成道チャリティー・コンサート」で幕を開けた一年でしたが、その時の彼女のチャリティーに対する強い思いと支援、更に何よりも優しい心遣いと素敵な笑顔が今でも素晴らしい思い出として私の心の中に残っています。

そして、それ以来彼女とは一緒にお茶を飲みながら政治経済を含め、様々な話題について語るお友達付き合いをさせて頂きましたが、今回ベルリンで再会し、インタビューをさせて頂いた中で彼女がふと口にした「I exist because I write(私は書く為にこの世に存在している!)」という言葉に非常に共感しました。

お付き合いする年月に関係なく、Anitaは多分私にとって必然性を持って巡り合った「Soul Mate (魂の友)」のような存在の女性なのだと思います。
WIN後記

2014年10月1日~4日に渡り“Magnificent Leap of Change(素晴らしく躍進する変化)” をテーマに掲げて開催された「第17回WIN Global Conference」は世界各国から800名近くの参加者を迎え、ベルリン・インターコンチネンタルホテルで幕を開けた。

今までWIN Global Conferenceに 10回以上の参加を重ねている私が直接肌で感じた大きな変化を挙げるとすると、その一つが日系企業「大塚ヨーロッパ」がブロンズスポンサーとしてメインスポンサーの一角を担った事、もう一つがオープニングからクロージングまで、日本から来ている女性4人グループ・バンド「Harp & Soul」が聴衆に溶け込み、その舞台を華やかに飾ったと言う事!

ヨーロッパやアメリカを拠点に仕事をし、WIN Berlinに参加している日本女性を除いて、遠く日本から参加している日本人は恐らく私ただ一人、そんな私にとってこの二つの「Japan」はとても心強い仲間で有り、どこか心の片隅で誇らしげな思いがしたのを覚えている。

その中で、Ms. Anita Pratap (ジャーナリスト・元駐日ノルウェー大使夫人)は、「WIN Award」女性の一人として表彰され、檀上で発したAnitaのメッセージ、「我が人生に悔いなし」が印象深く残っている。その輝くような満面の笑みに何故か圧倒されるような想いがしたのだ。

「将に人生楽しんだ者勝ち!」のお手本のような光景が未だに目に焼き付いて離れない。
賀陽 輝代
ライフスタイルコーディネーター
CA州 Willis Girls’ College卒。アメリカ大使館、外資系企業の秘書として働き、またファッション、化粧品などのPR広報経験を積み、その後英国人と結婚、1児を設ける。結婚後会社を設立、貿易、PR、マーケティング・コンサルティング業務に携わり、海外の情報、文化及び、珍しい商品などを幅広く日本のメディアや代理店に紹介し、日本と海外の情報・文化の橋渡し的な役割を務める。故君島一郎オートクチュール・デザイナーの海外広報コンサルタントとしてフランスを初め、中国、インド、シンガポールなどでコレクションやファションセミナー開催の立ち上げに携わる。 世界17カ国に拠点を持つ「ワールド・チルドレンズ・ファンド・(世界子供基金)」の日本代表