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■ 東京ウーマンレポート


2014年5月27日『USJC-ACCJ ウィメン・イン・ビジネス・サミット』レポート

2014年5月27日
『USJC-ACCJ ウィメン・イン・ビジネス・サミット』
レポート

「これまで色々な女性サミットに出てきたけれど、こんなに全てがクオリティ高いのは珍しいですよね」。参加した民間企業の女性役員は興奮気味に語る。

5月27日、東京ANAインターコンチネンタルホテルで行われた、米日カウンシル (USJC)と在日米国商工会議所 (ACCJ) 共催の「ウィメン・イン・ビジネス・サミット」。

この日、各分野の女性リーダーや民間で活躍する女性たち740人が一堂に会し、日本で働く女性の地位向上のため、講演やディスカッション、ワークショップ等が行われた。
テーマは「ウィメノミクス:経済成長のエンジン」
サミットの開催は今回で2回目を数える。スペシャルゲストには、ケネディ駐日米国大使、そして、ギリギリまで調整がなされ、プログラムにも名前の記載がなかった安倍総理大臣が会場に現れると、参加者からはどよめきが起こった。

安倍首相は、アベノミクスの柱の一つとしている女性活用について、待機児童の解消や学童保育の充実など、具体的な数値目標を挙げて力強く女性達にメッセージを送った。

また、ケネディ大使も、「国のトップがこの(女性の)問題に力を入れています。これが日本の将来にとって死活的に重要な問題であることが広く認識されており、また歴史の流れを変えることに熱心な世代の女性たち、すなわち皆さんがいます。初めての女性駐日米国大使として、私も変革のシンボルであることを承知しています」と述べ、日本の変革の動きへの認識と理解を示した。

また、東京ウーマンのインタビューに答えてくれた在日米国商工会議所のジェイ・ポナゼッキ会頭も、アベノミクスにおいて、ウィメノミクスが持続的な日本の経済成長を促進していく重要な要因として語られるようになったことは喜ばしいとの考えを示し、「本サミットが、議論だけではなく実際の行動を起こすきっかけとなることを願っています」と述べ、今後、日本の働く女性の地位向上と、働く男性・女性を支援する一貫したシステムの構築に関する実践的な解決を提案することを誓った。そして、ポナゼッキ会頭は、ロールモデルの重要性についても言及した。
『サミットに参加していた多くの女性達が口にしていたのが『ロールモデルの不在』です。でも、考えてもみて下さい。私たちの周りにはロールモデルになりうる人々が数多く存在するのです。私がキャリアをスタートさせた時、上級職の女性はオフィスにたった2人しかいませんでした。そして、彼女たちの働き方や働いている内容は私とは全く違ったものでした。だから、私はロールモデルを同じ職場にいる男性や、クライアント、または、他の職業の人たちから見つけたんです。そう、ロールモデルは同性でなくてもいいのです。同じ職種でなくても構いません。また同じ会社である必要もないと思います。』

また、サミットでは、ダウ・ケミカル日本のジェニングス代表取締役社長や、メットライフアリコのシャー会長 社長 最高経営責任者などが出席する、企業リーダーたちが父親としてディスカッションしあう「お父さんとの会話」や、トイザラス アジア・パシフィックのメルツ社長、日産自動車の志賀副会長ら、実際に女性に関する企業変革を行ってきたCEOたちがご自身の経験談をシェアする「リーダーとロールモデル」などの多くの分科会が開かれ、会場はそれぞれ立ち見が出る程の賑わいを見せた。

そんな中、キャリアをいったん離れて復帰を果たした女性リーダーたちが成功体験を語る「キャリアを離れ私生活へ/キャリアパスへの復帰」という分科会のパネリストの一人、アフラック執行役員 インターナル・オーディット・オフィサーの久保理子氏にお話を伺うことができた。
久保氏自身は、夫の海外転勤を機にいったんアフラックを退職し、帰国後に契約社員として再入社。日本における代表者のアシスタントを務めていたが、2001年に内部監査部に異動、2002年に正社員になった。その後、2006年から内部監査部長、2012年には執行役員に就任というシンデレラストーリーを持つ女性である。

久保氏はいう。
『私は一回会社を辞めて、キャリアとしては数年のブランクがある。いわば「マイナス」からの出発だったので、失敗を恐れるよりも、自分ならではのことをやればいいと、単純に「プラス」に考えられるようになったのが結果的によかった。』

女性はライフイベントなどによってキャリアを中断することが多いが、それを「マイナス」と思いがち。キャリアへの考え方も既成概念にとらわれてしまうきらいがある。久保氏は「完璧主義にならないことが大切」と語る。
自分自身でハードルを上げてしまったり、あらかじめ計画を立て過ぎてしまうと、足りないことや、出来ないことに目や意識が向いてしまう。職場を離れたことで得られる「プラス」もあるはずで、「足し算」での考えが必要という。

そして、その考え方に辿り着くには、ポジティブ思考の上司や同僚に恵まれたこと が大変役に立ったと振り返る。女性の働き方をはじめ、生き方、そして、活用の仕方や育成の仕方は様々だ。そこには解答というものはない。

ただ、だからこそ、自分に合った、企業に合った、そして、人に合わせたやり方を模索していくしかない。それでも、参加者たちはこのサミットを通じ、既に成功の道をゆく講演者たちから示唆に富む多くのヒントを得たに違いない。

女性をテーマとしたこのイベントは、アメリカでの女性解放運動のきっかけとなったセネカ・フォールズ会議にヒントを得て企画されたものである。

このサミットが日本のセネカ・フォールズになれたのか。今後、日本の女性達の真の活躍が期待される。
谷本 有香
経済キャスター/ジャーナリスト
山一證券、Bloomberg TVで経済アンカーを務めたのち、米国MBA留学。その後は、 日経CNBCで経済キャスターとして従事。CNBCでは女性初の経済コメンテーターに。 英ブレア元首相、マイケル・サンデル教授の独占インタビューを含め、ハワード・ シュルツスターバックス会長兼CEO、ノーベル経済学者ポール・クルーグマン教授、 マイケル・ポーターハーバード大学教授、ジム・ロジャーズ氏など、世界の大物著名 人たちへのインタビューは1000人を超える。 自身が企画・構成・出演を担当した「ザ・経済闘論×日経ヴェリタス~漂流する円・ 戦略なきニッポンの行方~」は日経映像2010年度年間優秀賞を受賞、また、同じ く企画・構成・出演を担当した「緊急スペシャル リーマン経営破たん」は日経CNBC 社長賞を受賞。 W.I.N.日本イベントでは非公式を含め初回より3回ともファシリテー ターを務める。 2014年5月 北京大学外資企業EMBA 修了。現在、テレビ朝日「サンデースクランブル」ゲストコメンテーターとして出演中
http://www.yukatanimoto.com/
衣装協力(谷本有香氏):Otto, オットージャパン
撮影協力:竹内佑