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■ 東京ウーマンインタビュー


日本初の女性医療トータルサポートクリニック理事長の言葉とは

50代になって生き方が変わった!
日本初の女性医療トータルサポートクリニック理事長の言葉とは

関口 由紀さん
女性医療クリニックLUNAグループ理事長
関口先生は女性泌尿器科と骨盤底障害を専門に診療され、実にたくさんの雑誌やテレビにご出演されています。国内ではまだ珍しい専門科と考えますが、どういった経緯でこの女性泌尿器科を選ばれたのでしょうか?
元々、何でも隙間を狙うタイプだったので、私が泌尿器科医になろうと思った当時は、女性の泌尿器科医は全国で100人程しかおらず、現在でも400人程しかいません。ですので、競争相手が少ない方が仕事になりやすいだろうと考えて選択しました。

おかげさまで開業から4?5年は宣伝広告費を一切使わずに、口コミとメディアからの取材だけで経営することができました。今は美容医療など事業を拡大したため、多少の広告費は掛けています。
なるほど、しっかりビジネスの目線から、あえて珍しい専門医療を選択されたのですね。ただ、医師は専門職ですし、10代で決断して進路を決めないとなれません。子どもの頃から医師になりたかったのですか?
私の実家は商店を営み、夫婦共働きの環境で育ちました。今思えば、父なりにも仕事をしていたと思うのですが、子供のときの私の目には、父より母の方がよく働いているのに、父はいつも母に対して威張っていて。子供心に自分がそんな夫婦関係にならないようにするには、手に職をつけねばといった発想からの選択でした。ただ、今はこの仕事を自分の天職だとすごく実感しています。
自立の手段として医師を選ばれたのですね。実際、そういった理由からお仕事を選択されて、関口先生の旦那様との夫婦関係はいかがですか?
夫は単身赴任歴20年で、土日だけ帰ってきます。性格は、自分でも前世はイタリア人だったと言うほど、仕事より家庭というタイプ。私が元気で、ガンガン仕事をしている今は、夫婦仲はいいと思います。問題は、夫が定年して、私もリタイアして、いっしょに長くいる時間が増える10年後以降でしょうね。マジ心配です(笑)。
珍しい専門医療を選んだのは、初めから開業も視野にいれていたのですか?
いえ、泌尿器科医を選んだ当時は、開業しようなんて全く考えていませんでした。実はあるクリニックの女性フロアを、フロアマネージャーとして任せてもらえるという話があり、よし、やろうと話を進めていたのですが、どんどん話が進んでいくうちに残念ながらそのクリニックと私の女性医療に対する考え方が、大きくズレてる事が分かりました。

これでは私のやりたい女性医療が実現できないと断念。しかし、その頃には既に、フロアで勤めていただくために、わざわざ前職を辞めてくださっている方々もいたので、これはしょうがないと腹を決めて私が院長となり、開業する道を選びました。

今となっては、当時声をかけてくださったクリニックさんにとても感謝しています。自分がトップとして責任を持って経営してきて、結果として患者さんにも良いサービスを考え、提供できているのではないかと思います。
フロアマネージャーになろうとしていたら開業ですか。急に開業することになり、不安はありませんでしたか?
不安はあったんじゃないかな。というのは、水疱瘡は以前経験していて免疫はあるはずなのに、開業した月に水疱瘡になり、開業半年目には、乳がんが見つかりました。腫瘍免疫が相当下がっていたのは、やはり大きなストレスがかっていたんじゃないかと。乳がんになった時は、2ヶ月ほど休まなければならず、支えてくれた開業時のメンバーにはとても感謝しています。

ただ、体の不調の苦労はありましたが、経営の方は開業前に複数の病院で300人ほど担当していて、その患者さんが引き続き来てくれたので幸い開業から黒字で、有り難い事に開業後の10年間で赤字だった年は1度だけでした。
素晴らしい経営実績ですね。しかも現在では、3つのクリニックで4つの施設を経営するまでに事業をどんどん拡大されていらっしゃいます。
はい。1つめは婦人科、2つめは女性内科・漢方内科、3つめは女性泌尿器科と骨盤底のリハビリテーションを行うクリニック、4つめはメディカルビューティーセンターといって、美容皮膚の治療を行うフロアです。同じビル内の女性泌尿器科が2階、美容皮膚科が1階で、私が両フロアの責任者を務めています。

設立時に達成したいと決めていた目標を達成できたので、来年度は大阪出店を考えています。達成したかった目標というのは、女性医療、女性検診、骨盤底トータルサポートと、アンチエイジングと美容医療という5つの分野を統合したトータルクリニックを創るということです。それを達成した現在は、それぞれのクリニックの充実に徹しています。もちろん大阪も同じコンセプトで頑張りたいと思っています。
次は大阪出店ですか。そのバイタリティーの源は何でしょう?
うーん、何でしょうね。そう言われると自分ではよく分からないのですが、たぶん目立ちたいという気持ちかな(笑)。医者という業種のなかで、自分の生き甲斐を感じたり、生き様や個性をできるだけ出したいと思っています。

そういう想いで、その場その場で楽しいなと思うことをしている。その結果、楽しいと思うことをやって、結果的に自分が苦しいということもあるけど、あまり他人の言葉に左右されず、自分の意思を大事にしていることがバイタリティーの源かも。自分で決めて始めたことだから、苦しくても仕方がないと思えるんでしょうね。振り返ってみれば、こうするべくして産まれてきたのだと、やはり今の仕事を天職だと感じています。
「天職」と感じ、心からやりたいと思った事に従事されているから、どんどん活力が湧いてくるのですね!開業されて5年目に、日本大学グローバルビジネス研究科の経営学修士(MBA)を取得されていますが、開業されて一番忙しい時に、どうして勉強しようと思ったのでしょう?大変だったと思いますが。
実は、開業した時もまだ大学院生で、医学部の教授にすごく怒られました。忙しかったり、病気したりで留年を繰り返していて、開業4年目の時にやっとの思いで医学部の学位がとれたんです。実は医学部での実験授業は苦手で。逆に経営学はずっと興味があり学んでみたいと思っていたので、平日の仕事後の夜間と土日は大学院で学ぶといった、全く休みのない生活でしたが、経営学を学びながら過ごした2年間はとても楽しいと感じた記憶があります。
関口さんにはお子さんが二人いらっしゃると伺っていますが、当時、すでにお子さんもいらっしゃったのですか?
はい。29歳と37歳の時に産みまして、経営学を学んでいた時は、下は8?9歳、上は14?15歳でした。幸い、実母と妹が一緒に育児をしてくれたので助かりました。ですので我が家では、産みの母である私と、育ての母である実母、遊びの母である妹と、母は3人いると言われていましたよ。 あと、保育園も産後3?4ヶ月から利用しました。
仕事、学業、母親、妻をこなす多忙な毎日を、どのようにリフレッシュされているのでしょう?
あまり休みはとれないのですが、1年程前から、週に2回、筋トレの個人レッスンを受けています。後は週に1回を目標に夫と社交ダンスを習い始めました。私が行こうと誘って、夫はイヤイヤ一緒に付いてきてくれるといった感じでしたが、最近は、ダンスシューズを履いてのダンスレッスンは頭を使うし楽しいね、と二人で楽しんで習っています。

あと、昔から全国各地で開催される学会には積極的に参加しています。昔は頻繁に学会に参加する代わりに冬休みや夏休みは取らなかったのですが、最近はお休みを取るようにしています。
すごい!ずっと休みなしでお仕事されてきたのですか。体は大丈夫ですか?
そうですね、45歳までは全く休まなかったので、体調は悪かったと思います。結婚して子供を育て、仕事もきっちり時間がとられる分、やはり常に疲れている感じがして、土日は家で寝ていましたね。当時は気づかなかったのですが、思い返してみれば、「仕方がない。自分がやらなければいけない」という気持ちが先行して、そんなにウキウキ心楽しい状態で常にいられる感じるでもなかったですね。50代の今の方が、ラクになり、心から楽しいな?と感じられるようになりました。
50代になり、考え方や生き方も変わったと。
そうですね、昔の方が頑張っていました。今は頑張っていません(笑)。今は、「頑張っていない」ということが駄目と思わず、「しょうがない」と思えるようになりました。50代になって、人生は決して思い通りにはならないということが十分にわかったので、人生はまっすぐに進まないということを受け入れて、トラブルが起きたときに、その障害をすり抜ける過程を楽しもうと思えるようになりました。今までの人生で様々なことが起こりましたが、乗り越えられてきたことで自信になっているのだと思います。

また、こんな風に考えられるようになったのは、家族の支えも大きいと思います。実はこう見えても周期的にうつ病を繰り返していて、家族は、私がそろそろ元気が無いなとか、元気が出てきたなとか、私の変化をそばで理解し、付き合ってくれています。職場では見せませんが、プライベートではアップダウンしている私を家族が理解し、支えてくれているというのは大きいですね。

あとは、男性の好みが変わりました。昔は、男性は見た目が大事だと思っていて、正直、夫も見た目で選んだところがありますが、50代になってみると昔のハンサムな彼はいなくなっていて、見るも無惨な姿になってしまったんですね。それでも私は彼と変わらず夫婦でいます。最近は、パートナーは見た目ではなく、性格が大事だなと思うようになりました(笑)。
ありがとうございます、私も勉強になります。長年に渡り女性医療と向き合うなかで、現代女性の健康状態についてどう思われますか?
45歳という年齢までは、女性の健康維持は楽だと思います。というのは、45歳を過ぎた頃、更年期の入り口にさしかかり、そこで初めて自分の体力の限界を知って、生き方を変える女性が多いです。ただ、現代女性の平均寿命は86.6歳ですし、健康さえ注意していれば75歳くらいまでしっかり働けると思います。不規則は女性の体に一番良くないので、決まった時間に寝て起きるという一日のリズムが大切です。

またご飯を3回食べること。それが人間の基礎である健康リズムを築きます。また私の専門分野でいうと、現代は椅子の生活になっているので、骨盤底が弱くなってきています。だから年を取って尿漏れになったり、尿意が近くなる率がより高まってきていますので、若いときから骨盤底を鍛えるトレーニングをすることをお勧めします。毎日30回ほど、肛門と膣をギューッとゆるめたりしめたり動かすとよいです。

骨盤底というのは、出産すると必ず大小関わらず傷つき、大体一時的に良くなりますが、その古傷が40歳、50歳を過ぎてきた頃に、尿漏れ、頻尿、下腹部痛、便秘などの症状で表れる方が多いです。このような症状で、生活に支障を感じる場合はクリニックを利用すると良いかと思います。
わかりました。まずは毎日30回の骨盤底トレーニングですね!現代女性が働く環境、ライフワークバランスについてはどう思われますか?
非常に難しい問題ですね。うちのクリニックでも、女性のライフワークバランスの両立に精一杯取り組んでいますが、子育て世代は労働生産性が一時的に下がってしまい、正直、経営的にいうと苦しいです。 ですので、うちのクリニックでは、解決策として4?5ヶ月は育休をとってもらい、その後はクリニックで保育士を雇用し、子どもをみてもらいながら働いていただく仕組みを設けています。

現代の日本社会では、中小企業は育休をとられてしまうと、短期的に経営が厳しくなる現実があると思います。つまり、現在の日本社会の仕組みでは、働きながら子供を産みたい女性は、育休で起こる瞬間的な減益を、その前後の期間の働きで賄える労働者であってほしいと期待されているということです。そうでなければ、企業の経営は現実的に成り立ちえず、赤字が続いてしまうと、経営を続けることはできません。

ただ、私たちは、「働く人」である前に、「人間」であり、社会を構成する「コミュニティの人間」です。また子供を産み育てるという期間や経験は、人として、社会として大切な礎でもありますから、人間の自然原理やコミュニティをしっかりと支援する仕組みが日本社会には必要だと思います。
私もいつか産みたいのですが、やはり子育て費用のことや、労働環境への不安から、正直、できるだけ遅く産みたいなと考えたりもします。
でもそうやって先延ばしにする人は、なかなか産めないんですよ。不安な気持ちもわかりますが、現代女性は産みたいなら、「考えるよりは産むがやすし」です。まず産んでから考える。産んでから悩むというスタンスでないと、産む時期を逃してしまう傾向があります。産むタイミングに悩んでいるのなら、とりあえず今産んでしまって、それから、また仕事を頑張れば良いと思います。
どうすれば、産む事を先延ばししてしまう今のこの日本社会の現状が変わると思いますか?
フランスでは、結婚と出産は別のことだといった考えが定着してきていて、ほとんど結婚せずに子供を産んでいますが、日本はまだ結婚しないと子供は産まないという文化ですよね。そこが日本の良いところという考え方もありますが、ヨーロッパのように、シングルマザーがしっかり働けて、しっかり生活が維持できる社会の体制整備は必要だと思います。
最後に、これからを生きる女性達へメッセージをお願いします。
まず、夢や目標を持ち続けることが何より大切だと思います。また自分を好きになることも大切です。ストレス性の病気になる女性は、自分のことを好きではない方が多いと思います。毎日のイメージトレーニングも効果があると思います。寝る前に“私は、かわいい。私は、なかなか素敵。夢は、もうすぐ達成できる。”と唱えるなど、自己受容感を高めたり、目標に向けていい意味で思い込みを持ち続ける方法もありますよね。

また、クリニックでは不妊治療を行っているのですが、やはり35歳を過ぎてから焦って受診される女性が多いです。子供を産むことだけが女性の選択肢では決してありませんが、もし子供が欲しいと思うのであれば、繰り返しになりますが、あまり深く考えず、早めに一人産んでみましょう。そこから、また新しい発想やサポートもでてくると思いますよ。
ありがとうございます。考える前に産んでみる!ですね(笑)
関口 由紀さん
女性医療クリニックLUNAグループ理事長
LUNA骨盤底トータルサポートクリニック院長
医学博士、経営学修士、横浜市立大学客員教授、日本泌尿器科学会専門医、日本東洋医学会専門医 平成元年 山形大学医学部医学科卒業 平成14年から西オーストラリア大学産婦人科客員教授のP.P.Petros 先生に師事し、インテグラル理論とTFS(Tissue Fixation System)手術の技術を習得。 「ホルモンを整えて潤い美女になる!」メディアファクトリー(2013年)、「『女の不調』解消BOOK」PHP文庫(2013年)、「女性外来の骨盤底筋トレーニング」宝島社(2014年)等、著書多数。
LUNA骨盤底トータルサポートクリニック http://www.luna-clinic.jp
和田 江美子
女性視点で、愛が広がるライフスタイルをトータルサポートする女性応援団体「ガールズ ラヴィング プラネット (GLP) 」の代表理事。東京を拠点に、様々な女性応援活動を行っている専門家を講師に招き、女性限定セミナーや交流会の開催など、女性が語り合い、生涯の質を高めあえる学び場と、女性の悩みの解決、癒し場を提供し、女性の健康、メンタルヘルス、自己愛、恋愛、結婚、離婚、夫婦愛、家族愛、子育て、性生活、性教育など、心身ともに健康で愛が広がる( LOVExLIVING = ラヴィング )ライフスタイルをテーマに活動しています。
女性応援団体 ガールズ ラヴィング プラネット (GLP)
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