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■ 東京ウーマンレポート


2014年4月「第4回W.I.N.ジャパン・カンファレンス」レポート

ヨーロッパ発、女性のグローバル・リーダー国際会議
めくるめく、ダイバーシティ&インクルージョン

さる2014年4月18,19日に、女性のグローバル・リーダー国際会議「第4回W.I.N.ジャパン・カンファレンス~更なる可能性の追求~」が東京シャングリ・ラ ホテルで開催された。 当日は女性活用で有名なカルビー株式会社の松本晃会長兼CEOの他、小池百合子衆院議員や有森裕子氏等、日本のダイバーシティを牽引する有名企業のトップや著名人、有識者、各国のオピニオンリーダーなどが登壇し、210名もの参加者が2日間にわたって熱く語りあい、大盛会で終了した。

創設者のクリスティン エングヴィッグ(Kristin Engvig)氏の魅力やメッセージは折に触れ東京ウーマンでも取材しているため、スペースはそちらに譲るとして、何故このW.I.N.カンファレンスが今、日本に必要なのか。今年で4回目を迎え、カルビー、シスコ、IBM、ペプシコ、といった優良企業がスポンサーに名前を連ねているのか考えてみたい。
成熟した女性の国、ヨーロッパ
「あえて日本向けにローカライズしない」・・・スポンサーの日本企業にはそのことが喜ばれているときいている。実際にWINジャパンはヨーロッパのプログラムをそのまま持ち込み、ダイバーシティのダイナミズムや洗練さを日本で体感できる。

オープニングはハープやギターなど4名の素敵な女性の演奏でスタート。全体会議やワークショップの間にあるネットワーキングタイムには、シャングリ・ラ ホテルのアフタヌーンティーやカクテルが準備され、狭いセミナールームに閉じ込められ行われる会話とは、必然、内容や在り方も変わってくる。

これは「女性が女性らしくあり」「女性のしなやかさを活かした社会貢献」をいつも唱えている、クリスティン氏の理念が色濃く反映していると考えられる。コモディティ商品を扱う企業に限らず、男性に変貌してしまった女性のセンス、生き方が必要なのではなく、女性ならではの感性を求めている。ダイバーシティの真髄だ。
女性活用の本場、ノルウエーでは出生率もアップ
WINジャパンの最新レポートとして、マッキンゼーアンドカンパニー日本支社長のジョルジュ デヴォー(Georges Desvaux)氏からは、女性を登用している企業のほうが、そうでない企業よりもROEやEBITなど業績全てにおいて良い結果が得られたと報告。

日本では安倍政権が第3の矢で掲げるも、制度化されていないクオータ制(注記:2014年7月14日の記者会見で、菅義偉官房長官は官公庁や民間企業に、女性登用の行動計画策定を求める法案を2014年度中に国会に提出する方針を明らかにした)

(※1)(政治システムにおける男女両性割り当て制度)は、ダイバーシティの本場ノルウエー発祥の制度。ノルウエーではすでに1978年に、男女平等法(※2)が制定され、そこから長い時間をかけて変革が進み、2008年には同国上場企業における女性取締役の比率は45%近くにまで増えている(2000年時点の同比率は、わずか6.4%)。

更に育児休暇の一定期間を父親にも割り当てる「パパ・クオータ制(※3)」も1993年に導入しており、男性の育休取得率は現在では90%にも達し、出生率の増加という効果も上がっている。 ちなみにクオータ制はOECD30か国中、ニュージーランド、アメリカ、トルコ、日本の4か国だけが、採用していないか野党の一部が採用しているだけとなっている。
※1.クオータ制(Wikipedia)
※2. 男女平等法:「公的機関が4名以上の構成員を置く委員会、執行委員会、審議会、評議員会などを任命または選任するときは、それぞれの性が構成員の40%以上選出されなければならない。4人以下の構成員を置く委員会においては、両性が選出されなければならない」(数値は88年に改正)
※3.パパ・クオータ制:父親が割り当てられた分の育休をこなさないと、全体の育休期間が短くなったり、育休中の手当がカットされたり、権利が消滅してしまったりする制度
縦(自己洞察)の方向性と場の持つエネルギー
WINのワークショップやスピーカーは、インプレッシブで多様な点で特徴的だ。 例えば日本であれば、有名企業のトップエグゼクティブや専門家、大学教授といった著名人がスピーカーになるだろうが、WINではもっと幅広い。WINジャパンでもトップや専門家からの先進事例の共有に加え、例えば中医学と量子物理学を基にメソッドを開発したエネルギーワーカー ルイーズ ミタ(Louise Mita)氏、インドのジャーナリスト アニタ プラタップ(Anita Pratap)氏、あるいは新国立劇場の芸術監督 宮田慶子氏であったりと、スピーカーも多岐にわたる。

方向性は、横(世界の最新事例の共有)と縦(自己洞察、深さ)なのだ。 深く自身を洞察することなくして、他者を受け入れることはできない。

ダイバーシティとは単なる多様性を唱えるだけではなく、インクルージョン=受容がセットになって初めて効果を発揮する。 実際のクリスティン氏もオープンマインドで気さくな性格だが、自己探求をずっと続けてきた彼女ならではの人柄が、WINという場に通底している。そんな深い場だ。

東京ウーマンでは、昨年同様、WIN国際会議参加者に少額ながら奨学金を進呈する予定(奨学金進呈:2014年10月1.2.3 (4) 日 Global WIN Conference Berlin, Germany)。毎年会場の変わる国際会議だが、今年はドイツ、ベルリン。めくるめくダイバーシティ&インクルージョンの世界へ、ともに旅したいと考えている。 ※奨学金についての詳細は、8月以降本誌面にてご連絡さしあげる予定です。
WINジャパンワークショップレポート
「ビジュアル・センスワークショップ」
講師:Eriko Kaniwa(鹿庭江里子)氏
WINジャパン・コンファレンス 女性のリーダーシップイベント内の一つであるビジュアルセンスワークショップの参加レポートをまとめました。

「自らの創造性と表現力を向上させたい方、言語以外の表現方法を用いて企業チーム内の共感を高めたい方、アートへの新たな視点を学びたい方、セルフマネジメントへ右脳的手法を取り入れたい方におすすめです。」と案内のあるワークショップ。いったいどんな体験ができるのか・・・・どきどきしながら行ってきました

○ビジュアルセンスワークショップを受けてみて

簡潔に言ってしまうと、普段動かないものが動き出し、普段使えていないものが戸惑いながらも活動を始め、そして、新しい視点が与えられることで、見ている世界が広がっていく。

そんな体験ができたワークショップでした。 その普段動かないものや普段使えていないものというのが、私たちの「感性」のことです。

私たちが仕事をするとき、仕事の効率、時間管理、ロジカルなプレゼンなど左脳をフル活用することが多いのではないでしょうか。けれど、実際は、仕事を進めるうえで欠かせない人とのコミュニケーションや何かを伝えていく場面では、最も大事なのは理屈ではなく相手の気持ちを汲む共感力だということは、気づいている人も多いでしょう。そして、なにかゼロから新しいものを創り出すような仕事の場合、人をひきつけるような創造性やひらめきも必要だったりします。

これらは、決して理詰めでは出てこないものです。 左脳優位で、理詰めの状態でずっと過ごしていると、感性をつかさどる右脳は活発に活動することをやめてしまいます。女性脳は左脳と右脳と間の脳幹が男性脳に比べて大きく、男性脳の人より右脳と左脳の間を行き来しやすいそうだけど(つまり感覚的になったり理性的になったりが柔軟)、それでもやはり、働いているときに左脳優位なことは間違いなく、それがもたらしている弊害は実はとても多いと思うのです。

知らず知らずのうちに、感性を鈍らせて、人への共感力を低下させたり、アイデアが出なかったり。仕事でのちょっとした違和感や問題は感性不足が原因であることも多いかもしれません。このワークショップは、その眠っている感性や、普段あまり動かない右脳の感覚がたった数十分で動き出して、体がポカポカするとても創造性豊かな時間でした。

○フォトグラファーの経験から生まれたビジュアルセンスワークショップ

このワークショップが生まれたきっかけは、講師の鹿庭さんがもともとフォトグラファーの仕事をされていたことにあるそうです。 フォトグラファーは、誰かの写真を撮るとき、被写体の本質をとらえて輝かせていくことがとても重要です。

そのために、被写体の状態を見ながら、コミュニケーションをとり、被写体との関係性を構築して、その人の本質に寄り添っていくのだそうですが、もちろん撮影時間は永遠ではありません。

限られた時間のなかで、ときには一瞬にしてそれを行っていく必要があるのだそうです。そしてそれがうまくいったとき、最高の1枚が生まれるのだとか。その経験から生まれたワークショップは一枚の写真から自分の感性がぐるぐると動いていくことを感じることができる鹿庭さんならではのワークショップと言えます。  

○ビジュアルセンスワークショップって?

では、実際にはどんな内容だったのか一部をご紹介しましょう。 私たちの脳は視覚から得ている情報が83%もあるのですが、一方で見たいものしか見ていないという欠点もあります。このワークショップでは、ワークシートに書かれた質問に答えていくことで、自分一人では発掘できない感覚を呼び覚ますことができます。

まず、たくさんの写真の中から一枚気になる写真をピックアップします。実はここからすでに私たちの感覚は動き始めています。選ぶ段階でその写真のなにかが気になり、そして、それを選ばせているからです。

チームで1枚の写真を選びます。 (一人1枚を選ぶ方法もあるようですが今回はチーム制でした。) チームで選んだ写真 次に、ワークシートに書かれている質問に答えていきます。

「何が見えるのか?」 「その事実に目が止まったのはなぜか?どんなインパクトがあるのか?」 「写ってはいないけれどそこから推察されることは何か?」 アングルや構成、この写真の撮られた目的などの視点からの質問にも答えていきます。

これで感性動くかな?と疑問に思うような質問ほど、普段動かさない感性が動かされていくのを感じることができるのがとても新鮮でした。 また、チームの他の人の発言も感性を刺激する要因になります。

たとえば、気になる色一つとっても、 「青い空!白い雲!」という運動会の標語のようなものしか出てこない私に対して、 「わたしはこの足元のみどりがすごく気になります。そして、穀倉地帯に人が暮らしている豊かな気配を感じます。」と発言する方も! 「すごい感性!そっか~!」と、どんどんみんなが発言したくなるような雰囲気になるのです。

そして、最後に身体の感覚に意識を向けていきます。 感性や感覚というのは体感覚とほぼ同じと言っていいでしょう。 緊張するときは胸が締め付けられる思いになるかもしれませんし、好きな人の前では心が温まっていくような感覚になるでしょう。感性が鈍るということは、この身体が感じていることを無視していくことなのです。

このワークショップではこの身体の感覚へ意識を向けていき、それを言葉にしていくことで、創造性や感性を解放していきます。 出てきた言葉や感性をもとに短い物語や詩にしていくことが最終形です。 海の中から上がってくるような神秘的なストーリーを作ったチーム。 空港で喧嘩をしたカップルがバリ島に着いたら、あまりの美しさに仲直りしてしまうというストーリーを作ったチーム。 作業は1時間もない中で繰り広げられるストーリーは豊かな感性そのものでした。

○最後に・・・

ワークショップの案内にあったとおり、「自らの創造性と表現力を向上させたい方、アートへの新たな視点を学びたい方、セルフマネジメントへ右脳的手法を取り入れたい方」にはお勧めだと思います。

「言語以外の表現方法を用いて企業チーム内の共感を高めたい方」については、今回のワークショップでは具体的にどのように活用するかの指摘はなかったのですが、恐らく時間にもっと余裕があるワークショップでは示してもらえるのではないかと思います。

そして、私のチームではストーリーを作るところまでいかなかったのだけど、やはり歌人としては詩を作ってと言われたら、短歌を詠んでみたくなるものです。

追い求め探し求めてきた道を踏みしめて見る風の青さよ

滝澤十詩子(東京ウーマンコラムニスト)
NLPマスタープラクティショナー、歌人