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■ ADV(アドボカシー)な人々 #03


フィーノ株式会社代表 鈴木孝枝 「いまのきもち」 vol.2

谷本氏: 日本の場合ゼネラリストを育てる文化があるじゃないですか、そんな中で、経営者マインドを持てといわれて意外とやってみたい人もいるような気がしますけど、そこの対価は求めないんですよね。経営者マインドを持ったからといって、それに値するお金が欲しいとかポジションをくれとはあまり要求しない。日本人って結構扱いやすいというか、人事としてはやりやすいところもあると思うんですけど、その辺をうまくコントロールすることもやってらっしゃるんですか?

鈴木氏: 私がですか?うーん。しちゃいますかね(笑)

谷本氏: 持ち上げて、みたいな(笑)

鈴木氏: 持ち上げてうまく人といかない人はこちら側から見て分かるんです。潰れちゃう人もいますので。

片岡氏: それはプレッシャーで?

鈴木氏: プレッシャーもありますし、キャパの問題もありますね。

片岡氏: 常に7割ぐらいでやっている人の方が、実は伸びたり伸び率があったりとか?

鈴木氏: 大手企業でずっとうまくやれている人って、肩凝ってない気がしますね。変な日本語ですけど。

片岡氏: 無理なものは無理(笑)

鈴木氏: そういうことです。だから柔軟性もあるし変わっていくことに対しての適応能力も高いですよね。
片岡氏: 僕は確か6回ぐらい転職してるんですよ。「確か」って言うのもおかしいんですけど(笑)日本テレビから始まってマクドナルド含め。でも僕は「転職」じゃなくて「転社」って呼んでるんです。やる仕事はどこに行ってもそんなには変わらないんです。要はマーケティングや広報戦略なので。

だけど僕が務めていた会社にいる同僚等を見てると会社は同じでも「職種」はよく変わるのです。営業だった人のがいつのまにか人事や宣伝担当になっていたり。昔は日本的でそれでもキャリアアップになっていたけど、今は新卒の採用が減って、上が詰まっていたりしていて、本部長、副本部長、部長、部次長、部長代理、副部長・・なんじゃそれって、でも部下は誰もいないみたいな(笑)役職のための役職みたいになってきています。

でもその会社の中で長く居るからこそいろんな事ができて、成果を上げているんですね。僕みたいに外に出ちゃった人間だと、急に何かやれと言われても、全くやったことがないことはできない。例えば、どんなに「人事」という職種に興味をもっても、さすがに人事部長にはなれない。何が言いたいかというと、今後の日本はどっちなのかなと。スペシャリストよりもゼネラルリストの方が必要とされるっていう流れも実はあるんですよね。

鈴木氏: そうですね。ただ私個人の意見としては、これからはスペシャリストに寄っていくと思いますね。

片岡氏: 何かの職種のスペシャリストかということですか?

鈴木氏: そうです。スペシャリストというと、エンジニアといったような職種のイメージが強いですが、これからは仕事の中でキチンと確立されてくると思うんですね。例えばコーディネートができない人に課長と役職名付けて、お前は課長だからマネジメント兼コーディネートをやれ、みたいなことってうまくいかないと思うんです。そうした内部でコネクトするのが上手いとか、そういうことに対してキチンと名前をつけて職種化していく必要があると思いますね。そうしないと国内ではなく国外と競争で負けてしまいます。

片岡氏: 価格競争ですか?

鈴木氏: 人件費は日本が一番高いですから。労働的な問題はブラック企業の問題もありますが、集団の空気によって「意見が言えない」という日本人的な問題も隠れていることもあると思いますけど。これからもっといろんな形で外国人雇用は増えてきますから、外から頭の良い人たちのハイアリングも絶対増えてきます。そうなると日本的文化と合わせていける人が職種として専門家が出てくると思いますよ。
谷本氏: デンマークの職種就職ってどのくらい細分化されてるんですか?

鈴木氏: 何職種かは忘れましたが就ける職は一つの本になってますよ。10歳ぐらいなると『私は何になれるんだろう』という広辞苑ぐらいの分厚い本が配られるんです。そこにはデンマークの職種が全部入っていて、職種ごとに初任給やどこの大学や専門課程を出てないといけないとか、必要な資格の内容が全部書いてあるんです。

片岡氏: 全部に資格がいるわけじゃないけど、一応、標準的なことが書いてあるんですね。

鈴木氏: 基本、資格ありきですね。デンマークは高校には全員行かないんですね。中学卒業の時点で高校進学と職業専門学校があってそこでまず進む道を決めるんです。『13歳のハローワーク』という本が日本にありますけど、向こうは13歳でもう職場インターンが始まります。高校に行くのは高度な専門知識が理解できる人のみです。

片岡氏: スペシャリストになりたいという人には良いことですね。日本にも高等専門学校がありますけど、あれもそういう職種を目指したい人にはたまらなく良いですよね。もっと注目されてもいいと思います。

鈴木氏: プラス私がすごく良いなと思うのは、向こうは人生のやり直しがきくんですよ。大体生涯平均転職回数が6回なんです。

谷本氏: そうなんですか!

鈴木氏: しかも同じ職種じゃない場合も多いですよ。

片岡氏: 職種も変わるんですか。それ意外ですね。
鈴木氏: 変えても大丈夫でなんです。変える時はもう一度学校に行き直せて資格をとれますから。教育費無料ですし。

片岡氏: それ良いなぁ。僕も営業だけは経験しとけばよかったって独立してから思うんですよ。やったことないからね。でも独立して初めて営業(お金の管理)の大切さが分かります。(笑)

鈴木氏: 適性っていうのもちろんチェックされますけどね(笑)

片岡氏: そこは、あなたは向かないって、はっきり言われるんだ(笑)

谷本氏: でも基本はこれやってみたいと思うことから始まるんですね。

鈴木氏: 最初はそこからスタートですね。あとは努力があって競争があるので。北欧も資本主義ですから。また市場的に人が要らないとなった場合は、やはり他の職種選択も必要です。

片岡氏: 日本だとどうしても消去法になっちゃうんですよね。会社の中で結果的に宣伝部だったり、営業部だったり、社長室だったり。望んで入るというよりはなんとなくローテンションや、「空席」を埋める感じでの消去法ですしね。どうしても広報や営業に行きたくて、その会社に入る人ってかなり少ないと思うんです。そういう意味では、自分でなろうと思えばなれるというか、少なくともチャレンジできますというのは良いですよね。

鈴木氏: 今の日本は、そうした人たちも、もうマイノリティじゃなくなっちゃっている。でもマジョリティでも彼らの中には「この部署に行きたい」「この仕事したい」という思いもあるはずで、そこに繋がっていなんです。先ほどのゼネラリストの話しも、要はいつか経営者になる人を作るためなんですね。

だからローテーションでいろんなものを経験させるのはそこなんですが、全員が社長にならなくても良いんです。なのでナントカ局長といった名前じゃなくて(笑)、ある程度の段階で、その人の専門性や、活き活きと長く働ける所に早くスイッチを切り替えていかないといけないんです。全部が全体最適になるのは難しいということは、ここ10年くらい前から現場にいて感じているところです。