津田 恵子 リカレント教育コンサルタント Happiness insight Happiness insight合同会社 CEO/人的資本経営・well-being経営を目指す成長企業のお手伝い/累計2000人の面接を通じたノウハウで採用活動やリカレント教育推進・導入支援/海外トレンドキャッチ/早稲田ビジネススクールMBA/中3・小6・5歳3児の母 |
変化に強い女性のキャリアとは |
皆さん、こんにちは。リカレント教育コンサルタントの津田です。師走に入り、年末に向けて仕事、育児、勉強と大忙しの日々をお過ごしの方も多いと思います。クリスマスやお正月もすぐそこです。あと少し頑張っていきましょう。 本日のテーマは、「変化に強い女性のキャリア」です。女性のキャリアはライフイベントや外部環境の変化により、自分の思い通りにキャリア形成をできない期間があることもあり、もどかしい思いをされている方も多いのではないでしょうか。 私自身もまさに、出産後はずっと働き方に制約があり、会社で昇進が望めず、かといって異動したい場所もない、とモヤモヤした状態を何年も続けていました。働く環境としては、短時間勤務で恵まれており、子供の病気で早退することがあっても、組織できちんとフォローしてもらうことができていました。一方で、短時間勤務であっても新しいことに挑戦したい、スキルアップをしたいという気持ちがあり、新入社員研修のマナー研修講師に立候補したり、フルタイムに戻したりと、やってみたものの、トライしては失敗するという有様でした。 失敗を繰り返したために、短時間勤務中は、新しいことへのチャレンジに二の足を踏むようになり、会社で公募されているものや、ましてや外に行くことなど諦めて、日々淡々と業務をしていたように思います。
◆女性を取り巻く環境 しかし、今、世間の潮流は、男女の賃金格差をなくすこと、そして女性管理職を増やすことです。企業は国からの要請(コーポレートガバナンスコード改訂)もあり、こうした人的資本の開示を求められており、女性活用の指標が企業価値として算定され、投資家に評価される仕組みになっています。 ノーベル経済学賞を受賞したクラウディア・ゴールディン氏は、経済史と労働経済学の手法を組み合わせることで、アメリカにおける女性の社会進出についてはじめて総合的な記述をもたらした点が評価され、今回の受賞に至りました。 女性の社会進出は右肩上がりに進んだわけでなく、女性の就業率は、主要産業が農業から工業に変化した19世紀初頭に減少、その後20世紀初頭にサービス産業が成長すると増加し、「U字カーブ」を描くことを明らかにしています。また20世紀後半、特に1970年代に進行した女性の高学歴化と晩婚化について、その背景に経口避妊薬の普及と、それによる早婚の減少が関係していることを明らかにしました。女性の社会進出の印象が強いアメリカにおいても、就業率にはライフイベントの影響が大きく関わっていたことが分かります。 そして、今、日本では、企業による女性活用の波は待ったなしです。私たちは、子育て中であっても、介護をしていても、自身のキャリアを諦めている場合ではなく、どんどん必要とされる場所に身を置いていくことを社会全体から求められていると言えます。 |
◆変化に強いとはどういうことか 皆さんも、ダーウィンの進化論について聞いたことがあると思います。生存競争において、生き残るのは、必ずしも力が強いものや体が大きなもの、賢いものではなく、「変化に対応できるもの」と言われています。ダーウィンが言ったというよりは、ルイジアナ州立大学バトンルージュ校の経営およびマーケティング教授、レオン C. メギンソンの著作の中でこのように表現されており、こちらの言い回しが広がって定着しているようです。 ”According to Darwin’s Origin of Species, it is not the most intellectual of the species that survives; it is not the strongest that survives; but the species that survives is the one that is able best to adapt and adjust to the changing environment in which it finds itself." Megginson, ‘Lessons from Europe for American Business’, Southwestern Social Science Quarterly (1963) 44(1): 3-13, at p. 4. 今、私たちを取り巻く環境は、未だかつてなく変化の中にあります。世界中が大きな混乱に陥った新型コロナウィルスによるパンデミックの影響は、記憶に新しいですね。出社や登校と言った、日常的な行動が制限され、リモートワークやオンライン授業が標準となり、働き方や学び方、しいては私たちの生き方が大きく変わった出来事であったと言えます。コロナ渦中では日本でも海外でも仕事を失う人が増え、また転職を考える人も増えたという調査もあります。 私たちがこれからのキャリアを考える上で、ライフイベントだけではなく、予期せぬ出来事がどんどん起きると思っておくべきでしょう。ChatGPTに代表される、生成AIの技術も、活用できるかどうかで、私たちの仕事の生産性が大きく変わってくるはずです。 私は、変化に強いキャリアとは、過去の成功を捨てられること、だと考えています。教育の世界ではこれを「アンラーニング」と言います。アンラーニング(unlearning)は学習棄却ともよばれ、持てる知識・スキルのレパートリーのうち有効でなくなったものを捨て、代わりに新しい知識・スキルを取り込むという意味です。リスキリングにも類似した概念です。リカレント教育も同様ですが、意味の違いを論じることはあまり本質的ではないのではと思っています。様々な文脈で大人の学びの必要性が強調されているということかと思います。 アンラーニングは、経験から学びを得る「経験学習モデル」と深く紐づいています。経験学習モデルとは、デービッド・コルブにより提唱された学習サイクルのことで、「具体的経験」「内省的反省」「概念化・抽象化」「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返すことで、経験学習が行われるとされています。 つまり、自分自身との対話、リフレクション(内省)がとても大切ということです。 |
◆変化に対応するには、自ら日々小さな変化を起こす 環境の変化から影響を受けないように、シェルターに隠れるという考え方もあります。人生100年時代、働くことに関して守りに入る時期があるのは、全くおかしなことではありません。問題は、手加減している自分が当たり前になってしまうこと。常に6~7割の力で仕事をする習慣がついているとすれば、それをまず自覚することが必要です。 いま、短時間勤務をしていたとしても、いつかフルタイムに戻る時に備えて、自分の中で準備万端な状態を作っておくべきかと思います。そして、チャンスが来たら迷わず手を挙げて挑戦してみて下さい。そのプロセスで、失敗することもあるかもしれません。働きすぎて、育児にしわ寄せがいってしまった、パートナーへの負担が大きくなってしまった、自分自身のバランスが取れなくなってしまった、色々なことが起こるはずです。でもそれは、自分が変化を起こそうと行動した証であり、大きな目で見れば素晴らしい経験だと思います。うまくいかなかったら、元に戻せばよく、そうして試行錯誤していくことが重要だと思うのです。 今、私自身は、大手企業の安定した生活から卒業し、独立して仕事をしています。育児で大変だった時、キャリアに悩んでもがいた経験、思い切って行動してみて失敗してしまった経験は、とても大きく役立っています。 会社経営は環境変化への対応と、試行錯誤の連続。私が得意だと思っていた研修企画のスキルは、独立してみれば直接取引の機会などそうそうあるわけではなく、最初はランサーズやクラウドワークスで仕事を探す日々でした。単発案件ばかりで、まともな売上を立てることもできず、何度会社員に戻ろうと思ったか分かりません。ある時、たまたま見かけたオンライン採用アシスタントの案件から、スタートアップの採用コンサルティングニーズに気付き、そこから事業展開をし、今に至ります。 ここに至るまでも、売上がないのに人を増やして、広告費ばかりかけて、キャッシュフローを悪化させてしまったり、基本のキもできていない有様でしたが、今はようやく安定した売上を立てられるようになりました。1つの案件を必死にやる中で、お客様とのやり取りの中で、自分が役立てる場所を作っていくのです。中には自分が経験したことがない領域もありますが、何冊も関連書籍を読んだり、他社のサービスを調べて自分のものにしていきます。これは変化への対応力以外の何物でもない、と思います。 会社員の頃、上司から仕事を増やされるのが嫌でした。「短時間勤務なのに、これ以上仕事増やさないでよ」と思っていました。でも今は違います、お客様からの仕事の依頼は受注であり、こちらへの期待です。人材・組織の領域も新しいテーマや、テクノロジーが誕生していますが、これらをキャッチアップしているうちに、仕事のヒントが浮かんでくることもあります。領域を突破することこそ、独立して仕事をするための必要な力ではないかと思っています。 これから年末になりますが、この1年間、自分がどのような変化を起こせたか(仕事のことでなくてもいいです)、ぜひ考えてみて下さいね。
<参考文献他> 改訂コーポレートガバナンス・コードの公表 https://www.jpx.co.jp/news/1020/20210611-01.html クラウディア・ゴールディン氏の写真 Carlin Stiehl//Getty Images 成長求めキャリア再考 転職希望、コロナ禍で過去最高(日本経済新聞,2022年2月4日) https://career.nikkei.com/nikkei-pickup/001886/ Darwin Correspondence Project(University of Cambridge) https://www.darwinproject.ac.uk/evolution-misquotation
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