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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2020-10-21
自分の人生の見つけ方~アルケミスト⑩~

秋晴れの嬉しい10月。このコロナ禍の中でも、その陰鬱さを吹き飛ばすような、元気な子供たちの声が聞こえます。

運動会の季節ですね。

気が付けば、来年まで、もう3ヶ月を切りました。

今年の振り返りと、来年への準備を、そろそろ始めるころではないでしょうか。

『アルケミスト』サンチャゴ少年の旅も、いよいよ終わりに近づいています。

もう、彼は本物の錬金術師に出会い、さらに運命の相手―ファティマ―にも出会います。

しかし、サンチャゴはファティマをオアシスに残し、旅を続けなければなりません。

それは、彼が夢を追求するために必要なことだと、彼自身が決めたことだからです。

錬金術師を師として、砂漠へ戻るサンチャゴ。

その砂漠の旅の先にしか、サンチャゴが望む夢はないのだと信じて、ひたすらに旅ゆく決意をしたのでした。

 

「おめでとう」

錬金術師はサンチャゴに対してこう言います。

それは、サンチャゴが、運命を追求して生きることを選んだからです。

もう、旅のおわりも近いのです。

 

ところが、錬金術師はサンチャゴに、何一つ教えを与えてはくれません。

ただひたすら、ふたりでラクダに乗り、そして旅を続けます。

どうして何も教えてくれないのかと尋ねるサンチャゴに、錬金術師はこう答えるのです。

 

「学ぶ方法は一つしかない。それは行動を通してだ」

その言葉に、さらに頭を抱えるサンチャゴ。錬金術師にさまざまな質問を投げかけます。

しかし、錬金術師が答えたのは、自分の心に耳を傾けなさいということでした。

なぜ、自分の心に耳を傾けなければならないのか?

どうして、他の人は教えてくれないのか?

サンチャゴはまだ腑に落ちていないようです。

錬金術師は続けます。

「おまえの心があるところが、おまえが宝物を見つける場所だからだ」

 

みなさんは、心の声を素直に聞いていますか?

自分の心よりも、大切な答えが、誰かの口から出てくると思っていますか?

 

きっと、そんなことはありませんよね。

でも、だれしも不安なのです。

おそらく、こんな感じではないでしょうか。

自分の心が成熟していないのに、本当にその答えは自分の心の中にあるのか?と。

それは、サンチャゴも同じです。自分の心はいつも揺れ動いているのに、その心に耳を傾けても大丈夫なのか?

錬金術師に不安を語ります。

錬金術師は、なんと答えたのでしょう。

「おやおや、それは良いことではないか。おまえの心が生きている証拠だ。心が言わねばならないことを、聞き続けなさい

 

あなたの心も、私の心も、大きく揺れ動くときがあるでしょう。

不安にさいなまれるときもあれば、希望を抱き、生命力に満ちているときもあるでしょう。

嬉しくて前途洋々な未来しか見えない時も、思わぬ躓きに、絶望感を感じることもあるでしょう。

それでも、心の声を聴き続けなさい、と錬金術師は言うのです。

心に起伏があり、揺れ動くのはあたりまえであって、落ち込むことではない。

むしろ、「心が生きている証拠」だと、暖かく語り掛けるのです。

文豪ゲーテもこんな言葉を残しています。

もはや愛しもせねば、迷いもしないものは、埋葬されてしまうがいい」

 

つまり、それが、人間というものなのだと、感情の起伏を受け止めているのです。

でも、最後には、希望や夢をもって、その起伏を受け止めてあげてください。

そのためにも、自分の本当の心の声を閉ざしてはいけません。

日本人は、我慢することが得意ですし、それが美徳だと言われて育ってきました。

たしかに、他者に損害を与えるようなことは我慢しなければなりません。

でも、必要以上に、他者を気にして、自分の心を封印する必要はありません。

自分の心の声を聴く。

我慢強い日本人には、ちょっと難しいことかもしれませんね。

でも、だからこそ。

みなさんの夢を、心の声を、封印しないで聞いてあげましょう。

他の誰が聞いてくれなくても、

あなたがあなたの心の一番の味方に、一番の聞き手になってあげましょう。

 

冒頭にも書きましたが、10月はそろそろ来年という未来に向かって、

じっくり見つめなおし始める時期に最適です。

秋の夜長、たまには本を閉じ、友との語らいをお休みし、

自分自身の心の声に、じっくりと傾けるのも悪くありません。

 

心の声が、あなたの素敵な旅の続きを教えてくれるでしょう!

 

Schoenes Leben & schoene Reise noch!

 


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