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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2020-04-15
自分の人生の見つけ方~アルケミスト④~

4月。例年ならば、新緑のまぶしい日差しの下で、初々しい新入生や、スーツに緊張感をまとった新入社員のすがすがしい姿をたくさん見かける季節ですが、

残念ながら、今年はコロナウイルスがいまだに人々を、終わりのない不安に植え付けつづけています。

 

大人たちも慣れないリモートワークに戸惑っている人もいると思います。

一方でリモートワークで仕事ができる人は、まだ幸運なのかもしれない、とも思います。

 

さらには、このような状況の中、新しいサービスのアイデアを思いつく人もいるでしょう。

 

困難なときにこそ、人類の叡智を、自分の知力と想像力を振り絞って、未来を切り開いていきたいものです。

 

さて、『アルケミスト』の主人公、サンチャゴ少年も、親の用意してくれていた「神学校→神父」という、村一番の出世街道と、旅の先に見える自分の計り知れない可能性を天秤にかけ、後者を選びました。

 

羊飼いになり旅を続けているさなかに、ジプシーや、不思議な老人と出会い、サンチャゴの人生はコマを進めていきます。

不思議な老人と出会い会話をすることで、サンチャゴはこんな局面を迎えました。

 

すなわち、

今まで慣れ親しんできたものと、

これから欲しいと思っているものとのどちらかを、選択しなければならなかった

 

のです。

 

多くの人は、こんなときに、今まで慣れ親しんできたものを手放すことをためらいます。どんなことでも、それはとても勇気のいることです。

これまでのキャリアや今の仕事、友人関係や信頼、所有してきたもの...

数々の「戦利品」は、私たちの日常に安心感を与えてくれるのですから。

 

今あるものを手放さずに、新しいものを手に入れることができたら、さぞ良いだろうと重いこともあるでしょう。

けれども、知らずのうちに、人はいつも何かを選択しながら生きています。

「バケツに入った水」というたとえは、よく聞きますが、いうまでもなく、いっぱいになったバケツにはもう新しい水を入れることはできないのです。

 

サンチャゴは、老人に夢を語り、老人はサンチャゴに、運命を語ります。

そして、運命に導かれて生きるのが人間の幸福な在り方だと語ったうえで、羊飼いの少年サンチャゴに、羊を手放す提案をするのです。

もちろん、その代わりに「運命を叶える方法」を提示して。

 

そして、サンチャゴは、さきほどのような状況に置かれたのでした。

 

さてサンチャゴはどうしたのでしょうか。

 

その少し前、「羊飼いになって旅をしたかったけれども、パン屋になった男」を見て、「羊飼いになればよかったのに」と思うサンチャゴに、老人はこう語っていました。

 

結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うか、という方が、もっと大切になってしまうのだ

 

その言葉を聞いていたサンチャゴは、パン屋の人生と、自分のこれからの人生を見て、こう決意します。自分にも、あの風にように自由になれるはずだ。と。

 

自分をしばっているのは、自分だけだった

 

たくさんのものに縛られている大人から見ると、どきっとする言葉です。

でも考えてみれば、人には、「選択」という権利があります。

 

買うか、買わないか。

やめるか、やめないか。

やるか、やらないか。

努力するか、あきらめるか。

 

これまでの人生の数々の岐路で(それは、そのときのあなたには大切な「岐路」に見えなくても)、やはりあなた自身が、すべてを選び、こうして今いるという現実があります。

 

サンチャゴは、自分の未来を決めるのは自分だと悟った後で、どんな旅を続けるのでしょうか。

旅の途中、サンチャゴにはさまざまな出来事があり、試練があり、挫折や学びがあり、その少年の旅を追いながら、私たちはつい自分の人生とときに重ねては共感し、ときに理解できないと頭を抱え、それでもサンチャゴの旅を応援したくなるのです。

 

なぜなら、サンチャゴは、自分の生き方、選択に、責任をもって歩もうとしているからだと思います。

たくさんの味方、運命の神、宇宙でさえも味方につけるためには、サンチャゴのように、自分の生き方に責任をもって、一歩一歩あゆんでいくことが大切なのだと思い知らされます。

 

日本中が、いえ、世界中が先の見えない不安におびえている今、あなたの前にはどんな選択があるでしょうか。

あなたを縛っているかもしれない、あなた自身を見つめなおし、どんな困難にも笑顔で過ごせる穏やかな心と、誰のせいにもしない生き方ができる強い軸を見つけられたら......。

 

私の敬愛するゲーテも、こう語ります。

 

人間のもつもののなかで、自分自身に基礎を置かぬ力ほど、不安定で儚いものはない。

 

多少のことには動じない力

不安の中でも、平穏を保てる穏やかさ

どのような状況でも、人さまから求められるような能力

 

そんなことが、あぶりだされる「コロナショック」です。

私も自戒の念を込めて、自分自身を見つめなおしたいと思います。

 

あらゆる意味で、人間の力が、宇宙から試されているのかもしれません。

みなさまの叡智と広い心で、どうかこの未曽有のパンデミックを乗り越えられますように。

 

どんなときでもあなたの人生に喜びがありますように!

 

Schoenes Leben & schoene Reise!


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