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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2019-06-19
あなたらしく生きるために~バックの言葉⑥

今年の梅雨入りは例年より少し早くやってきました。

この春からようやく「家の外」にも目を向けられる余裕が出てきた私ですが、梅雨入りすぐの大雨と強い風で、玄関先の花たちがかなり傷んでしまいました。

それでも、きちんと剪定してあげれば、また別のところからつぼみが膨らみ、次々と花を咲かせてくれます。

かといって、いつも過保護ではいけません。適切な時に適切な量の肥料や水やり、そして「害」があれば取り除いてあげる。

その「害」とは害虫だけではありません。花によってはその花自身の枯れた花弁がずっとそこにあっても、土を汚し、茎を腐らせる害になってしまいます。

自然の力を思い知らされる日々ですが、同時に人間もやはり自然の一部だと感じ、学ばされる日々でもあります。

梅雨時期は外に出るのもおっくうな季節ですが、職場や家庭の仕事で忙しい読者のみなさまはそうも言っていられないというのが現実でしょうか。

私はと言えば、去年に引き続いて、今年も六月からとある国立大学経済学部で非常勤講師として授業のお手伝いをすることになりました。

週に一度の2コマ(3時間)ですが、私の住む鎌倉からは片道2時間半かかるので、実際的には1日がかりの仕事です。

10年間、創刊から常連執筆陣として取材文を寄稿していた雑誌が休刊となり、今年は時間ができるかしらと思ってはいましたが、そうは問屋が卸さないのが、私の人生です。

長男の小学校ではPTAの本部役員になり(立候補制ではなく、他薦のみの投票制だったので、寝耳に水でした…)、毎週のように会議や雑用のために小学校へ行き、WEBの新連載も始まり、昨年、ノンフィクションの本を上梓したことで、次作のご依頼を受け、つい先日キックオフしたばかり。

次男は今年から幼稚園に入りましたが、車で片道40分の越境入園のため、往復の時間だけでもかなり取られます。遠いのはわかってはいたのですが、親子ともどもとても気に入っている幼稚園なので、覚悟の上に入園させました。

このときはまさか、長男の学校の役員就任の依頼があるとは思いもせずにいました。

それでもPTA役員選出のご依頼があったときにも断らずに引き受けました。

こうして頼まれごとをいちいち引き受けているだけでなく、「あれもしたい、これもしたい」と家の中から、仕事に関係のない勉強から、興味のあることにはつい手を出し、顔を出したくなってしまう性分です。

実家の母にはいつもこう言われます。

「あなた、忙しい忙しいって言っているけど、自分で忙しくしているんじゃない?」

はい。そうですけど、なにか?(笑)

私は「暇」が嫌いです。

ここでいう「暇」とは、ゆっくり過ごす時間のことを言っているわけではありません。ゆっくり家族で過ごす時間は大好きで、夜は夫とワインを飲むのが楽しみですし、休日は子供たちと遊ぶのが大好きです。

私がいう「暇」とは、「退屈な時間」ということ。

退屈な時間の最大の罪は、「他人のことを気にし過ぎること」と、もう一つ、「他人のことを思いやれないこと」に尽きます。

前者の意味はお分かり頂けるでしょう。

ワイドショーで他人である芸能人の痴話げんかや、立ち入る必要のない人々のうわさ話や悪口に興じたり、SNSで他者の生活を羨んだり、逆に必要以上に自分の生活を素敵に見せようと苦労したりして、流れてくる情報に疲弊し、最後は落差に落胆する。

そういう時間の過ごし方です。

後者は、退屈している人は、忙しく充実している人の時間を無意識のうちに、奪う傾向にあるということです。自分も暇だから、相手も暇なんだろうと電話をかける。自分には時間があるから、ちょっと約束の時間に遅れても平気だろうと思ってしまう。まったく悪気がないので、本人はそのことに気づきません。

「time is money」と言いますが、時間はとても大切なものです。あなたが「ちょっとそのくらい」と思った時間、相手はとても大切な人との会話を中断しているかもしれない。

次のアポイントで人生を懸けた打ち合わせがあるかもしれない。自分の時間を退屈している人には、そういう想像力が働かないのです。

だらだらとテレビやゲームをしがちな長男にも、いつもこう言って聞かせています。

「あなたがだらだらと過ごしたいなら、一人でしなさい。あなたの“だらだら”で、ママの時間を奪わないで」

子供と過ごす時間はとても大切ですが、だからこそ、その時間を意味のある時間にしたいのです。一緒に遊ぶ時間と、怠け癖の“だらだら”につき合う時間は全く別物。

わが子はお恥ずかしながら、だらだらと机に座り、だらだらと勉強をします。

本気を出せば30分もかからないテキストを、なんと3時間もかけてやるのです。当然、頭には入っていないことでしょう。そしてあろうことに、この3時間、私を隣に座らせて束縛します。

その間、仕事はおろか、家事も料理もできません。次男の遊び相手にもなってあげられません。

時間の大切さをまだ理解できない小学二年生。そろそろ気づいてほしいものです。

私がこのようなことを考えていたのは、大人になってからではありません。

子供のころから、いつも何かをやっている。それが小さいころからの私でした。暇とか退屈とか、私の辞書にはありません。

誰かと遊ぶ。本を読む。宿題をする。美しい景色を見て癒されたり、自分の未来を妄想する(これも大切な時間!)。日記や絵を描く。おしゃべりに興じる。スポーツに励む。部屋をきれいにしたり、模様替えの妄想をしたり、お片付けをする。

(お気づきのように、私にとって、“妄想”はとても大事な時間です)

そんな私ですので、イリュージョンにあるこの言葉が、ストンと腑に落ちているわけではありません。退屈していないので、実感がないのです。

ただ、退屈している人には、ぜひこの言葉を伝えたい。退屈の怖さを。退屈がもたらすある種の傲慢さを。

それは知らず知らずのうちに、あなたの心に潜み、あなたの人生の大切な時間を食いつぶしていきます。そしてあなたの人生から、大切な友や恋人やパートナーを去らせてしまうかもしれない。ということを。

退屈とは、目に見えないモンスターだということを。

 

ちょっと脅してしまいましたが(笑)、ここでご紹介します。

 

自由に生きるためには、退屈と戦う必要がある。

退屈を殺し灰にしてしまうか、

退屈に殺されて家具になるか、

激しく根気のいる戦いである。

 

ゲーテも、「自分に命令しないものは、いつまで経っても、しもべに留まる」

という言葉を残していますが、自分で意識して時間を過ごすことは、自分の人生の舵を自分で執るということです。

無意識に退屈な時間を過ごすということは、無意識に誰かの発信したものに操られ、無意識にあなたも誰かの時間を奪い、それでいて、自分の心や魂には良い影響を何も残しません。それどころか、悪態をつけば自分に戻ってくるし、暇に任せて他者と比較すれば、意味のない嫉妬や根拠のない虚構の、ひねくれた自信が芽生えるだけでしょう。

冒頭、花の話をしました。

花が美しく育つには、自らが枯れて落とした花弁を取ってやった方がいいのです。自分の体の一部であったのに、いつまでもくっついていては、次の花の邪魔をするのです。

人も同じです。

「退屈な時間」はあなたの人生の一部ですが、それがこびりついてしまうと、あなたの人生を台無しにしてしまうこともある。暇に任せて人の悪口を言う人になってしまったりすれば、あなたは他者から信頼されなくなるでしょう。

暇に任せて他者の時間を奪い続ければ、あなたの元から人は去っていくでしょう。

いうなれば、「退屈」のしもべになってしまうのです。あなたは自分の人生から捻出したはずの「退屈」に、支配される人間になっていく。

バックはその作品の中で、あなたが使われるだけの「家具」になるのではなく、自分の意思で人生を作る人になれと訴えます。

一見、暇なのは楽なのです。でもだんだんとそれが退屈してくると、ポチッとテレビやスマートフォンをつけて睨めっこし、そこから溢れてくる情報に右往左往する人間となっていきます。

そうしていつか、使われるだけの「家具」になる。

自由に人生を楽しんでいる人に、一人で瞑想する時間や、ゆったりと家族で過ごす時間はあっても、「退屈」はありません。

 

あなたの大切な人生を、見えないモンスターに支配されないように、一日一日を大切にお過ごしください。そしてどうか、あなたの大切な人たちの時間も大切にしてあげてくださいね。

 

私もわが子にきちんと「時間」と向き合えるよう伝え続けていきたいと思っています。

 

どんな時間も、あなたらしくありますように。

schoenen Tag noch!


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