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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo
大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに…
あなたに届け、輝く人の、輝く言葉(新シリーズ) キャリアアップ 2018-10-17
新しいあなたへ~新シリーズ「ココロの処方箋」~ヘッセの言葉⑲~

秋深まる10月になりました。

運動会、大きな神社の例大祭が終わり、このところの日本でもハロウィンを楽しむ人も増えてきました。

読書の秋に、芸術の秋。食欲の秋。

 

厳しい夏と、体に残された夏バテからも解放され、

環境が心地よくなり、人々が活動的になるのも秋ですね。

読者のみなさまは、どんな秋をお過ごしでしょうか。

 

私は基本的に活動的な性格だと自負していますが、

それはカラダだけではなく、ココロの中も同様で、

いつもたくさんの興味で満ち溢れています。

そう考えたとき、やはり私は幸せ者なのだなと感じることがあります。

 

『幸福論』で有名なフランスの哲学者アランは、

幸せになるための処方箋のひとつとして、

「たくさんのことを好きになること」という方法論を提案しています。

自分の周りに許せないことや嫌いなことが多いよりも

好きなこと、好きな人を増やして生きることこそが

幸せになる近道だよ、と。

 

それはもちろん「モノ」ではなくて、心の持ちようのことだというのは

言うまでもありません。

 

たとえば、「ハロウィンなんて、日本の風習じゃないのにバカみたい!」という人と

「みんなが楽しいのだから、それはそれで楽しもう」という人と

どちらが幸せでしょうか。

もっと昔は「クリスマスなんて!」という人も多かったはず。

でも、子供たちの無邪気な姿を見て、人が幸せに感じるならいいじゃないと

考え直した大人もいることでしょう。

 

感動する心、楽しむ気持ち、心弾む高揚感。

それだけではなく、ときに戸惑い、苦悩する。

心のこうした動きを忘れてしまった大人へ、ゲーテはこう言います。

「もはや愛せもせねば、迷いもせぬものは埋葬してもらうがいい」

 

ちょっとキツイ表現ですが、心の動きがあるからこそ、生きる意味があるのだとゲーテは言いたいのだと思います。

 

今月ご紹介するヘッセの言葉も、心の在り様と、幸福についてです。

 

社会通念のモラルを守り、善と呼ばれていることを行い、できるかぎり行儀よく生きたとしても、幸せにはなれない。

また、お金とか土地とか、大きな屋敷とか名画とか、そういった何かをたくさん所有したとしても、幸せにはなれない。

では、どんな人が幸せになれるのか。

それは、愛し、賛美できる人だ。たくさん持つのではなく、たくさん愛することができる人だけが、真の幸福に到達できるのだ。

(『マァルティンの日記から』

 

以前、私に「テレサ」というあだ名をつけた友人がいました。自分で書くのもお恥ずかしいかぎりですが、その人は、「君は愛の人だよ」と言ってくれたのです。

「テレサ」とは、愛に生きた「マザー・テレサ」から取ったそうです。

どういういきさつでそんな話になったのか、細かくは思い出せませんが、

私は子供のころから「弱い立場」の人を見ていられない性格です。

 

小学校でいじめがあると、その子の代わりに立ち向かってしまう。

チーム制の競技を見ていると、つい負けている方を応援してしまう。

悲しい顔をしている人を見ると、おせっかいかもしれないと思いながらもつい話しかけてしまう。

 

だからでしょうか。

 

東京で働いていたときに、ビシッとスーツを着てキビキビしているつもりでも、

上手く切符を買えないお年寄りや、道に迷った人からよく話しかけられました。

道を案内して、会社に遅れたこともありますし、

寝てしまった子供を抱えてベビーカーをそばに置き、階段の途中で途方に暮れている若いお母さんに「お手伝いしましょうか」と声を掛けたら、

友人だった!という笑い話も。

わが家の庭でランチをしながら、昔の辛かった子供時代を泣きながら話してくれた友人もいます。すっきりとした表情で帰っていく後姿を、頼もしく思い、そして嬉しく見送りました。

 

「誰かを救おう」という、大仰な気持ちがあるわけではありません。

小さなことにイライラしたり、憤ったり。まだまだ不肖の私です。

それでも、目の前の人に、目の前の事柄に愛情を持って接すれば、

相手は必ず笑顔でその気持ちに応えてくれます。

 

だれもがきっと持っている「小さな愛」。

けれども、日本人は忙しすぎてそれを忘れてしまっているのではないでしょうか。

久しぶりに都会に出ると、街を行く人の顔はどれも無表情で怖くて

おどおどしてしまうことがあります。

田舎住まいに慣れてしまった私ですから、なおさらです。

 

そんな都会でも、席を譲ったり、泣いている赤ちゃんに微笑みかけたりする「愛ある人」を見かけることがあります。

その人の愛を、当事者ではない私も受け取り、心が温かくなっていることに気が付きます。

そういう経験は、一度はみなさんもされたことがあるはずです。

 

見知らぬ誰かが知らずのうちに温めてくれたあなたの心。

今度はそのあなたの心が、また誰かの心を温めることができます。

幸せになりたいあなたへ。

あなたの心に愛を灯すことが、あなたにできる一番簡単で、効果的な方法ではないでしょうか。

 

ドイツ、スイス、フランスに生きた稀代の偉人たちが

声を揃えて、強く、熱く、それを伝えています。

 

これから外はだんだんと寒くなっていきますが、人の心はいつでも温めることができます。

もちろん、愛によって。

 

読者のみなさまに愛と幸せが訪れますように!

 

Schoenen Tag noch!

Text by Akiko Sekiguchi


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