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関口 暁子 文筆家/エッセイスト doppo 大変なとき、嬉しいとき。ときに支えられ、ときには今以上に輝きを増すことができる。「言葉」というものは不思議な力を秘めています。今、私たちの目の前のステージにいる「あの著名人」も、誰にも知られず努力を重ね、感謝を繰り返し、ここまで生きてきたのです。 彼らがその長い「活躍人生」の中で支えに… |
新しいあなたへ~新シリーズ「ココロの処方箋」~ヘッセの言葉⑯~ |
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暑い夏がやってきました。 今年は6月中に梅雨明け宣言という、近来まれに見ぬ空梅雨でしたが 一方で西日本は大雨の影響で多くの被害をもたらしました。 自然界の脅威を前に、私たち人間の存在の儚さを感ぜずにはいられない、 そんな数年が続いています。 地震や台風・大雨で被害に遭われ、亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに 遺族の方々、そして今なお不便な暮らしを続けられている被災者の方の 1日も早い心身の回復と安定を願ってやみません。
さて、いくつかのメディアですでにお話しているように、 現在、期間限定で国立大学の非常勤講師を務めています。 18歳~22歳の学生とともに、週に一回3時間をともにする時間は、私にとっても、とても貴重な学びの機会となっています。
地方の国立大学というと、イメージするのは「真面目」「安定志向」「公務員志望」… と言った学生像でしょうか。 「実践ベンチャー論」と名付けられた本講座は、こうした学生像から一歩踏み出し、さまざまな企業への就職、職業への視野を広げること、社会で活躍しているベンチャー企業の起業家たちのお話を聞くことで、これらを考える機会を設けたい、という考えで開かれています。 しかも、同大学の出身者や、地元企業と言った「地元」をキーワードとして 愛校心や、同窓生の縦横の繋がりを醸成したいという思いもあるようです。
普段の学業とは異なる一風変わったこの授業、半ば就職セミナーのようでもあります。 学生の立場ではなかなか会って話を聞く機会のない素晴らしい経営者の方たちから、じかにお話を聞けて、質疑応答もできる。 そして、希望者には企業訪問もできるという、就職や将来について真剣に考えたい学生にとっては、恵まれた環境と言えるでしょう。
仕事というのは、学生だけではなく、現在社会人として職に就いている方も、 一旦中断して復帰したいという方も、今後違う仕事をしてみたいという方も さまざまな立場や年齢の人が考えていかなければならないテーマであると思います。
天職に出会えるにはどうしたらいいのか? 学生時代に就職に役立つことは何か? 毎週学生からはさまざまな質問が投げかけられます。 答えに正解は一つもありませんし、どれが正解であるかは、その人の人生最期のときまでわからないものではあるかもしれません。
ただ、私も含めこの講座の教壇に立ったゲストスピーカー、担当教授の共通点があるとすれば、「自分が楽しいと思える仕事に就いている」ということです。 そして、「その仕事を得るために、自ら進んでたくさんの経験と努力を重ねてきた」ということも。 みなさんとても前向きで、エネルギッシュで、「大人になるって楽しそう!」と思わせてくれるような、素敵な方々。 世の中を見渡せば、大人の狡さや腹黒さ、社会の辛さ、矛盾、暗い部分ばかりが目につきます。でも、「メディアの目」ではなく、「自分の目」でしっかりと見渡せば、 本当はこんなにも矛盾や荒波だらけに見える世の中でも、自分の足でしっかりと立ち、逞しくキラキラと輝いている大人がいるということが、きっとわかった学生もいたでしょう。
ヘッセは仕事観について、若者に向けて、こう述べています。
忠告しておく。 自分に合ったまっとうな仕事に就きなさい。 ただし、私が言うまっとうな仕事というのは、世間の人々が考える仕事とはまるでちがう。 つまり、人並み以上の給料がもらえて、なおかつ安全で安定した仕事のことではない。 おまえが人生を通じてずっと続けていけるような仕事、しかも自分の成長とともに育っていくような自分らしい仕事のことだ。 そういう仕事を見つけるのは難しいかもしれない。 しかし、そのような仕事こそ、おまえに適したものだし、おまえの人生を豊かにしてくれるものなのだ。
(書簡1916)
私は現在、自分がしたい仕事をしています。有り難いことです。 しかし、何度も言うように、それが金銭的に以前よりも恵まれているかと言えばそうとも言えません。 以前は、同じ年の仲間よりははるかに出世が早く、稼いでいました。 その分、自分の人生を疲弊させていました。 その疲れをいやすために、お金を払ってマッサージに行き、エステに行き、「コネなしで20代で取締役」という「スタイル」を維持するために、高い服を着て、高い持ち物を持ち、高い食べ物を食べて、それを部下にも与えていました。 智恵も教養も、時代の流れも学び続けなければならないと、週に一度、残業をせずに専門的な学びを得るスクールに自費で通っていました。新聞は4紙、経済雑誌2誌以上、会社のターゲット層である30代のキラキラ女子の生態?も知るべきとファッション誌もいくつか。そしてもちろん本もたくさん読みました。 入る分、出ていくお金も、出ていく心(=ストレス)も、使う時間も多かったように思います。 けれども人生とは不思議なもので、それらが無駄で、馬鹿らしい時間の浪費だったかと言えばそうではありません。 若くして、素晴らしい方々と仕事をご一緒できたのも、この無駄とも言える頑張りがあったから。 人知れず、やってきた努力を素晴らしい方々というのはそっと見てくれています。 中には私の肩書や出世の早さだけでチヤホヤした人もいます。そういう人は、退職したとたんに離れていきました。 しかし、驚くべきことに、自分が心から尊敬し、本当に大切にしたいと思っていた方々は、私の立場がどうであろうと、いつも応援してくださいました。 今、私の周りにいる「仕事仲間」は、ほとんどその時からの人生の大先輩たちです。 「私は君がどれだけ仕事をできるか知っている」 「君が誰よりも仕事をし、勉強をし、他者に心を砕いていたかを知っている」 そういって、すべてを手放した私に、仕事や大切な仲間、さまざまなチャンスを与えてくださり続けています。役員時代からですから、付き合いは15年くらいになるでしょうか。
独立したのは12年前ですが、そのときのリーフレットにこんなことを書きました。
「好きな仕事に懸命に努力をして、それがいつしか世の中の役に立つ。それが人様に喜んでもらえ、また自分が活かされる。そういう仕事を天職と呼ぶのだと思います」
この私の定義が間違っていないとすれば、いま私は紛れもなく天職についていて きっと社会のどこかで誰かが喜んでくださっていると信じて前を向いていられます。
好きな仕事を見つけるまで、たくさんの「好きではないこと」もありました。 でも、それは自分に与えられた試験。天職へ導かれるための、大切な準備期間と思ってどんな仕事も懸命にやってきました。 嫌いだから、好きじゃないからと手を抜いていたとしたら、 今、私の周りにいる「素敵な大人たち」は、自堕落な私になど興味も持たずに通り過ぎて行ってしまったことでしょう。
ヘッセの言う「自分に合った仕事」とは、自分の生きざまがそのまま映し出されたようなそんな仕事であるはずです。時にはつらいこともあるでしょうけれど、やはり喜びや学ぶ楽しさの方が大きい。 「人生を楽しみたかったら、楽しめる実力を身につける」「社会に貢献したかったら、まず自分が貢献できる力をつける」「人を喜ばせたかったら、自分が自分を愛してあげる」という順序を間違えず、目の前のことにひたむきに生きた先には、きっと「自分にあったまっとうな仕事」があなたを待っています。
世間の人の無責任な批評はあなたの人生に必要ありません。 あなたがあなたらしくあるために、「人生を楽しむ努力」してみませんか。
今日も心豊かな一日を!
Schoenen Tag noch! Text by Akiko Sekiguchi |
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