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濱野 裕貴子 キャリアカウンセラー/ワークショップデザイナー 笑門来福
「お江戸」「古典芸能」というちょっとナナメの切り口から、人生やキャリアについて考えてみたいと思います。
古典芸能で紐解くキャリア・仕事・生きること 趣味・カルチャー 2017-01-24
古典落語de「お江戸のイクメン」
育児を積極的に、かつ楽しんで行う男性のことを「イクメン」と言いますね。古典落語の世界にもいるんです、イクメンの代表格のような人が!
 

ここは、とある長屋。

初天神(天神様を祀る神社の、その年の最初の縁日。1月25日に行われる)に出かけようとする父親を、母親が呼び止めました。息子の金坊を一緒に連れて行ってほしいというのです。

金坊は大変なやんちゃ坊主。「連れて行ったら厄介なことになるから嫌だ!」と拒む父親でしたが、「何か買ってとか、絶対言わないから!」という金坊の言葉を信じ、しぶしぶ連れて行くことになりました。

 

親子連れ立って天神様の参道を歩いていると、道の両脇にたくさんの露店が見えます。

 

「ねえ、あたい、今日はあれ買ってくれこれ買ってくれって言わないから、いい子だろ? ねえ、いい子にしてたから…なんか買っとくれ」

 

案の定、金坊のおねだり作戦の始まりです。

何とかして言いくるめようとする父親でしたが、とんちの働く金坊にうまくかわされてし

まい、とうとう飴玉を買ってやることに…。

 

店先に並べられている飴玉をつまんでは、「これでいいだろ?」と金坊に見せるものの、金

坊は色が嫌だ、味が嫌だとなかなかOKを出しません。その都度「しょうがねえなあ…」と

指をなめ、また別の飴をつまみ上げる父親…。「おいおい、あんたいくつ買うんだい。あら

かた舐めちまったじゃないか!」と、とうとう飴屋に怒られてしまいました。

 

さらに進んでいくと、今度はお団子屋を見つけた金坊。「買って買って買って~~~~!」

と騒ぐ金坊にまたまた根負けし、お団子を買ってやることになりました。

 

「着物を汚すから蜜(みたらし)はダメ! あんこにしな」と厳しく言ってはみたものの、

「みつがいい~。み~~~~~~つ~~~~~~~!」と大声で泣き叫ぶ金坊には勝てませ

ん。しぶしぶ、蜜の団子を1本購入。

 

ああ、蜜が今にも垂れそうです。余分な蜜を舐めてから金坊に渡そうとする父親でしたが、

思わずペロペロ全部舐めてしまい…金坊に渡したときにはお団子が真っ白に…。

「うわーん、まっちろんなっちゃった~~~~~~!」

泣いて抗議する金坊に、なぜか余裕の父親。まんまと団子屋をだまして蜜の瓶を開けさせ、

真っ白になったお団子をチャポン。金坊も、たっぷり蜜の付いたお団子を食べることができ

ました。

 

さらに参道を進むと、今度は凧屋が。またまた金坊は駄々をこねて、一番大きな凧をせしめ

ます。

 

「ねえ、おとっつァん、あすこの原っぱでもって、凧上げて」

 

凧あげを迫られて、ちょっとだけ上げるつもりが、思わず童心に帰ってしまった父親。

「あの、おとっつァん、あたいに…」

「うるせえな、こん畜生は。あっちへいってろ。上がった上がった、上がったい。ああ、いい気分だなあ」

 

夢中になって凧あげを楽しむ父親を見て、金坊が一言。

 

「おとっつァん、そんなのあるかい、その凧はおいらンじゃねえか…。あ~あ、こんなことなら、おとっつァん連れて来るんじゃなかった」

今回紹介した「初天神」は、お正月によく掛かる噺です。実際に落語家さんの口演を聴くと、父親と金坊、露天商たちとの絶妙なやり取りがこれでもかこれでもかと繰り出され、笑いすぎて腹筋と顔の表情筋が痛くなってしまうほどです。

 

やんちゃな金坊の言動に翻弄されながらも頑張る父親、凧あげに夢中になってしまった父親を見てぼやく金坊。面白さの中にも親子の情愛が感じられ、聴いた後にほっこりした気持ちになれる古典落語「初天神」。現代の、育児に奮闘するイクメンとその愛情に包まれる子どもたちの姿が重なるような気がします。


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