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井上 ゆき フリーランスライター・編集者・保育士 一般社団法人日本伝統食協会
子どもには野菜を好き嫌いせず食べてほしい、外で伸び伸び遊んでほしい、算数嫌いにならないでほしい! そう願う母親は多いものの、実際は野菜もお外も算数も、ママ自身がニガテだったりしませんか? このコラムでは、日々の取材や8313(やさいさん)としての活動から得た経験・情報を、子育て中のお母さ…
子どもを野菜好き・お外好き・さんすう好きにしたいママさんへ その他 2015-10-28
森のようちえんで1日過ごしてみた!

子どもの外遊びを広げる意外なカギ

 先月の記事で森のようちえんについいて取り上げたところ、小さなお子さんを育てているママさん・パパさんから「森のようちえん気になる!」「うちの子にも体験させたいです」などと感想をいただきました。そこで今回は、長野県にある森のようちえんで1日過ごした体験から、感じたことをつづろうと思います。

 森のようちえん「ぴっぴ」でのこと。10月中旬でしたが、朝9時の登園時間はすっかり冷えていました。子どもたちもダウンジャケットや厚手のトレーナーを着ています。保護者のお母さんたちは皆、大きなボストンバックを携えて子どもたちを送りに来ていました。バッグの中には、子どもの着替えがたくさん入っているのです。14時の降園時間まで外で思いっきり遊ぶので、汗をかいたり泥で汚れたり。何度着替えても大丈夫なようにしています。代表のまゆさんがおっしゃっていました。「ぴっぴに入園するとまず、お母さんの洗濯への意識が変わるんですよ」と。

 私もブログで息子が畑などで泥んこになっている姿を掲載すると、「洗濯が大変だから、うちの子には泥遊びをさせてあげられない…」と感想をもらうことがしばしばあります。私は自分が登山やトレイルランが好きで、転んで泥まみれになることがあるので汚れはさほど気にならないのですが、普段の洗濯より面倒なのは確かですね。ここで「気にならない」と思えるようになるのか、「外で遊んだら、こんなものだ」という諦めがつくようになるのか……。子どもの外遊びの世界が広がるかどうかは、保護者の洗濯への意識にかかっているのは事実のようです。

 さて、登園してきた子どもたちは、森の中で思い思いに遊んでいます。ある一角で、スタッフの方と一緒に葉っぱやお花を飾りつけている子どもたちがいました。今日はお誕生日のお友達がいるので、葉っぱとお花でケーキを作っているのだそうです。

 

全員ができなくていい、その自由さ

 しばらくすると、シャンシャンシャンと鈴の音が鳴り、それぞれに遊んでいた30人ほどの子どもたちが、森の中の丸太を切った椅子が並ぶスペースに集まってきました。朝の会が始まります。

最初に、お誕生日の女の子が呼ばれ、ほかのお友達にエスコートされながらみんなの前に来ました。そして、先ほどの葉っぱとお花のケーキのろうそくに火がともされ、お祝いをしました。ケーキはお家で食べるものであって、森のようちえんでは、このようなお祝いの仕方なのですね。

 その後は、私たち見学者を紹介してもらい、この日は県議会議員も見学に来ていたので、苗字ではなく例えば「タケシさん」とファーストネームで紹介されました。この森のようちえんでは、スタッフも「先生」ではなく、「○○さん」とファーストネームで子どもたちから呼ばれているのです。スタッフは上に立つ者や教育する者という立場ではないからです。

話が逸れましたが、そのあとは、絵本を読んだり歌を歌ったり、手話をしたり!! 2歳~5、6歳までみんな一緒なので、しっかり手話ができる子もいれば、見よう見まねでやってみる子もいます。“必ずできなければいけない”というわけではないのですね。そこに、見守るあたたかさを感じました。

 朝の会が終わると、みんなまた三々五々に森の中を走っていきました。わが家の息子(1歳9か月)も、森のようちえんにお邪魔するのが2度目とあって、ずんずんと森の中に入って行きました。

 

森の中で次々に展開される、終わりのない遊び

 子どもたちの遊びを見ていて強く感じたのは、「終わりがない!」ということです。4人くらいで遊んでいたかと思うと仲間が増えて、いつの間にまったく違う遊びになっていてメンバーも変わっている……。さっきここで遊んでいた子は、もう姿がありません。

太い倒木に縄跳びがくくりつけられていて、「まぐろが釣れたぞー」と一生懸命に縄をひっぱる男の子。「手伝って!」と頼まれ、私も一緒に縄を引っ張っていると、私のウエストポーチを引っ張る子が現れ、さらにその後ろにもほかの子がいて……、まるで「おおきなかぶ」状態(笑)。少し離れた所には、「お父さん、夕ご飯のまぐろ、待ってますよー」と、ままごとをしている女の子たちが叫んでいました。

別の3歳の女の子が私のところにやって来て、「ミミズの取り方を教えてあげる!」と声をかけられました。「どこどこ?」と森の中を着いていくと、彼女は横になっている丸太の1つを足で蹴り、丸太の下には本当にミミズがいました! ほかの丸太の下には幼虫がいたので、「これもミミズ?」と聞いてみると、「ちょっと待って、虫眼鏡で見なくちゃ!」と言います。しばらくすると、穴が空いた葉っぱを持ってきて、その穴からまるで虫眼鏡のように観察するではありませんか! 「これはようちゅうだから、ふかふかの土のベッドにねかせてあげないとね」と、女の子は手で近くの土を掘り起こして幼虫を置き、やわらかい土をかけていました。まさにごく自然に、自然と付き合っているその姿と言動に、心が打たれました。

 森のようちえんでの1日を書こうと思いましたが、この時点でまだ11時くらいです(笑)。一般的な幼稚園ではすでに2~3つのプログラムが終わっている頃でしょう。しかしここでは、決められた森の中であれば、お昼ご飯の鈴が鳴るまで場所の制約も時間の制約もありません。森の中での遊びの豊かさ、子どもたちの発言のおもしろさや発想力の高さに、何度となく驚かされました。大人の私が「○○をしようか!」なんて呼びかける隙すらありませんでした。そして、あらためて思い知りました。「私も外が大好きだ!」と。


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