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村井 えり ディレクター兼シナリオライター MURAIERI
世間知らずで勉強もできなかった私にとって、映画は多様な人生の教科書でした。心の奥深くにちょっぴりトゲが刺さるような、女性(と女優)の人生について考えさせられる作品を紹介しますので、是非一緒に考えていただけると嬉しいです。
映画が描くオンナの人生いろいろ 趣味・カルチャー 2014-07-26
魔法にかけられて

『魔法にかけられて』   Enchanted (2007)

監督      ケヴィン・リマ
出演      エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、ジェームズ・マースデン、スーザン・サランドン、イディナ・メンゼル


♪ありの~ままの~・・・というわけで、皆さん『アナ雪』ご覧になりましたか。今さら言うことでもないですが、何といっても楽曲が素晴らしく、ミュージカルの魅力を伝えることに多大な貢献を果たしたと思うのですが、「え?これがディズニー?」という、斬新な内容も驚異的なヒットの要因となったようです。

著名な評論家の方々もその内容に衝撃を受けたようで、中森明夫氏は「女は誰もが自らの内なる雪の女王を抑圧し、王子様を待つ凡庸な少女として生きることを強いられる。それを私は“アナ雪症候群”と呼んでみたい」と解説。荻上チキ氏は「異質であるものとの共生、調和がテーマである」と分析しました。
しかしながら私は、『アナ雪』の内容に、そこまでビックリしませんでした。なぜなら・・・『魔法にかけられて』を観ていたからです! 『アナ雪』に先立つこと7年、ディズニーの進化は既に始まっていたのでした。『アナ雪』を観た方、これから観るという方は、是非この作品も要チェック!

ディズニーならではの手描きフルアニメーションで描かれる、魔法の国アンダレーシア。動物たちと暮らすジゼルは、エドワード王子と出会い、初対面で婚約。(←ココ注目!)
しかし恐ろしい女王によって、ジゼルは「永遠の愛などない国」に飛ばされる。「永遠の愛などない国」とは、現代ニューヨークだった! ここからが実写で、エイミー・アダムス演じるジゼルはお姫様言動から不審者扱いされ、ドレスは雨に濡れてグチャグチャ。やがてひょんなことから、離婚訴訟専門の弁護士で、シングルファーザーのロバート(パトリック・デンプシー)と出会う。一方、ジゼルを探しにエドワード王子(ジェームズ・マースデン)もニューヨークへ現れて・・・。

その後の展開は、ある程度予想通り…なのですが、出会ったその日に婚約ってどーよとか、いい年した男女が歌ばかり歌うとか、全く役に立たない王子様とか、ディズニーストーリーの“お約束”に対するツッコミが満載。“お約束”にシラケていた人ほど楽しめる、セルフ・パロディ映画なのである。しかも、この時点で既に男性は頼りなく、女性の方が強い。まあとはいえこの作品は最終的に、男女の甘いロマンス映画にきっちり仕上げていたが、それから7年…。コメディでもパロディでもない『アナ雪』は、さらに先へと行ってしまったようだ。時代の変化、当然といえば当然なんだろう。

出演時に30歳をゆうに越えていたエイミー・アダムスは、お姫様というにはトウが立ちすぎ(三十路越えキャスティングは、わざとでしょう)。このまま、カワイイ路線で行くのかなあと思ったら、『ザ・ファイター』(2010)『ザ・マスター』(2012)などで、演技派として賞レースの常連になってしまった。特に公開中の『her/世界でひとつの彼女』(2013)での、力の抜けたたたずまいは素晴らしく、こちらも必見です。

『アナ雪』がらみで、もうひとつ。ロバートの恋人を演じるのは、イディナ・メンゼル。そう、♪レリゴーーの歌声で、世界にその名を轟かせることになった人。
やはりダメ男ばかり出てくるらしい『マレフィセント』も大ヒットで、ディズニーの勢いは止まらない。実写版『シンデレラ』『101匹わんちゃん』『ダンボ』(?!)等々、そしてこの『魔法にかけられて』も、続編が決定しました!
女性観客をターゲットに、時代にあわせた女性の願いや夢を反映させてきたディズニー、次はどんな変化球を投げてくるのだろうか。

 


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