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■ 東京ウーマンインタビュー


女子力で暴力にカツっ!5年越しファッションショー仕掛け人の熱い想い

女子力で暴力にカツっ!
5年越しファッションショー仕掛け人の熱い想い

中野 宏美さん
特定非営利活動法人しあわせなみだ 代表
まず中野さんの運営するNPO法人「しあわせなみだ」では、どんな活動をされていますか?
主に3つの活動をしています。1つ目は性暴力等にあった人を応援する事業、2つ目は性暴力等にあった人を美容の力で輝かせる事業、そして3つ目は性暴力ゼロの社会を目指して啓発していく事業です。NPO設立時から、施設の女性をヘアカットモデルとして紹介したり、メーク講座をしています。

昨年は、助成金を得て、子どもと女性を対象とした虐待連鎖防止事業として、居場所のない子ども達に宿泊先を提供しました。また、性暴力にあった当事者をケアするためのグループ活動を行っています。その他は、講演活動やWEBサイトでの情報発信をしています。
なるほど。様々な活動されていますね。そもそも中野さんが「しあわせなみだ」を立ち上げたきっかけは何ですか?
はい、きっかけは3つありました。1つ目は、私は大学で福祉を専攻していて、在学中に施設を訪問する機会があったのですが、家族から暴力を受けて施設に避難してきた女性や子どもがすごく多かった事に衝撃を受けました。2つ目は、親しい友人がDVにあったのですが、全く気づいてあげられなかった事です。

3つ目は、積極的に活動されている色々な社会活動家さん達の活動を知り、その方達は福祉を学んでいたわけでもないのに、人権に寄り添った活動をされている事にショックを受けました。自分は福祉を学んでいたにもかかわらず、何も行動していないでは無いかと。

また、そのときちょうど性暴力被害にあった女性が書いた「性暴力被害にあうということ」という本を読みまして、これは日本社会の大きな課題だということが分かり、自分自身の人生で打ち当たった課題と、現代社会の課題が一致した様に感じました。それでこの課題について取り組もう!と決断しまして、2009年に活動をスタート、2011年にNPO法人化しました。
福祉活動に積極的に取り組まれていたのですね。実際の活動を通して、日本の性暴力の状況をどう思いますか?
活動を初めて5年ですが、この5年で性暴力を取り巻く環境は大きな変化がありました。まず、性暴力被害に遭い、顔と名前を出して、活動される方も出てきています。また、ブログで発信する方や、メディアで取り上げられる方が増えました。これは以前に比べとても大きな変化です。つまり、それだけ以前は表立って活動しづらかった、そしてマスコミも取り上げないようにする風潮がありました。
なるほど。被害者が声を上げにくいのは分かりますが、メディアにも取り上げられにくかったのですね。
そうなんです。見えなくされ隠されてきました。でも最近では、レイプやわいせつだけでなくDV、ストーカー、リベンジポルノなどについてもだいぶテレビや新聞で取り上げられるようになりました。それに加えて警察の対応も徐々に改善されてきています。そこに今年は、刑法の性犯罪見直しの検討(※1)という大きな動きがありました。

(※1)刑法見直し:この検討会では、性犯罪の「定義」「法定刑(懲役を何年にするか)」「非親告罪化(被害者が訴えなくても加害者逮捕に向けた捜査を開始することができる)」「時効」等の見直しが検討されています。
それでは、被害環境も改善されてきていますか?
残念ながら被害環境はあまり変わっていません。つまり、性暴力は減っていません。警察に届けられた1年間の強姦件数は約1200?1400件、強制わいせつは約7000件。ただ、強姦に遭い、警察に届けられる件数というのは実際数の13%。つまり、87%は届けていないことになるため、実際に発生している強姦は1万件、わいせつは6万件以上という計算になります。膨大な件数のほとんどが、警察に届けられていない現状があります。

こういった問題は、誰にも相談できない、理解が得られない、孤立してしまう方が多いのです。内閣府の調査(※2)では、女性の7.7%はレイプ経験があるという数字が出ています。そしてこの数字は過去10年ずっと変わっていません。また、近年DV殺人やストーカー殺人等、凄惨な事件が続いたことから、マスコミにも注目されるようになりました。そして、松島元法務大臣が、強盗罪より強姦罪のほうが罪が軽い現状を指摘したことから、刑法における性犯罪の見直しが、議論されています。

(※2)内閣府調査結果: 「男女間における暴力に関する調査(概要)」
「男女間における暴力に関する調査(全文)」
私も中野さんが開催された「女子力で暴力にカツっ!~女の子の幸せを願うファッションショー」の時に、その数字をみて愕然としました。しかし、その後のモデルさん達の明るく力強い笑顔に感動しました!彼女たちはどういった女性だったのですか?
ファッションショーでは、性暴力ゼロに共感をしてくれている女性達がモデルになってくれました。このファッションショーを通じて、性暴力にあった人達に、辛い経験を乗り越えて、いつかこのステージに立てる様になれるよ!そうなれるように応援しているよ!というメッセージを発信し、希望を感じてくれたらいいなと思っています。
中野さんはファッションショーの主催はもちろん初めてですよね?どうしてファッションショーを開催しようと思ったのですか?
実は、性暴力ゼロを発信するファッションショーをしたい!というのは、活動を始めた頃から思っていたんです。ただ当時の私には経験も人脈ももちろんゼロ。だから今回は、5年越しの熱意がついに叶った!という感じです(笑)。 なぜファッションショーだったかというと、施設で行っている、カットモデル事業やメーク事業で、暴力や虐待にあい、心身疲れ果てて自信を失った女性達が美容の力でこんなに輝けるんだ!という体験をしたことが大きいです。だから女性の美の集大成、憧れの場であるファッションショーをいつかやりたい!とずっと考えていました。
経験も人脈ももちろんゼロからのスタート。ファッションショーを「やれるな!やろう!」と思ったのはいつですか?
今年に入り、しあわせなみだの監事が大学院の講師をしているのですが、授業の一環としてクラウドファンディング(サイトを通じた資金調達)でお金集めをしていただける事になりまして。それが有り難く希望金額を達成できたので、さあお金も集まったからファッションショーをしよう!ということになりました。そのお誘いがなければ、今年開催できるとは思っていませんでした。

ふりかえれば、性暴力ゼロを発信するファッションショーをやりたいと思ってから、この5年間、ずっと、ファッションショーをやりたい!やりたい!と周りに言っていたんです。取材など、周りに夢を聞かれれば、「ファッションショーがやりたい。」と必ず答えていたくらいでした。それが良かったんだとおもいます。

本音を言えば、ショーを運営するスタッフが決まってから、ファッションショー開催に向けた具体的な準備を進めたかったのですが、こういうことは運とタイミングが大事だと思ったので、よしやろう!と腹を決めました。大変有り難い事に、クラウドファンディングでは69万円を達成目標として、71万円が集まりました。
そうですか、そんな嬉しいご縁と中野さんの決心で今年の開催が決まったのですね!「クラウドファンディング」の反響はいかがでしたか?
正直、ファンディング締切日の前日まで、目標金額に程遠い状態で。しあわせなみだで不足分を負担する準備を進めていました。また、寄付総額の7割以上が、なんと以前からしあわせなみだや私を知ってくれている方でした。クラウドファンディングはネットで寄付を募るため、初めてしあわせなみだの活動を知った方の賛同が多いと思っていましたが、この5年間様々な活動をし、たくさんの方々と交流してきたからこその達成なのだと痛感しました。
7割が知人からの寄付だったとは、かなり驚きです。ファッションショーの企画を進める上で一番の課題は何でしたか?
いつか必ずやりたいと考えていたので、ヘアメイクはこの人に頼もうとか、他団体が主催するファッションショーのお手伝いをさせてもらったり、私なりに実現に向けて動いていたので、何とかできるだろうという自信はありました。でも、一番困ったのは、ショーの演出者と、舞台監督でした。

やっぱりなかなか経験者がいなくて。でも素人に毛が生えたような学芸会レベルのものは開催したくなかったんです。プロの手による最高のレベルのファッションショーにしたかったので、そこは絶対に欠かせない人材だと考えていました。たくさんの方に相談してみたのですが、どうしても見つからない。
どうやって見つけたのですか?
とても有り難い事に、モデルを集めてくださった団体のご縁で、数万人規模のイベントを手がける監督さんと、東京ガールズコレクションも手がける演出家さんにご協力いただくことができました。
ファッションショーを振り返り、いかがでしたか?また、実現できたのはなぜだと思いますか?
クラウドファンディングにご協力くださった方、そして当日観客として参加してくださった方には、女性以外の方も多く嬉しかったです。

実現できた要因としては、よく、やりたいことは口に出せと言いますが、本当?と半信半疑でしたが、今回の事で「やりたい」「やりたい」と口に出すのは本当に大事だなと実感しました。NPO法人化する前から、個人ブログに、性暴力ゼロを発信するファッションショーをやりたいって書いていたんです。たぶん、誰も実現できるなんて思っていなかったのではないでしょうか (笑) 
そういえば中野さん、以前お話したとき、私にもファッションショーをやりたいとおっしゃっていましたね。「しあわせなみだ」では今後どんな活動をしていきたいですか?
明るく楽しく性暴力ゼロを伝えていくという活動は続けていきたいです。暴力が蔓延する社会ではなく、愛が育まれる平和な社会を目指そう!といったポジティブなメッセージを発信していきたいです。ファッションショーも続けていきたいです。性暴力にあった後に泣いて辛いだけの人生を歩むのではなく、その経験を乗り越えて、明るく楽しい人生を送れるんだということを伝えていきたいです。
中野さんは普段は仕事をしながら、活動をされていますよね? お忙しいかと思いますが、仕事としあわせなみだの活動をどうバランスよくマネージメントされていますか?
まず、「しあわせなみだ」の活動を始めるために転職しました。というのは、福祉施設や公的機関と関わるため、平日の日中や就業後に活動できる仕事でないと駄目だなと思ったので、非常勤にしました。

あと、私は朝の方が仕事がはかどるので、仕事に関わるメールは朝対応することで、自分の仕事と活動のスケジュールをマネージしています。気分転換に週に一回6キロほどジョギングしていまして、これがかなり良いリフレッシュになっています。よく褒められる「しあわせなみだ」という団体名も走っている時にひらめきました!
活動を始められて、生き方や考え方に変化はありましたか?
世界が平和になればいいなと思っていて、そのために私ができることは「性暴力をゼロにすること」でした。性暴力のない社会はすごく平和だと思うので。最初は1人で始めた事が、法人になり、一緒に活動してくれるメンバーも増えて、その中で今回のイベントも含めて段々やりたい事を実現できるようになってきました。最近は、この道で今後もやっていって良いんだと感じられるようになりました。

また、性暴力の活動をしています。と言った時の相手の反応が気にならなくなりました。以前はそう言って引かれたら嫌だなと不安な気持ちがありましたが、活動を始めて、賛同してくださる素敵な方々に出会え、たくさんの仲間ができたのが大きいと思います。
これからNPO法人化や社会活動家を目指す方に対してアドバイスをいただけますか?
うちは公的機関と関わるため、法人化したことで活動の場がかなり広がりました。ただ毎年、財務関係の書類を提出しないといけないので、経理関係の負担が増えました。それと、「社会起業家になりたいけど、どうしたらいいですか?」と質問を受けますが、社会起業家にかっこいいイメージを抱くというのは嬉しいことですが、本気で解決したいと思う社会課題がないと続かないと思います。もしこれがやりたい!とう事があるのなら、まず今の自分にできることから始めれば良いとおもいます。
性暴力ゼロを実現するために、私たち1人1人にできることありますか?
「自分を愛する」気持ちを持つ事だとおもいます。自分を大切にすることは、暴力に遭うリスクを減らします。なぜなら、自分は暴力に遭う存在ではないという自己尊重の気持ちから、暴力に気づき、守ろうと動けるからです。あと、自分を大切にしている人は、他人に暴力を振るいません。性暴力の経験と向き合った方の中には、「加害者にも幸せになって欲しい」と言う方がいます。

それは、加害者が幸せになれば暴力を振るわなくなるから。加害者も何かしらの不幸がありそれが暴力に現れている場合もあるのです。なので、まずは自分を愛する気持ちを持って、周りの人達へ思いやりを持って接してください。
加害者になる原因は何でしょうか?減らす方法は?
加害者になる原因は色々ありますが、そもそも自分が加害者だと気づいていない人が多いです。なぜかというと、暴力もまたコミュニケーションの手段の1つだからです。暴力によるコミュニケーションはとても楽に他人を自分の思い通りに動かせてしまうので、常習化しやすいのです。

この暴力のコミュニケーションに慣れてしまった人は、暴力を使わないと決心してトレーニングしていく必要があります。性依存症も治療法が確立されていないのが現状です。加害をどう減らしていくか、加害をしにくい環境を整備していくことが、大きな課題ですね。
これからを生きる女性へ応援メッセージをお願いします!
私が最近実感している言葉に、「私は一人じゃない。一人じゃないけど一人だ」という言葉があります。「私は一人じゃない」というのは、必死な時ほど、自分が誰にも認められず、理解されていないように感じますが、実はたくさんの人が応援してくれている、ということです。「一人じゃないけど一人だ」というのは、「自分の人生を歩む責任は、自分にある」ということです。かけがえのない人生を、お互い尊重し合い、大切に生きていきましょう。
とても深いですね!素敵な応援メッセージをありがとうございます。中野さん今日はお話下さりどうもありがとうございました!
中野 宏美さん
1977年東京生まれ。東洋大学大学院社会学研究科修了。社会福祉士。 友人がDVに遭ったことをきっかけに、できることから始めようと決意。「2047年までに性暴力をゼロにする」ことを目指して、2009年「しあわせなみだ」を立ち上げる。2011年にNPO法人化。現在は、性暴力等に遭った方を応援する【Cheering Tears】、性暴力等に遭った方を美容の力で輝かせる【Beautiful Tears】、性暴力ゼロを実現するために社会に働きかける【Revolutionary Tears】を展開。2011年女性デープレゼンコンテスト「女性デー特別賞」受賞。2013年度東京都「性と自殺念慮調査委員会」委員。
特定非営利活動法人しあわせなみだ:http://shiawasenamida.org/
ファッションショーの経験ゼロ。それでも「暴力ゼロを発信するファッションショーをやりたい!」との強い意思で、これまた初挑戦のクラウドファンディングを駆使し、見事に5年越しの夢を成功させた中野さん。

「性暴力」という、非常に深刻な問題に取り組む中野さんを以前から注目し、応援してきましたが、今回お話をしていただき、改めて中野さんの前向きな人柄や真っすぐな生き方に感銘を受けずにはいられませんでした。女性の活躍が注目される昨今の日本において、「女性の7.7%はレイプ経験があり、その数字は過去10年変わっていない。」という現実に衝撃的を受けました。

中野さんは、暴力のない社会を実現するために、私達1人1人にできることは「自分を愛する気持ちを持ち、周りの人達へ思いやりを持って接すること。」だとおっしゃいます。私も女性の愛が広がるライフスタイルを応援する1人として、中野さんの言葉を大切に、これからも活動していきたいと思います。
和田 江美子
女性視点で、愛が広がるライフスタイルをトータルサポートする女性応援団体「ガールズ ラヴィング プラネット (GLP) 」の代表理事。東京を拠点に、様々な女性応援活動を行っている専門家を講師に招き、女性限定セミナーや交流会の開催など、女性が語り合い、生涯の質を高めあえる学び場と、女性の悩みの解決、癒し場を提供し、女性の健康、メンタルヘルス、自己愛、恋愛、結婚、離婚、夫婦愛、家族愛、子育て、性生活、性教育など、心身ともに健康で愛が広がる( LOVExLIVING = ラヴィング )ライフスタイルをテーマに活動しています。
女性応援団体 ガールズ ラヴィング プラネット (GLP)
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