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■ 東京ウーマンインタビュー


ストレングスファインダーの達人に聴く!自分の強みを使いこなす“つぼ”とは?

ストレングスファインダーの達人に聴く!
自分の強みを使いこなす“つぼ”とは?

森川里美さん
ビジネスコーチ
森川さん、人材研修現場でも広く採用されている、ストレングスファインダーについて改めてお聞きしたいのですが、自分の強みを知るということは具体的にどういうことなのでしょうか?また効果などもお教えいただけますか?
強みを知るということは、“自分を正しく認識する”ということなんです 。 我々はみんなそれぞれ個性があり、異なっています。動物で例えるならばクジラだったりゾウだったり、クジャクだったりするわけです。しかしもし仮にゾウがクジャクを見てあの美しい羽が自分にも欲しいと願ったとして、悲しいかな、クジャクのようなきれいな羽は生えてきません。

ではこのゾウが「私も美しくなりたい」と言って、例えば羽をくっつけたり、身体に色を塗ったりしたとすると、むしろ逆に醜くなってしまうかもしれません。 でもゾウには、長い鼻や大きな身体、重いものも運べる力があります。だからそのゾウとしての特性を生かし、例えば重いものを運びさえすれば、「さすがゾウ」と言われて頼りにされるわけです。

ゾウだからこそ頼んでもらえる仕事で、どんどん仕事が入ってくる。自分の強みを知ることで、ゾウであれば長い鼻を利用して仕事ができる。効果はもちろんあるでしょう 。これが“自分を正しく認識する”ということです。従って、自分を正しく知る、把握できるということはどういうことかというと、ある種“あきらめ”なんですね。“完璧な人間であろうとすることへのあきらめ”です。
なるほど、とてもわかりやすいですね。私自身も実際に受けてみて自分の強みの上位5項目は理解したのですが、仕事においてどんなことを意識すればよいのでしょう?
ストレングスファインダーは、自分に何が向いているか、がわかるツールではなく、自分が何かをするときに、どんな風にするか、がわかるツールなんです。いうなれば、自分が意識せずに使っている”利き手”がわかるツールです。もちろんDNAのような先天的な要素もあるけれども、後天的に身についた習慣も含め、自然にできる能力を知るものです。

ですから右利きであれば、がんばって左手で毎回毎回意識して文字を書くよりも、自然に右手で書く方が時間も短くてすむし、労力を必要としません。その分、他のことにパワーをかけられるので、そのエネルギーでどんどん前に進むことができますね。 強みは磨こうと思えばいくらでも磨けるし、使えば使うほど上手になる。

強みじゃない部分を足りないからといってがんばって磨いても、実は40点が50点にしかならないのですが、強みは違う。どんどん使って磨けば、100点が200点になるくらい、その能力をとがらせることができます。 言い換えると、強みを磨く、っていうのは、自分がもっていないものを得ようとすることを諦めることでもあるんです。

ゾウの強みは鼻なのに、鼻をもっと効果的に使おうとするんじゃなくて、うざぎのふわふわを身につけようと頑張っても無理なんです。うさぎも、「自分はなんでへなちょこでびくびくしているの?ゾウの真似をしたら、少しは強くなれるの?」と頑張っても、やっぱり力もちにはなれないんです。無い物ねだりをしないで、諦めて、自分の利き手を磨く方が効果的なんです。
本当に興味深いですね。自身の強みを把握できたとしても、具体的にどうすれば、会社や仕事の中でこれら強みをより磨けるような行動におとしこめるのでしょう?
まずはいつでもどこでも行動を起こす瞬間に、自分の強みの何を使っているのか意識して自覚してみてください。もし仮に例えば「着想」と「活発性」が強みとしてあるのであれば、思いついてメールをぱっと打った瞬間に、「あ、この瞬間に自分は『活発性』を使っていたな」と自覚する。

何かを見たり聞いたりした瞬間に、まったく別の知っていたこととつながって「はっ!」とひらめき、頭の中でスパークがおきたとき、「あ、この瞬間に『着想』がきたな」など、何か行動を起こした瞬間、瞬間に使っている強みが「活発性」なのか「着想」なのか、あるいは他の何なのかを自覚できるようになれば、それが効果的に働いていたか、効果的でなかったかもわかる ようになってきます。 そうすると傾向と対策と同じ考えで、次に実現させたいことに向けて、自分でどう道筋を立てれば行動がしやすいのかわかってきます。
では例えば、経営者になろうとしている人の強みの上位が、あまり経営者で必要とされないものだったりする場合には、そういう強みを持っている人と組んだりするのが正解なのでしょうか?
そうなんです。人はみんな偏っているので、一人でやろうなんていうことがもともと無理で、いろんな人と協働することで、仕事も成功するんです。 自己観察を通じてうまく機能しているところと、うまく機能していないところを把握する。そうしたら、ネガティブなところを減らせますよね。

たとえば、自分の強みがまるで”包丁”だと自覚ができれば、一瞬切りそうなタイミングで気がつくことができるし、切ってしまった後であれば「ごめんなさい」と謝れるし、絆創膏を持っておくという準備もできます。そして自覚があれば、その危険な部分をサポートしてもらえる人と組むことができる。包丁だからこそ、材料を切って料理が作れるわけですから、サポートしてくれる人がいれば、料理を作るという仕事にフォーカスができるわけです。

例えばエネルギーの強い方はそうですが、一方エネルギーの強くない方はどうするかというと、エネルギーが高い人にくっついて仕事をする。その人のことを尊敬できて、その人と一緒に仕事をしたいと思えるような人がいれば、その尊敬するエネルギーの高い人自身になるというのはあきらめて、その人と一緒に仕事をする、サポートすることを通して共に実現する、という手段がとれますよね。 強みに特化するということは、最初のうちとても苦しいし悔しいし悲しいし、しばらく葛藤で受け入れられないとは思うのですが、しばらくしてあきらめてくると「とりあえずどうしようもないものなのだ」と思える。

ペンギンは、羽らしきものがあるので、自分もとべるんじゃないかと思って飛びたくなる。でも、実際には飛べない現実がある。鷹のように飛べないけれども、でも泳ぐことはできる。鷹は飛べるけれども、海の中を泳げるかというとペンギンのように泳げないわけです。
強みにフォーカスをするということがどういうことなのか、骨身にしみてわかります(笑)。経営者や独立する方のストレングスファインダーの傾向はありますか?
人間関係構築力資質(後述※)に集中していない方、これはストレングスファインダーの資質34種類を大きく4つの分野にわけて理解するためのものなんですが、その他の影響力資質や実行力資質、戦略思考資質の分野にTOP5の資質が多い方は、独立して仕事をしたいと思う傾向はあるかもしれませんね。人間関係資質に集中している方ですと、やはり組織や人についている方がいいように思います。

仮に人間関係資質に集中している方が一人で独立すると、結局みんなに気を遣ってお金をもらえなかったり、それで悩んだり。ここで私が仕事をもらったらあの人に悪いだとか、この見積で出しても大丈夫だろうか、と気を遣いすぎる傾向があります。であれば代わりに交渉してくれる方と組むか、組織の中で働くか、誰かに奉仕するかとかの方が向いているでしょうね。
もし自分が得たい資質があって、でもそれがなかった場合、経験値などで将来的には得られることができるのでしょうか?利き手の矯正のようなものですね。それともやはり、もうあきらめなければならないのでしょうか?
まったく希望がないわけではありません。ストレングスファインダーはTOP5からあとに続く6位以下も34種類全て出せるので、34種類だしてみて、意外にすぐ10番目くらいにあるじゃないかということであればそれを伸ばすこともできるし、あと仮に例えば人間関係構築力の資質がなかったとしても、これとこれを組みあわせれば人間関係資質たるものになりうるじゃないか、という方法もありますよね。

例えば学習欲と目標志向がTOP5にある方ならば、学習欲の知りたいという好奇心を"人”に向けてたくさん質問をする、そこに目標志向の数字でゴール設定が得意なところをくっつけて、「今週は毎日10人に10個ずつ質問しよう!」と設定すると、周囲の人から見たらまるで人間関係構築力の資質が高いように見えます。その役割にあった言動をするのに、自分が持っている才能のどれを使えばいいか考えて、役割が必要とする言動を作っちゃえばいいんです。
そうですね、役割ですものね。ただ、やはり持っている強みに集中した方が効率的?
はい、強みに集中するほうがとんがりますよね。多くの方が同じようなことをやろうとしているような状況であれば、アウトスタンディングでとんがる必要があるでしょうし、何かを捨ててあきらめてエネルギーを特化していく必要がありますよね。
例えば独立している方で、まだ大きな会社にまで成長していない。しかし、自身の強みに特化出来れば、更に会社が大きくなるということはあるのでしょうか?
YESでもありNOでもあります。今やっていることが何故うまくいかないのかという理由は、強みに特化していないからというよりはむしろ、強みではない部分に力を注ぎすぎているケースが多いようです。例えば、独立したい方の傾向としては、人間関係構築力が相対的に低い人が多いんです。でもいい人にみられたいの(笑)。

やさしい人に見られたいとか、ひどい人と思われないように時間を割いて、でも結局最後には人間関係を優先できないから結果がでるのが遅くなる。ですから、いい人であろうとすることをやめる、ひどい人、って思わせておけばいいわけです。
なるほど。とはいいつつ、トップは人間関係を大切にし、社員のモチベーションをあげなければならないわけですが、どうやって社員とコミュニケーションをとることができるのでしょう?
苦手だと認めることですね。例えば私は活発性×達成欲で、ブルドーザーみたいに前に進んで周囲を疲弊させちゃうところがあるんですが、「ごめん、私の活発性×達成欲は、人が疲れていることに気付かないの。気づけなくてダメなことがあったら言ってください。でもその代りみんなのために仕事とってくるからね」と言ってしまう。自分にダメなところがあって、そのダメなところを認める人間に対して、責める人は少ないですよね。

でも本人がダメじゃないふりをして、周りのみんなにはバレバレで、陰でいろいろ言われているというケースはよくあります。何故このケースがだめなのかというと、ばれちゃっているからです。ゾウがクジャクの羽をつけて歩いていると、違和感もあるし、傍で見ていても気持ちが悪いわけです。ですからゾウだと認めてしまう。 自分がクジャクのようにキラキラしていないことを認め受け入れてしまえば、「ゾウさんは輝きが足りない」と言われても、その通りなんです。

悲しい、悔しい。でも、しょうがない。ゾウだから。ゾウにしかできない部分で勝負しようと決断できれば、クジャクのふりをして、「ちゃんとクジャクに見えているだろうか」という背伸びの心配や不安で悩むことはなくなります。悩むと脳の前頭葉のエネルギーをよく消費しますし、疲れますよね。エネルギーの浪費でもったいないし、とんがれない。 24時間という時間は誰にでも与えられているものなのに、不毛なことに時間を使ってしまうわけです。
・・・ものすごく勉強になります。 では自分が反対に社員だった場合、上司とそりがあわなかったり、無理難題を言われてしまう場合もありますよね。そういうケースではどうやって対処すればよいのでしょう?
自分の強みによって、効果的な対処方法が違ってくると思います。 無理難題を言ってくるその上司だって永遠ではないということは考慮にいれつつ、上司がどういう人であっても、自分の強みを用いて解決する。例えば、戦略性が上位にあるならば、上司の無理難題を無駄なエネルギーを使わずかわす、ということをゴールにたてて(まるでナビの目的地としてこの情報を入力するみたいに)、そこにいたるアプローチを次から次と考えていく。

もし、調和性が上位にあるならば、どんな小さなことでもいいので、上司との共通点を探して意識する(あいつにも奧さんと子どもがいる。家に帰ったらオムツ取り替えて奧さんに文句言われている点では同じに違いない)、等です。 最上志向の方は、上司に対して「マネージャーなんだから、もっと優秀であるべき」という期待が、他の強みの方よりも強いように思いますが、ちょっと覚えておくと便利なのは、よくマネージャー天井説って聞きますよね。成果を出しながらポジションがあがっていくマネージャーも、どこかの時点で、自分の能力の限界がきて、本当にその役割に適した能力のない人がついてしまうというやつです。

そういったマネージャーが何%いるかわからないですが、なってはいけない人がマネージャーになっている可能性があるのだから仕方ない。自分の限界を超えた人もいるということを前提に考えればよいわけです。そうすると、マネージャーだからといって全員が、自分よりも優秀で優しくて、成長させてくれて応援してくれて、モチベーションアップさせてくれるなんてことは甘いわけです。でもそのポジションまであがった理由があるわけですから、どうやってそのマネージャーを勝たせてあげればよいか、今のポジションで自分が成長できる仕事をどうすれば獲得できるか、別枠で考えればよいわけです。

マネージャーが何とかしてくれないからといってもんもんとしていると、自分の右手も使えない、無理に左手も使わないといけない、とエネルギーばかりを余計に消耗して短い人生が終わってしまいます。ですから、強みに特化するということは、非常に効率的にもなりますよね。
こんな解決法があるなんて思ってもみませんでした。これは是非、組織に所属して働いている多くの方々に聞いていただきたい話ですね。是非私もトレーニングなどのコースを受講したくなりました。今後、森川さんのご活動の予定をお教えいただけますか?
今年の7月に、ストレングスファインダーを本格的に学べるスクール、ストレングス・ラボをスタートしました。自分の強みを理解し、有効に活用して人生をよりよくしていこう、強みを使って皆に貢献しようという方が集う場所です。ぜひ多くの方々にご参加いただきたいです。
本日はありがとうございました。ますますのご活躍を楽しみにしております。
森川里美さん
大学卒業後、日本能率協会総合研究所で商品開発&マーケティングに関わった後、米国の世論調査会社ギャラップの日本支社に勤務。人の強みを発見して人財育成に活用するツール「ストレングスファインダー」のコンサルタントとして、企業の人財開発、組織活性化、チームビルディングに関わる。2005年ビジネスコーチとして独立。2014年夏に、ストレングスファインダーを本格的に学べるスクールを開講
翻訳書「幸福の習慣」(トム・ラス著 ディスカバー21) 株式会社マックス・ユア・ビズ代表/ 国際コーチ連盟 認定マスターコーチ財団法人生涯学習財団 認定マスターコーチ/ ギャラップ認定ストレングスコーチ
https://strengths-labo.com/
谷本 有香
経済キャスター/ジャーナリスト
山一證券、Bloomberg TVで経済アンカーを務めたのち、米国MBA留学。その後は、日経CNBCで経済キャスターとして従事。CNBCでは女性初の経済コメンテーターに。 英ブレア元首相、マイケル・サンデル教授の独占インタビューを含め、ハワード・シュルツスターバックス会長兼CEO、ノーベル経済学者ポール・クルーグマン教授、マイケル・ポーターハーバード大学教授、ジム・ロジャーズ氏など、世界の大物著名人たちへのインタビューは1000人を超える。 自身が企画・構成・出演を担当した「ザ・経済闘論×日経ヴェリタス~漂流する円・戦略なきニッポンの行方~」は日経映像2010年度年間優秀賞を受賞、また、同じく企画・構成・出演を担当した「緊急スペシャルリーマン経営破たん」は日経CNBC 社長賞を受賞。W.I.N.日本イベントでは非公式を含め初回より3回ともファシリテーターを務める。 2014年5月北京大学外資企業EMBA 修了。 現在、テレビ朝日「サンデースクランブル」ゲストコメンテーターとして出演中
http://www.yukatanimoto.com/