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■ 世界で活躍するウーマンたち


武藤 興子さん(ヴィセラ ジャパン株式会社 代表取締役)

武藤 興子さん
ヴィセラ ジャパン株式会社 代表取締役
半世紀以上の歴史を誇り、現在、五大陸・世界50カ国で愛される、フランスの老舗スキンケアブランドYON-KA。このYON-KAを展開されるヴィセラ ジャパン設立の経緯から教えて頂けますか
設立は2004年4月で、今年で10年になります。 実は、社長になろうとか、起業をしたいなどとはそれまで考えた事もなかったのですが、たまたま前職の仕事で訪れたパリでヨンカに出会ったのがきっかけです。実際に一ユーザーとして使っていたら、自他共に認める程に肌が変わって、ヨンカへの興味や思いがどんどん強くなっていきました。

最終的に日本上陸の権利交渉をするために先ず会社を退職しました。自分が化粧品会社に勤めながら他の会社にアプローチするのはフェアじゃないと思い、かなりの見切り発車ですが、退路を断って挑みたかったんです。 そのアプローチの過程で、フランス側から交渉のテーブルに着くには会社という形が必要との話しがあり、帰国後すぐに設立したのが、このヴィセラ ジャパンという会社なんです。
会社を設立されたり、大変な過程を経てもいいという覚悟ができるくらいに、このヨンカというブランドが魅力的だったのですね
出会ってすぐは、「私が日本に上陸させよう!」という感じではなかったんです。パッケージも今よりももっと簡素で、お薬のような感じだったのですが、そこがまたとても気になりました。日本にはないので、まずは自分のために買って帰って、使って、というのを何回か繰り返していくうちに、徐々に、気になっていた気持ちが「YON-KAを日本に上陸させたい」という確信に変わっていきました。
それはその時点でご自身がプロの目を持っていたからこそ、これは本物だということが見極められたのでしょうか。
そうですね。大手の化粧品会社に勤めていたので、化粧品に関してはプロとしての客観的な視点はあったかと思います。また、私が十代から酷い肌トラブルに悩んでいて、ドクターズから、コンビニコスメ、高機能・高価格帯の化粧品、漢方まで色々なものを自分の肌で試してきたという実体験も大きいです。
プロの目と、そして、ご自身の体験の中から、ヨンカというベスト・スキンケアに行き当たったということなのですが、具体的に何が一番良かったんですか、どこが惹かれるポイントだったのですか
今でこそ、ナチュラルやオーガニックな化粧品をたくさん目にしますが、私がヨンカに出会った2002、2003年くらいは、そういった化粧品は、香りは良いのだけれど、効かないというイメージでした。 当時、私自身はドクターズや最新のテクノロジーを駆使した化粧品が好きだったんです。特にテクノロジー系の会社にいたので、最新の技術が肌を良くしていくという思いも強かったように思います。

ヨンカを初めて使った時も、実は“自然成分を使った化粧品”ということを全く知らなかったんです。ただ、使っていて、お肌のトラブルが改善しただけではなく、トラブルが起きにくくなっていったので、「これは良い」と。肌の状態がマイナスから0に、0からプラスにというように、肌自身が強くなっていっているのを感じて、感激しました。

私は化粧品を選ぶときに、成分や細かいことをチェックするよりも、自分の感覚を信じて先ずは使ってみる。それで、良さを実感した時にはじめて詳細を調べるんです。ヨンカについてもリサーチしてこんな歴史があったのかとか、「え、自然派?!」「ハーブ?ハーブ効かないでしょ?」みたいな感じで、最初テクノロジーから入って、あ、こういうものがあるんだという風になっていきましたね。

それまではトラブルに効くものを、プラスしていくようなスキンケアをしていたのですが、きちんといらないものは取り除き、必要以上のものは与えずに、肌自体を強くしていく、そういう考え方が私にはなかったので、面白いなと思いました。
個人的にも、お仕事柄でも、これまで多くのコスメに出会ってきたわけですよね。その中でも一番だと思われたんですよね、このヨンカの出会いによって。
そうですね。ヨンカと出会う前は、肌がここまで改善したことがなかったんですよね。皮膚科にも通っていましたし、学生でお金がないのに、一か月5万円の漢方を飲んでいたり、親がこのままではお化粧も出来ないでしょうと心配するくらいだったんです。
ヨンカとの出会いがあったからこそ、会社の立ち上げもあったし、結果的に社長というポジションにつくことにもなったし、という事なんですね
社長は後からついてきたっていう感じですね
会社立ち上げの前までは、色々な会社にもご在籍されていましたが、その間、社長をやってみたいとか、経営に興味があるといったことはなかったんですか
一度もなかったですね。起業とか、社長とか、そういうことは自分とは全く縁がないと思っていました。
そんな風に、社長や起業に全く興味をお持ちでなかった女性が、よく個人でヨンカというブランドに一人の力で挑みに行こうと思いましたね。実際、他には大手企業もブランド獲得のために動いていたそうですね
その時、先方から仮契約を交わしてほぼ決まっている日本の会社がある、という話も出ていたんです。名前は教えてくれなかったんですが、実績もあり大きなところだということは聞きました。 「なんで武藤さんにしたと思われますか?」ということは、よく質問されることなのですが、一つは私のプランが素人ならではの斬新さがあったことだと思います。

もう一つは、ファミリー企業として世界50か国に成長したブランドなので、創設者の人たちを中心に全体にファミリーという雰囲気が企業文化としてあり、最終的には誰と働きたいかということを重視して決めた、ということを後になって言われました。
それでも、熱意だけでは相手を説き伏せることは出来ませんよね。事業プランだとか、戦略だとか、そして、相手にどう交渉していくかといったスキルはどこで学んだのですか。
今までビジネス戦略を考えたこともなかったので、出来る出来ないは置いておいて、このブランドを日本に持ってきた時にどういう状態がベストなのかということをまずは徹底的に考えました。そこからブレークダウンすることで出てきた、このブランドが日本で展開する上で一番いいだろうというプランをプレゼンテーションしたという感じですね。
普通は、プランの立て方とか、事業戦略の書き方とかいう本を買ってそのまま写しちゃったりするのに、そこにもオリジナリティがありますよね。
起業の本など読んだこともなかったですし、経営についても事前に学んでいたわけではないので、その都度必要に応じて学んでいく感じでした。それが良かったのかなと思う反面、知っていたらこんな苦労はしなかったかなという思いもあります。知らないから出来ちゃうというところもあったと思います。
そもそも交渉は日本でも難しいのに、相手が外国の方だったというところも想像を超えますよね。ただ、武藤さんはこれまで外国籍の企業に籍を置かれていたこともあって、グローバルの環境には慣れていらっしゃったんですか
相手はフランス人で、最初にアプローチをする時に電話をしても、「ハロ―」と言ったらガチャみたいな(笑)。何度かけても途中で切れちゃうんですよね。切られているのか、切れちゃっているのか定かでないんですけど、「英語だからなのかな」と思って、次はフランス語でトライしようと、自分で調べたり、詳しい人に聞いて「○○の担当の人にお願いします」など会話に必要な文章をすべて用意して電話をしていました。
元々フランス語が出来たわけではないんですね。凄い!
よく英語とフランス語ペラペラなんですよね、と言われますけど、どちらも怪しいかなという感じなんです。
でも、信念があれば、語学さえも何とかなるという感じだったのでしょうか
そうですね・・・これを説明するにはどうしたらいいか、ということを考えて、伝えていきました。日本語と同じように流暢に交渉できるような語学力だけが必要かと言ったらわからないですよね。
しかし、それは語学が出来ない人にも勇気を与えますね。今も英語でお仕事されているんですか
はい。勿論、仕事で使っているので慣れているところはあるのですが、日本語であっても交渉は難しいですよね、それを英語でやらなければならないという。海外への流通を担当しているインターナショナル・ディビジョンのスタッフは流暢な英語を話すので良いのですが、トップとは相手の母国語、フランス語でもっと密な話しをしたいなとは思いますね。
そして、結果的に交渉を決められたと。凄いですね。ヨンカは外国のブランドですが、コンセプトも勿論ですが、全て外国のものですよね。 それを日本という特殊なマーケットに持ってくる時の難しさはありましたか
そうですね。日本では薬事法が厳しいので、それにあわせて調整してもらわなければならなかったり、すぐに輸入したいのだけれども、成分的なもので出来なかったりということはありましたね。日本のマーケットの重要性は認識していましたが、あえてそれまでは上陸してこなかったんですよね。
それは難しい市場だからですか
難しいと分かっていたからでしょうね。魅力的な2兆円以上の規模もあるマーケットなのですが、そこに対して全く焦っておらず、ベストなパートナーが見つからない限りはやらないという姿勢を貫いていたんです。
消費者という意味でも日本は難しいマーケットですよね。飽きやすいし、うつろいやすいし
一般的な知名度や、誰々が使っているということに弱かったりしますね。 実はヨンカは、百貨店などでよく目にする化粧品とは異なり、プロフェッショナルユースのブランドです。業務用製品でプロのセラピストがお客様に施術をして、次にサロンに来るまでの間、トリートメント後の状態を維持し、更に良くしていく為にご自宅で使えるように作られているのが店頭に並んでいるホームケア用製品なんです。最初はその基本が分かってなかったんです。そして、日本で店舗ビジネスの経験もなく、プロフェッショナルマーケットというものをわかっていなかったということで苦労しました。

日本のプロフェッショナルマーケットは欧米とは異なり、大手エステチェーンや個人サロンが多く、大・中規模のデイスパや、本格的なデスティネーションスパというのが少ないので、どう展開していけばいいのか悩みました。

日本の化粧品マーケットを見ても、本当に星の数程スキンケア・アイテムがありますよね。コンビニコスメ、ドクターズ、ナチュラル、オーガニック、百貨店ブランド、アロマから、私たちのようなプロユースのものまでが、選ぶ側のお客様からみたらボーダーなく存在しているので、選択肢がいっぱいあるという反面、どれを選んでいいかわからないということにもなってしまいます。

海外では競合になり得ないブランドが日本では競合になってしまうので、難しいですね。
ヨンカの基本的な展開はどうなっているのですか
基本的にはサロンやスパで、プロのセラピストが、お客様のご要望やその時の肌、心身の状態に必要な製品や香り、技術を選びトリートメントを行います。そして、次の施術に来るまでに肌にもっとも適したスキンケアの製品と使い方をアドバイスして、ホームケアとしても使って頂くということを行っています。
つまり、アドバイスも含めたトータルコンサルティングのような
そうですね。元々は、治療目的の製品開発が原点なので、症状別に物凄くたくさんの製品が揃っているんです。普通、ニキビ用の薬をポンとつけておけというようなことになりがちですけれど、ニキビも色々タイプがあるのでそれに合わせたケアが必要です。きちんとタイプを見極めて製品を選んだり、使い方も一人ひとりの症状に合わせて提案することが非常に大切になっています。
このサロンを見ても大変高級なイメージがありますので、ハイエンドユーザーのみを対象としていると思われがちですが、本当にお肌の悩みを持った方、全員を対象にされているという事なんですね
そうですね。具体的な肌トラブルがある方から、本格的なエイジングケア、スリミングやデトックス、リラクゼーション効果の高いものを求めている方すべてに来て頂いています。。
これまでのお話を伺っていて、武藤さんがいかに大きなことにチャレンジし、その間、多くの難しい局面を一人で乗り越えてきたかというのがよく分かったのですが、そもそもどうしてこんなことを成し得ることが出来る女性になったのか。どんな子供時代、学生時代を過ごしたかというところも伺わせて下さい
私はよく、「昔からポジティブだったのか」と聞かれるんですけど、その時にスタッフに言うことがあって、「私は元々ネガティブな性格」という人がいますが、ネガティブ、ポジティブというのは習慣だと思っています。

私自身もどちらかというとネガティブなタイプだったと思うんですが、色々な経験を通して思考のパターンが変わってきて、今ではトラブルがあって動揺したとしても、すぐに気持ちを立て直したり、違う角度から物事を見れるようになりました。“大変だ”と思うレベルも変わってきて、創業時に大変だと思っていたことも、今の自分から見たら全然大変じゃないじゃんと思うように、どんどんレベルアップしていくものだと思います。
親御さんの影響とかもあるのでしょうか
家族の影響というのはすごくあるんだと思います。 母親が完璧主義で保守的な人なんですね、専業主婦で。 一方、父親がスーパーポジティブな体育会系で、祖母が、私はここに近いんですけど、その時代の人にしては革新的な考え方を持った茶道の師範でした。三者三様のミックスというか、そこからの影響というのはあるのかなと思っています。

母親は答えをくれない人でした。小学校の頃、料理に興味を持ったのですが、母親にみじん切りの方法を聞いても教えてくれないんですよ。「自分でどうやったらできるか考えなさい」と言われるだけ。最初からこうやるんだよなどとは決して教えてくれませんでした。

また、中学生になって、皆、セーターやマフラーを作ったりしていたので編み物に興味を持ち始めて、「クラスの友達はみんなお母さんに教えてもらってるんだから、私も教えてよ!」と言ったら、答えはまたしてもNOでした(笑)。「自分でやってみてから聞きなさい」と。私は悔しくなって、1人で本屋さんに行き、毛糸編みの基礎のような本を買って「絶対聞かない!」と自力で完成させました(笑)。

最初から答えを渡す人ではなかったので、子供としては少し冷たいのではと感じていましたが、後からすれば、最初から答えを誰かに聞いてしまうのではなく、先ずは自分で考えて挑戦してみるという習慣がついたのかなと思います。
一人で困難を乗り越える力をその幼少期を通じて得られたのですね
あと一つ自分の中で大きな出来事がありました。4歳、5歳くらいの時に事故に遭って、酷いやけどを負ってしまったんです。初期治療をきちんと行えば、今はそれほど跡が残ることはないそうですが、当時はそれが上手くできなかったんです。小学校なので、水着を着なければいけない授業があるわけですよね。でも怪我をした皮膚は直射日光に耐えられない。可哀想に思った祖母は、お花の可愛い刺繍を沢山つけた、半そでの水着を手作りしてくれました。

子供は無邪気に残酷なところがあるので、自分と違う人に対して好奇な目を向けたり、心ない言葉を発したりしてしまうこともありますよね。だから、人と違う水着を着て授業に出るのが一大決心でした。毎回、まわりのコソコソ話に傷ついていましたが、3回目くらいの時に、水泳の試験があって、一番上の級を受けたいと先生に申し出ました。それは25メートルのプールをみんなが見ている前で何周もしなければなりませんでした。それにチャレンジすると決めて、歯を食いしばりながら最後まで泳ぎ切った時、私の中で何かが変わりました。

この経験は、人に何を言われても、どのように思われても、自分が正しいと思うなら進んでいく、どんな困難も乗り越えられるんだ、という自信をくれました。
そのような幼少から学生時代のご経験もあって、ご自身の力で決める、ご自身の力で乗り切るということが自然とできるようになったのかもしれませんね。しかし、起業をするとか、それ以降の決断というのはかなり重く大きいものが大きいと思うのですが、そういう時もお一人で決められるのですか、誰かに聞いたりしないで
そうです、社長という立場で相談役を持っていらっしゃる方もいますし、役員で取り決めるというところもあると思いますが、幼少期の影響なのか、私はある程度のところまでは自分で形をつくり、その後にシェアすることが多いです。
本を見たりとか、人に意見を求むというレベルの事もしないということですか
勿論、参考になる話を聞いたり、専門家のアドバイスを頂く事も多々ありますが、最終的な決断は自分で行うようにしています。責任を取るという意味でも。 ただ、本ということに関しては、本屋さんをぶらぶらすることが大好きで、一度に違うジャンルのものを5冊ほど買って、同時に少しずつそれらを読み進めたり、また、本屋さんでタイトルだけを見たり、ぱらぱら本をめくることで、まったく違うインスピレーションを得ることはありますね。
そういうインスピレーションとかってあまり男性の経営者からは聞かれないことですよね
そうですかね。私は自分の頭に現在あるものや経験値だけでなく、常にインスピレーションを得るためのアクションは大事だと思っています。
女性という立場においてのお話もお聞かせ頂きたいのですが、経営者としての女性を意識することはありますか。
女性が社会進出しているとか、女性社長が活躍していると言われていますが、経営者の会合などに参加してみると、女性は今でも少ないんですよね。起業当時は特に、男性社会なんだという事を突きつけられる場面が沢山ありました。その頃は34-5歳で年齢的に若いということもありましたし、外資系の女性が強い職場環境で働いてきたため私の発言が、「生意気だ」と受け取られ、随分嫌な思いも味わいましたね。

当時はなめられないようにしようとか、社長らしく振る舞わなければいけないという気負いもあったので、2-3年は鎧を着て構えていたところもあったかもしれませんが、今はあまりありません。初対面の方で、私のプロフィールを先に読んでから実際に会うとそのギャップに驚かれるというケースが多くあります。

単独でブランドの権利を勝ち取って、起業した“ザ・女社長”みたいな人が出てくると想像していたのに、本当に“普通”の人が出てきたと、みなさん意外に思われるようです。 社長によっては社員の前に出た途端、皆がシーンとなり緊張感が走る、ということもあるようですが、うちは全然黙らないですから(笑)。なので、貫禄とか、ザ・女社長というのとは少し違うのかな、と。

だったら装うのはやめて、ギャップがあるならあるでいいや、と思って、後は、結構会社をポンと辞めりしたので、男っぽいよねとか言われるんですけど、見かけが柔らかく見えているからバランスとれている、これで外見もおじさんだったら困るんですけど。中身は男っぽかったとしても、柔らかくみえてるんだったらいいじゃん、ザ・女社長じゃなくてもと思えるように4-5年かかったと思います。
武藤さんが柔らかくお優しい印象なのは確かにそうですよね。それでいて、大変自然でいらっしゃる。それは自信があるからなのかなとお見受けしていました。
自信なのかはわかりませんが、あまり気に負わないで、そうみられるんだったらそれでいいかなと思っています。大事にしているのは、周りにも自分にも嘘がない決断と、行動をすること。こうしなくちゃいけないという角度から物事を考えないので、迷いが無いのかもしれません。そういう部分がもしかすると自信があるように見えるのかもしれないですね。
お好きなことをされているとはいえ、本当にお忙しくされていらっしゃるのですが、リラックスしたり、ストレスを解消したりすることもされていらっしゃるんですか
起業当初はスタッフもおらず1人でしたし、30代半ばで若かったので、無理もきき、いくらでも寝ないで働けるという感じでした。 元々ストレスに強い体質ではありますが、10年経った今は、社員も増え、それなりに責任も重くなっています。

日々色々な事が起こりますから、それをどういう風に手放していくかはすごく重要です。それは社長であろうがなかろうが、働いていようがいまいが誰にでもストレスというというのは存在すると思うので、自分なりのストレス解消方法やリラックスの技は一つでも多く持っていた方が良いと思うんですよね。

私も結構沢山持っているんです。 例えば、時間があるなら旅行をする。旅は大好きなので、自然の中に身を置いたり、美しいものを観たりと本当にリフレッシュできます。近場なら、映画を見たり、素晴らしい音楽を聞いたり。いつも出かけられるわけではないので、時間がない時は短時間でも意識的に“リラックスするための時間”を意識的につくります。

最近は、“なんちゃってプチ瞑想”。知り合いが瞑想の様々なメソッドを教えてくれたのですが、どれも物にならなくて、続けられなかったんです。ちゃんと理解できていない、出来ないと思うと続かないんですよね。でも、ある時、なんちゃってプチ瞑想でもいいや、と割り切ってやってみたんです。 メソッドがあるわけではなく、ただ単に2-3回深呼吸して、ソファの上とかに座って、目を閉じて、静かにしている時間を5分でも10分でも作る。それだけで、結果的に凄くリラックス、そしてリセットできるんです。
今後のビジョンはあるのですか
私が今の仕事をはじめたのは、美容や化粧品関連だからという理由ではありません。むしろ、たまたまスキンケア製品だっただけで他のものの可能性もあったわけです。ヨンカは、製品や技術も、携わっている人たちも、理念やコンセプトも素晴らしいと価値を感じたから。

フランス本国のヨンカには、国や言葉や会社は違っても同じブランドに携わる人はすべてファミリーである、という考えが浸透していて、それがとても心地よく、製品づくり、ブランドづくりにも深く反映されています。同じ志をもっている人たちが世界中にいるということも魅力的でした。

日本では、フランスから技術や知識、ファミリーとしての考え方を取り入れながら、日本独自の方法を持つ事も重視し、ミッション、ビジョン、行動指針を立てて取り組んでいます。弊社のスタッフはもちろん、ヨンカを通して繋がっている人たちすべてがハッピーであるような、会社づくり、製品やサービスの提供を追求しています。そのために、まだまだ小さな会社ですが、コミュニケーションや教育には最も力を入れています。
男性経営者に良く見られるように、とにかく規模を追求したいという感じでもないのですね。
女性経営者ならではの視点で、目の前の小さなところから丁寧に、徐々に広がっていくというイメージを持っています。純粋なる一滴が水面に広がるように、人から人へ、手から手へと自然に広げていきたいですね。
仕事も仕事以外も含めて自分の幸せを追求する東京ウーマンのビューワーの皆さんに向けたアドバイスはありますか
自分の強みや才能、やりたいことが明確なら、それに向かって突き進むのみ。困難も乗り越えていけるだろうし、そんな幸せなことはないと思うんです。でも、そんな人ばかりじゃないですよね。私自身も30代半ばまで、自分は、何をしたいのか、何が出来るのか、何処に進んでいきたいのかすら分かりませんでした。

今思う事は、ものごと一足飛びに行かない事もあるということ。回り道しても、分からなくても、大した事じゃないと思っている事でも、日々の小さな積み重ねや行動が次に繋がる、新しい未来をつくっていくんですね。仕事に関して言えば、自分で進む道が分からない時は、尊敬できる人や一緒に働いてみたいと思う人と時間を共にしてみること。“何をするか”、も大事ですが、“誰と働くか”、の威力は大きいです。ほんの小さなサポートであってもそこからヒントが見つかり人生が大きく変わる事もありますよ。
最後に現代の働き方についてご意見お聞かせ下さい。
私が新入社員として社会に出てから30代くらいまでの間、時代的なものもあったかと思いますが、チームワークより、個人のスキルを磨き、実力主義で上を目指すという上昇志向が強くあったように思います。でも今は、また日本人が本来持っている強み、和やチームワーク、協調性などが見直されていますよね。それは、個を犠牲にするのではなく、相手にも自分にもよいといった価値観です。バランスがすごく大事なんですよね。

現在の働き方は、一つではない。何が幸福かも人によって違います。“こうじゃなくてはいけない”という固定概念や自分ではない誰かの常識は一旦捨てて、一人ひとり、本当の意味でベストの働き方を模索していく時代だと思っています。
武藤 興子さん
大学卒業後、建設(日)、IT(米)、官公庁(英)、化粧品メーカー(仏)と、業界も国も文化も全く違うバラエティに富んだ環境で仕事を経験。2004年「ヴィセラ ジャパン株式会社」を設立し、現在、仏スキンケアブランドYON-KAの総代理店、スパ運営、マーケティング・サポート、スパ&ウェルネス分野での人材教育などにも携わる。
ヴィセラ ジャパン株式会社
HP: http://www.yonka.jp/
FB: facebook
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谷本 有香
経済キャスター/ジャーナリスト
山一證券、Bloomberg TVで経済アンカーを務めたのち、米国MBA留学。その後は、 日経CNBCで経済キャスターとして従事。CNBCでは女性初の経済コメンテーターに。 英ブレア元首相、マイケル・サンデル教授の独占インタビューを含め、ハワード・ シュルツスターバックス会長兼CEO、ノーベル経済学者ポール・クルーグマン教授、 マイケル・ポーターハーバード大学教授、ジム・ロジャーズ氏など、世界の大物著名 人たちへのインタビューは1000人を超える。 自身が企画・構成・出演を担当した「ザ・経済闘論×日経ヴェリタス~漂流する円・ 戦略なきニッポンの行方~」は日経映像2010年度年間優秀賞を受賞、また、同じ く企画・構成・出演を担当した「緊急スペシャル リーマン経営破たん」は日経CNBC 社長賞を受賞。 W.I.N.日本イベントでは非公式を含め初回より3回ともファシリテー ターを務める。 2014年5月 北京大学外資企業EMBA 修了。 現在、テレビ朝日「サンデースクランブル」ゲストコメンテーターとして出演中
http://www.yukatanimoto.com/
撮影協力:竹内 佑
谷本有香氏 衣装協力:Otto オットージャパン