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小山 ひとみ コーディネーター、中国語通訳・翻訳 ROOT
日本と中国、台湾間の文化交流の橋渡し役として仕事をしていることから、東京、ニューヨーク、上海、北京で活躍している中国と台湾の女性にフォーカスを当て、彼女たちがどのようなプロセスを経てチャンスを得たのか紹介していきます。
チャンスを掴む!中国、台湾のウーマンに学ぶ キャリアアップ 2016-03-18
フェスティバル・アーティスティック・ディレクター ワン・メイインさん

フリーランスの演劇コーディネーター、中国語通訳・翻訳をしています小山(おやま)ひとみです。

こちらのコラムでは、NYで活躍する、中国人、台湾人ウーマンへのインタビューをお送りしています。今回は、台湾系シンガポール人の王美尹(ワン・メイイン)さんをご紹介します。

ワンさんは、NYで毎年冬に開催される演劇のフェスティバルUnder The Radarのアーティスティック・ディレクターです。Under The Radarは、すでに12 年続いているフェスティバルで、毎年、アメリカ国内の劇団のみならず、フランス、ドイツ、チリや日本など世界各国の勢いのある劇団の作品を公演しています。ワンさんは、フェスティバルの2年目から関わってきたため、「フェスティバルと一緒に育った感じ」と控えめながらも、大変興味深いお話をしてくれました。

 

1979年、台湾人のご両親のもとシンガポールで生まれたワンさん。小さい頃から、物語や文学に興味があり、自分でも物語を作っていたそうです。高校生になって演劇に興味を持ち始め、自ら脚本を書き、演出をするようになります。そして、18歳でアメリカに渡り、イエール大学で演劇と政治を学びます。

「演劇も民主主義も、古代ギリシャ時代のほぼ同時期に誕生しています。人間がルールを破るとどのような問題が起こるのか、生活においてルールというものがいかに重要かということが、演劇と政治両方で語られるので、共通点があって面白いと思ったんです。」

大学卒業後は、シンガポールに戻り、劇場で仕事を始めます。1年後、より専門的に演出の勉強をするため、世界の著名な演出家が教授を務めるコロンビア大学の大学院への入学を決め、再びアメリカに発ちます。「演出というのは、小さなアイディアからスタートして作品として形にして公演するというところまで、全てを自分でコントロールすることができます。また、何より色んな人と関わって作品を仕上げていくという面白さがありますね。」

(写真下、Under The Radarのスタッフたちと。中央、ワン・メイイン)

大学院在学中、Under The Radarのメイン会場であるThe Public Theaterでインターンを始めます。チケットの管理をしたり、海外の劇団のビザ申請をしたり。2ヶ月のインターンを終えた後、アシスタントとして採用され、アソシエイト・ディレクターを経て、3年前に、アーティスティック・ディレクターに就任しました。フェスティバルのプログラムを決めるのが主な仕事。「毎年、アメリカ国内や海外に行って新しい劇団を発掘したり、自分が面白いと思った作品をNYのお客さんに紹介したり。とてもやりがいがあります。」とアーティスティック・ディレクターの魅力を語ります。

フェスティバルのスタッフはほとんどがアメリカ人。アメリカ人と一緒に仕事をしていて、アジア人との違いを感じることもあると語る一方、「私は作品を見る時もそうなんですが、常にアウトサイダーの立場で物事を見ているんです。この作品を他の場所で公演した場合、その場所のコンテクストに落とし込むにはどうしたらいいだろうって常に考えています。」それを聞いた時、ワンさんの強みは台湾系シンガポール人というアウトサイダーの立場でディレクションをすることなんだと感じました。

また、去年、ワンさんがずっと温めてきたプロジェクトがスタート。NYをベースに活躍している若手の劇団に、より公演のチャンスが持てるよう、彼らをサポートするというもの。ディレクターとして培ってきたネットワークを若手に繋ぎ、NY以外の演劇関係者に彼らの存在を知ってもらう。ここにも、台湾系シンガポール人というアウトサイダーの目線が生かされている気がしました。

(写真下、若手の劇団員たちとのミーティング)

演出家を目指し、縁がありディレクターに。それは、とても自然な流れだったと言います。もちろん、演出をきっぱりやめた訳ではなく、日中は劇場で働き、平日の夜や週末には仲間たちとリハーサル。「でも、さすがに、アーティスティック・ディレクターになってからは忙しすぎて、自分の作品は発表できていないですけど。」と笑いながら話してくれました。

NYは大好きと語るワンさん。「NYは世界の文化人が憧れる場所。勢いのあるアートや演劇が存在していて、それを取り巻く魅力的な人たちが大勢生活をしています。とにかく刺激的な街ですね。」

今後、NYで仕事を考えている女性には、どのようなアドバイスを?と尋ねると「もし、演劇の仕事をしたいのなら、とにかく作品を沢山見ることですね。また、どの仕事をするにも、遠慮しないで、会いたい人には積極的に連絡を取って会うことですね。私も、これまで沢山の方から会いたいと連絡をもらいました。諦めない、遠慮しないことです。」

インタビューを終えて

今年のUnder The Radarの会場で、作品が始まる前、「ディレクターから一言」としてお話をされたのがワンさんでした。観客の前で堂々とお話をされる姿に、演劇への情熱と勢いを強く感じました。また、ワンさんは自分自身を、シンガポールにいた時は「台湾系」、アメリカでは「ABC(中国系アメリカ人)ではなく、シンガポール人」と答えていたと言います。それを聞き、彼女はコミュニティーの外から来ている人(アウトサイダー)なんだということが分かりました。と同時に、「インサイダー」の方がチャンスを得るのに有利に思えるけれど、彼女は「アウトサイダー」を強みにチャンスを得ているんだと強く感じました。インタビューの際、「実は、間も無く西海岸に引っ越すんです。」と。西海岸のフェスティバルからディレクターのオファーもきているというワンさん。台湾、シンガポール、アメリカというバックグラウンドを活かし、アウトサイダーの目線でますます活躍されることでしょう。


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