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村井 えり ディレクター兼シナリオライター MURAIERI
世間知らずで勉強もできなかった私にとって、映画は多様な人生の教科書でした。心の奥深くにちょっぴりトゲが刺さるような、女性(と女優)の人生について考えさせられる作品を紹介しますので、是非一緒に考えていただけると嬉しいです。
映画が描くオンナの人生いろいろ 趣味・カルチャー 2014-08-23
パッション

『パッション』  Passion (2012)

監督  ブライアン・デ・パルマ
オリジナル脚本  ナタリー・カルテール、アラン・コルノー
出演   レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルト、ポール・アンダーソン


夏もそろそろ終わりですが、この時期はやっぱり怖い映画。この夏の思い出として、ゾーっとしてみませんか。といっても幽霊は出てきません。上司と部下、女同士のコワい関係を描いたサスペンス・スリラーです。

大手広告会社のベルリン支部。イザベル(ノオミ・ラパス)が任されたスマホの広告プランは大絶賛されるが、尊敬するブロンド美人の上司クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)に「私のアイディアです」と手柄を横取りされる。リッチで優しく、イザベルに対して同性愛的なアプローチまでするクリスティーンは、支配欲の強い悪魔のような上司だった。クリスティーンのいわば“奴隷”として、ひどい目に合わされ続け、やがてイザベルは睡眠薬を常用、精神を崩してしまう。しかし・・・。

実はこの作品、『フォート・サガン』などを作ったフランスのアラン・コルノー監督の遺作『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』(2010)のリメイクだ。ストーリーは、ほぼ一緒。しかし、コルノー版が地味でやや退屈なのに対し、こちらはいっときも目が離せない。
なぜかといえば、『キャリー』『殺しのドレス』『アンタッチャブル』『ミッション・インポッシブル』などで知られるブライアン・デ・パルマ監督ならではの、華麗かつ爆笑の?!映像テクニックが、満載だからである。同じストーリーなのに、全然違う作品になっている。

自分の愛人をイザベルに近付け、その様子を撮影して楽しむクリスティーン(クズ)は、嫌がらせに激高し涙するイザベルの姿を、監視カメラ映像の「面白動画」として、会社の懇親会でみんなに暴露!(イザベルかわいそう…) 私たちを取り巻くカメラや動画や携帯が、女同士の闘いに介在することで、悪夢はより増殖される。さすがデ・パルマ監督!

コルノー版を悪く言いすぎたが、オリジナル脚本は女性が書いたもの。支配欲・権力欲・性欲をむきだしにする女たちの、リアルな姿を描きたかったのだろう。脚本家ナタリー・カルテールは、フランス文学の名作で、夫を殺そうとする女を描いた『テレーズ・デスケルウ』(2011)の脚本も書いている。『アメリ』のオドレイ・トトゥ主演、クロード・ミレール監督の遺作のこの作品、日本でも是非公開してほしい。

キャスティングもコルノー版の方が正統派で、上司役がクールな美貌とバイリンガルの、いかにも優秀そうなクリスティン・スコット・トーマス。デ・パルマ版のレイチェル・マクアダムスは、悪辣な上司を演じるには童顔で若すぎる。一方、部下役は、コルノー版がフランスのカワイイ番長・リュディヴィーヌ・サニエちゃん(頭悪そう)。デ・パルマ版のノオミ・ラパスは、お世辞にも美人とは言えないが、強い意志を感じさせる不思議な魅力で、引っ張りだこになっている。この役にもぴったり。

是非、ヒマなら両方を見比べてほしいですが、多分、デ・パルマ監督は「この題材なら俺の方がうまく作れるぜ!」と思ったのでしょう。イザベルのアシスタントを男性から女性に変えて、ほとんど女性しか出てこない。女性しかいない世界で、惹かれ合い憎み合う、まがまがしく危険な女たちの姿を、この上なく美しいと思っているようだ。




 


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